新たなバグを見つけた
観光客たちから逃げ出した私たちは現在、自然豊かな湖へとやって来ています。
「ここなら広いし、観光客たちも疎らで、私たちが変な事をしててもそれほど寄っては来ないはずよ」
「綺麗な湖ですね」
水面が太陽の光を反射してキラキラと輝いています。そのキラキラに擬態した魚が水鳥をパクりと一飲みしているのが見えました。恐ろしい生物がウヨウヨ居そうなので水遊びはしない方がいいですね。
「それで、約束の物はいつくれるのかしら?」
「ちょっと待ってくださいね。今取り出しますので」
ストレージから大岩を取り出す、というか吐き出して地面に置きました。流石に私の細腕では持てませんよ。
「こっちじゃなくてポーションの方よ!」
「え、そっちですか」
「あんなに美味しいポーションなんて今まで生きてきて一度も飲んだことが無いもの!」
随分と気に入ってくれたようですけど、エクスポーションはステータスの最大値を底上げさせる効能があり、あまり多飲させるのもどうかと思うので、エクスポーションは生涯で飲んで良い数を5本としましょうか。私は例外ですけどね。
「リンさんに飲ませたポーションはエクスポーションと言って、かなり強い効能のあるお薬なので、生涯で飲んで良い本数は5本だけと定められているんです。リンさんは先程1本飲みましたので残り4本ですね」
「えー! もっと沢山飲みたいわ! どうにかならないかしら!?」
「なりません。とりあえず4本渡しますので、死にそうな時や四肢や内臓を無くしてしまった時にでもお飲み下さい」
「……そのエクスポーションの方が、どんな価値のある金属よりも価値が高そうなんですけど?」
「売ったら何かの拍子に大量の死人が出るのでダメです。自分か大切な人が死にそうな時に使ってあげてくださいね」
「そ、そう。分かったわ!」
という事でストレージからメガポーションを8本取り出して合成し、エクスポーション4本をリンさんに渡しました。
「ありがとうロトルル! 大切に飲む事にするわ!」
「はい。では岩の方を始めますね。変化させて欲しい金属があれば言ってください」
「そうねぇ……ヒズルカネとか出来ちゃったりするのかしら?」
「あー、多分出来ません。見た事も聞いた事も無い物はちょっと変化させようがないです。実物を見れたら出来ると思いますけど」
ヒヒイロカネなら前世の記憶でワンチャン変化させる事が出来たかもしれませんが、ヒズルカネは流石に無理っぽい気がします。スキルの発動に必要な情報が無さすぎてどうしようもない感じです。
「残念、私も実物は見た事が無いのよねぇ。ヒズル国に行けばどこかにはあると思うんだけど、いいわ、オリハルコンならどう?」
「それなら出来ますよ。早速始めますね」
先程ストレージから吐き出した大岩に手を当てて金属変化させて行きます。
ヒヒイロカネ、うわっ、出たっ!?
「リンさん」
「はい?」
「ヒヒイロカネなんてどうでしょうか?」
「ヒヒイロカネ……ってどんな金属かしら?」
ヒヒイロカネの情報は出回っていないのか、それともリンさんが知らないだけか、あるいはヒヒイロカネの事をヒズルカネと呼称していて気付いていないだけなのか……うーむ。
「ヒズルカネの特徴って知っていますか?」
「えっと、確か青白く光り輝いて見えるとか」
「ふむ」
このヒヒイロカネは赤く金色に輝いていますのでヒズルカネとは別物という事ですね。
「ちょっと鑑定してみますね」
「うん」
鑑定スキルを使ってヒヒイロカネを鑑定。
ヒヒイロカネ、赤く金色に輝く金属。
私の鑑定スキルレベルは現在22ですので、神話級のアイテムの鑑定はほとんど出来ないみたいです。最近スキルのレベル上げをサボっていましたから、また鍛えないといけませんね。
インベントリから鑑定指輪を取り出し、指にはめて再度鑑定。
ヒヒイロカネ、神話級アイテムの強化によく使われる。熾天使召喚の触媒にもよく使われる。そのままだと歯形が容易につけられるほど柔らかいので合金がおすすめ。ちなみに我がお主のために金属担当の神に頼んで作って貰ったストレージバグのお詫びじゃ。スキル担当の神にはお主の言っていたサナノウタという神を創造して助手としてつけたのでスキル同士の合成も今後は安心して出来る様になっているはずじゃよ。それとお主のギターをうっかり壊してしまってな、また作って捧げてくれると助かるんじゃが。まぁ、それはそれとして、いつでもお主を見守っておるから生を思う存分楽しむんじゃぞー。ではなー。
「……柔らかい金属らしいのでオリハルコンに変化させましょう」
「え、うん……?」
今鑑定した内容は見なかった事にして、ヒヒイロカネという存在も闇に葬りさることにしました。
というかまつろわぬ神を創造するとかヤバすぎてヤバイです。普通に人類滅亡案件です。異世界オワタ。
サナノウタ自身はエッチで可愛らしい見た目の少女なのですが、人が好きすぎて全人類と同化して「私が全人類だ」とか言い出すやべぇ奴です。ヤバイです。
得意技は人を不老不死にしてから感度5000兆倍にして自身の髪の毛に扮した触手を使った性感マッサージです。ヤバイです。
とにかくヤバイがヤバイ!
「急に固まっちゃってどうしたの?」
「いえ、ちょっと、未来を悲観してしまって……」
「大丈夫よ! ロトルルなら簡単に変化させられるわよ! 行ける行ける!」
リンさんは金属変化の事を言っているのでしょうが、なんだか大丈夫な気がして来ました。
「そうですね。最後まで諦めず頑張ってみたいと思います!」
「その心意気よ!」
リンさんの明るさで気持ちを切り替える事が出来ましたので、ささっとオリハルコンに変化させてしまいましょう。
ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ……。
バグかな?
ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ……。
「ちょっと調子が悪いので別の岩でも良いでしょうか?」
「え、良いけど、ダメな時はそのヒヒイロカネでも良いわよ?」
「これはダメです」
「え、そう……?」
「大丈夫です。すぐにオリハルコンを用意してみせますので!」
手頃な岩を探して金属変化。
鉄、銅、金、鉄、ミスリル、銀、ミスリル、銀、オリハルコン、銀、あっ! 鉄、銀、銅、銅、金、鉛、銀、ニッケル、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ、ヒヒイロカネ……。
「運営いいいいいいいいいっ!!」
「ひょわっ!? どうしたのよ!?」
「すみません、少し感情が昂ってしまいました」
ヒヒイロカネに変化させたらヒヒイロカネ以外に変化出来なくなるバグとかガチもんの不具合じゃないですか! 運営何やってんの! はよメンテして!
「スー、ハー……よし、次の岩を探しましょう」
「調子悪いなら無理しなくても良いからね?」
「大丈夫です! サクッとオリハルコンに変化させますからね!」
その後も何度かヒヒイロカネ変化不能バグに悩まされましたが、なんとかオリハルコンに変化させる事が出来たのでヨシとしておきます。
大量に余ったヒヒイロカネとか言う産業廃棄物は錬金スキルで液化させ、清掃魔法で綺麗さっぱり片付けておきましたよ。




