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タイムスリップ当日。
英麻、みなみ、ニコ、そして、舞子は予定通り中学校の体育館に集合していた。今は昼休みでタイムスリップの指定時刻は、この休み時間中の午後一時十分とされていた。これまでタイムスリップの指定時刻は外だったが、今回は初めて屋内からタイムスリップを行うことになる。
―――…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…カチッ…!
がらんどうの体育館に転換時計の音が響き渡った。
「今の時計の音を合図に時間が…止まったの?」
「そういうことですっ、若田さん!」
英麻は大きくうなずいた。
「でも、今回みたいに他に人がいない状況じゃ、ほんとに止まったかよくわかんないな。サノさんやハザマはもう平成エリアに着いてるの?」
「ンンー。たぶん、着いてると思うヨー?」
みなみの問いに椅子の間をポヨンポヨン飛び回っていたニコがのんきな返事をする。
英麻たちのすぐ前には四百脚以上ものパイプ椅子が所狭しとと並んでいた。これらは今日の六時間目に予定されている全校生徒対象の、今後の進路を考えるうえで非常にありがたい講演会(獅子王先生談)のために前日から忙しく運び込まれたものだった。すでに待ち疲れ状態に入りかけていた英麻はパイプ椅子の一つにだらしなく腰かけた。
「まったくタイムパトロールもあっちこっち変なとこ、指定場所に選ぶわよね。特に今回なんて建物の中だし。ねえ、ニコ、本当にこんなせま苦しい所からタイムスリップなんてできるわけ?」
「大丈夫だよ。シリウス328は基本的にどんな場所からでもタイムスリップできるから」
「ふうん、そうなんだあ…って、わああ!?」
英麻は椅子から飛び上がった。