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「絶対にダメだ、それは」
ハザマは険しい顔で再度、言った。
「どうして?」
思わず英麻はそう聞いた。その直後、ハザマと気まずい状況にあることを思い出したが、途中でやめることはできなかった。
「…どうしてダメなの?」
「そ、それは」
ハザマがぎこちなく英麻から目をそらした。
「いや…何でもない」
「ハザマ、説明して。いったん口に出したんだから」
腕組みしたサノが言った。
「えっ!?いや、けど、俺は…」
「いいからさっさとする!」
ハザマの背筋がびくんっと伸びた。少しだけ前に出ると、やはりぎこちない様子ではあったが、ハザマは話し始めた。
「歴史上の人物に未来の情報を与えることで史実、すなわち、歴史上の事実を変える―――それは決して許されない、時空の禁忌なんだ」
「じ、時空の禁忌?」
みなみがたどたどしい声で繰り返した。
「万が一、教えた場合には、その時代を起点に歴史の流れに狂いが生じ、その先に存在する様々な時代に悪影響が出る。要するに歴史全体がメチャクチャになるってことだ」
ハザマは低い声で一気に言った。
ヘッドホンを直しながらスクリーンの中のミサキが補足する。
「この禁忌を破ることは時空法において重罪だ。犯せば、君たち三人も例外なく罰せられるだろう」
「ええっ!?」
「それぐらい史実を変えるという行為は許されないものなんだよ」
サノが英麻たち一人一人を見た。
「たとえそれが相手を助けたいという、善意から来るものだったとしてもね」
英麻もみなみも舞子も、反論できなかった。納得はしていない。だが、それでも反論できなかったのだ。