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時空守護士タイムアテンダント  5 じゃじゃ馬姫と三番目のクルー    作者: 夜湖
第三章 体育館発 安土·桃山行き
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「ごめん、ごめん!驚かせちゃったね、英麻ちゃん」

すぐ後ろから聞こえた声の主はサノだった。そして、サノの後ろにはやはり、今回も彼がいた。

銀色の髪。鋭い空色の瞳。会いたくなかった顔。

そこにハザマがいるとわかった瞬間、英麻は目をそらしていた。わざとサノの方ばかり見て、ハザマが視界に入らないようにする。そうせずにはいられなかった。

「君が新たにタイムアテンダントに選ばれた若田舞子ちゃんだね。僕はタイムパトロール第八部隊のサノ、それでこっちが…ほら、おまえも早く挨拶しなさいっつの」

サノに促され、ハザマが前へ出てきた。ぶすっとした顔で口を開く。

「同じくタイムパトロール第八部隊、ハザマ。よろしく」

鋭い目がぎろっと舞子を捉えた。

「これからあんたがやるのは遊びや観光じゃなく任務だ。そこの所、勘違いするなよ」

「えっ。あ、あの…」

びくっと舞子は身を縮め、サノがあきれ顔でため息をついた。

「おまえね、もうちょっと言い方ってものがあるだろ」

みなみが舞子に声をかける。

「気にするこたないよ、若田さん。こいつは基本、こーゆうふうに無愛想でとっつきにくい奴らしいだから」

「服部も失礼な奴だな」

ハザマがふん、という態度で腕を組んだ。

「言っとくが、俺たちはおまえらスカイフェアリーズのサポート役、いわば保護者同様の立場にあるんだ。もう少し礼儀には気をつけてほしいもんだな」

「保護者なあ…そういえば、ハザマって年、いくつなの?」

「十五才。年令の数え方はおまえらが暮らす平成エリアと変わらない」

仏頂面でハザマが答える。

一瞬の間。

「へーえ…」

「十五才…」

みなみ、それに舞子の反応は微妙なものだった。

「十五才には到底、見えないなんて言われても俺は一切、動じないからな。声変わりがまだだってことも十五の俺より服部の方が背が高いってことも結局は大して意味のないことで」

「めっちゃ動じてんじゃん」

みなみが突っ込む。

「おまえらが予想通りの反応するからだ」

こんなやり取りを前にしても英麻はまともにハザマの方を見れなかった。対するハザマも英麻とは目を合わせようともしない。互いにピリピリした見えない膜をつくり、相手を遠ざけ合っているようだった。

「そろそろ行こう。もうすぐ指定時刻だ」

サノが英麻たち三人を促した。しかし、いつもは目につく所に停められているタイムマシン、シリウス328がまったく見あたらない。英麻はサノに尋ねた。

「あの、サノさん。シリウス328はどこに…?」

「それならこっちだよ」

そう言ってサノが指したのは、開けっ放しの体育倉庫だった。

「へ?」

薄暗い体育倉庫の中に何かが見えた。深い青色の、流線形の機体。

「うそお」

「マジか」

それはさながら格納庫に入った飛行船だった。シリウス328は英麻たちに対し、正面を向いた状態で体育倉庫の中に駐機されていたのだ。(かなりギリギリの状態ではあったが)

「すっごいなー。ってか、よく入ったなー」

「確かにすごい…けど、せますぎよ、これえっ。何だって…うんしょっ、こんな所にシリウスを…停めるんだか。これなら椅子に占領された体育館の方がマシだったわよ」

腹を引っ込め、背中を反らし、英麻はみなみの後に続いて四苦八苦しながら倉庫の壁とシリウス328の機体の隙間を移動する。

「ちょっと英麻っ、押すなよ」

「だってー、うまく動けないんだもん」

「悪いね、二人とも。今回のタイムスリップの指定場所は、正確にはこの学校の体育館じゃなく、その中にある体育倉庫なんだ」

サノが苦笑しながら詫びた。

「そう言われても…よいしょっと。大体、その指定場所っていつもどーゆう基準で決めてるんですか…わっ」

「重要機密事項によりお教えできませんネ!」

その小ささゆえ、すでに苦労なくシリウスに乗っていたニコが偉そうなキンキン声で叫んだ。

「じゅ、重要機密事項?」

「そうダヨッ。教えられるのは、その決定権が特別部隊にあって綿密な計算やらシミュレーションやらして決定してるってとこまでダネ!」

「ほんとにー?案外、適当なんじゃないの」

そう疑うみなみの横では、舞子が穴が空くほどシリウス328を見つめていた。微動だにせず、ただじっと。みなみと英麻がどうにか後部座席に乗り込んだ後も一人、まったく動かない。

「舞子ちゃん、大丈夫?」

心配したサノが声をかける。英麻も思わず、シリウスの中から舞子の様子をうかがった。

「あっ…すみません」

舞子は慌ててシリウス328に乗り込み、英麻の隣に座った。ハザマがドアを閉め、サノと共に操縦席に入る。

青い光の帯がいくつも現れる。それらはシリウス328の周囲で揺らめき、体育倉庫の中もほのかに青く照らし出した。

移動用の大きな籠につめ込まれたバスケットやバレーのボール。くたびれたマットに跳び箱の塔。青い光の中、それら周りのものが徐々に形を変え、ついには体育倉庫の中全体の景色が変化していく。

英麻たちの新たな時空の旅が始まった。

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