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「これは…ロボット?」

「ロボットって言ってもそこいらのロボットとはわけが違うんダナッ。未来の科学が誇るスーパーアシスタントロボットにして、タイムパトロール第八部隊紅一点のアイドルで」

「あーもう、ニコの自慢はいいから早くタイムパトロール側に事情説明させてよねっ」

しびれを切らした英麻がニコを黒板の前に向き直らせた。

「タイムパトロール…?」

「そうダヨッ、舞子チャン。さっ、まずはこれをご覧あれなんダナ!」

ニコの額から光線が放たれる。光は一直線に、英麻がこれでもかときれいにした黒板に当たり、スポットライトのような中くらいの円を形作った。円の中に小柄で丸っこい、白髪に白ひげの老人が映し出された。

タイムパトロールのオカ司令官。タイムアテンダントとなった英麻が最初の花びら回収任務に臨んだ時に陰から英麻の心を支え、みなみがタイムパイロットとして初めてスピカを飛ばした時にはその操縦を指南した人である。童話に出てくる可愛い王様みたいな雰囲気は初めて会った時とまったく変わっていない。

「足立英麻君、服部みなみ君、元気かね?タイムパトロールのオカじゃ」

「おおっ、この人がそうなのかっ」

みなみが興奮気味に黒板に顔を近づけ、「オカ司令官!その節はどうもっ。あなたのご指導のおかげでスピカの初飛行がちゃんとできて」と割り込みかけたのを英麻が必死にめさせた。以前、タカツカが英麻の部屋で見せた時と同じく、今回のこの映像もオカ司令官が一方的に話をするビデオメッセージ仕様らしかった。

「そして、若田舞子君」

見知らぬ老人に自分の名を呼ばれ、舞子があっけに取られた顔でオカ司令官のつぶらな黒い瞳を見つめた。

「今、これを見ている君は大いに驚いていることじゃろう。信じられんことかもしれんが、わしがこの後、話すことはすべて事実じゃ。ぜひ、心して聞いてもらいたい」

英麻の隣で舞子がかすかに唾を飲み込むのがわかった。

それからオカ司令官は事の経緯いきさつを語って聞かせ始めた。

二百年後の未来、221X年では時空や過去を行き来するタイムトラベルが可能になっていること。時空の治安を守るうえで、時の花びらという道具が重要な役割を担っていたこと。時の花びらが時間犯罪者集団、メビウスに奪われそうになったこと。しかし、十二枚の時の花びらは何らかの原因で、安置されていた場所からすべて消失し、わずかな時間だけ、この201X年に現れたこと―――

オカ司令官の話に合わせて円形の映像は変化し、やがてある光景を映し出した。

真っ暗な夜。自宅の縁側らしき場所から舞子が顔を出している。部屋着姿の舞子は眼鏡をはずし、目をこすりながらあっけに取られていた。

彼女の視線は上空に注がれていた。黒い夜空を横切っていく十二の流れ星。もとい、十二枚の時の花びらに。

「時の花びら…あの時、私が見たものが?」

おずおずと舞子が呟く。

「その後の調査で、時の花びらは過去のあらゆる時代に散り散りとなり、そこに生きる歴史上の人物の体内に宿ったらしいと判明した。原因はいまだわからんがのう」

そして、オカ司令官は話の核心に触れた。時の花びら十二枚を直接、見た舞子には花びらに触れる力が備わっていること。その力を活かし、時の花びらの回収役、タイムアテンダントになってほしいこと。舞子が先日、キャッチしたスカイジュエルウォッチには彼女がタイムアテンダントにふさわしいか、判定する機能があったこと―――

「どうか君の力を貸してもらいたい。時空の平和と秩序を守るためにも。慌てることはないからここはひとつ、前向きに考えてみてほしいのじゃ。良い返事を待っておる」

のほほんとした笑顔で小さく手を振った後、オカ司令官の映像は消失し、元のまっさらな黒板が現れた。

夢から覚めたような表情で、舞子は鞄からオレンジ色のベルトの腕時計をそっと取り出した。彼女がキャッチした、あのスカイジュエルウォッチである。

「タイムアテンダント…私が…」

舞子はスカイジュエルウォッチを手にしたまま、かすかにうつむいた。

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