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なかなか江姫は見つからない。
「うーむ、見当たらないな。どこまで行っちゃったんだか」
木の上から江姫をさがしていたみなみがするすると枝を伝い降りてきた。
「みんなア、いったん集まるんダヨーッ」
子ブタ型に戻ったニコがそこらを跳ね回りながら、集合をかける。
英麻も行こうとしたが、すれ違った家来の男たち二人の会話が不意に耳に入ってきた。
「―――まったく、秀吉様ときたら突然、いなくなるんだから。あれほど息巻いていた次の戦の作戦会議にも姿を見せないで」
「珍しいですな、いつも時間厳守を徹底される人が」
家来たちはそのまま速足で去っていく。
どうしたんだろ。秀吉がいない、とか言ってた気がしたけど。
首を傾げてから英麻はサノやニコたちがいる方へ走った。
「さすがに安土城の敷地内から出てはいないだろうけど、この場所からは遠い所にいるのかもしれない。だから、これを使ってもっと広い範囲から江姫を捜索する」
サノがマルチウォッチから取り出したのは、平安時代の回収任務でも使っていた、あの大学ノート一冊ほどの厚さしかない極薄ノートパソコンだった。
「この中には、江姫の顔や背格好はもちろん、声や歩き方みたいに一人一人異なるデータが事前にインプットしてあるんだ。安土城付近に設置されてる記録ボールの画像に、このデータと一致する人物がいないか照合すれば、早く見つかる可能性が高い。この一帯は記録ボールの数も多いしね」
みなみが拍子抜けする。
「なんだあー、サノさんてば。そんな便利なアイテム持ってたんなら最初っから使えばよかったのに」
「ふん、それができたら苦労はない。こういう電子機器の類は、過去の時代で使いすぎると使用中に放出された電磁波が空気の流れに影響して時空乱流発生の原因になっちまう。そう手軽には使えないのさ」
少し偉そうな様子でハザマが言った。
その時、英麻は近くに人の気配を感じた。