成人女性二人が少女一人を取り合った
「ママ、すごく美味しいね!」
「おかわりもあるから沢山食べてね」
「うん!」
あれからすっかり赤ちゃん返りしてしまったンルヴァちゃんに夕食を作ってあげて一緒に食事をしてあげています。ちなみにンルヴァちゃんのリクエストで野菜料理多めです。
「ずっとそばにいてねママ」
「ンルヴァちゃんは甘えん坊さんね」
「えへへ」
私も私で母性本能に目覚めてしまったみたいで、ンルヴァちゃんのママとしてしっかりと接していますが、これ、いつまで続ければ良いんでしょうかね?
「けふっ、もうお腹いっぱい!」
「よく食べたね。えらいえらい」
「ふふん。ンルヴァの胃袋は大森林だからね」
「すごいね」
「えへへ!」
冷静になって考えてはダメよロトルル。正気度チェックするまでも無く狂気に包まれているのだから。
食事を終え、ンルヴァちゃんの最近の話、綺麗な花を見つけたとか、変わった蝶々が飛んでいたなど、子供がするような話を聞いてあげて、話し疲れたところでベッドに移動して子守唄を歌って寝かせてあげました。
翌日。
「全て忘れてください」
「ンルヴァちゃんは可愛いね。良い子良い子」
「もう、やめて……恥ずかしくて、死んじゃう……」
一晩ぐっすり眠って正気を取り戻したンルヴァは、昨日の痴態を思い出して頭から煙が上がるほど顔を真っ赤にさせていました。
あまりからかい過ぎても可哀相なので、赤ちゃん扱いはこの辺りで終わりにしといてあげましょう。
さてと、昨日作った浴槽が地味に邪魔臭いので、清掃魔法で綺麗にしてからインベントリに片付けます。
「あ、持って行っちゃうのね……」
「言い値で売りましょうか?」
「相場はおいくら程でしょうか?」
浴槽の相場とか知りませんけど、前世では確か5万円〜50万円ぐらいだったかな? あれ? 風呂場全体の価格だっけ? 浴槽だけの値段だといくらくらいなんだろうか?
そもそも前世の相場で考えても仕方ないか。
こっちの世界の一般家庭には全く普及していませんので、多分、30万エルぐらいはするのではないでしょうか?
「1000万エルです」
「高過ぎッ!?」
「冗談です。相場とか知りませんけど多分30万エルぐらいはしそうかな?」
「買います!」
先に法外な値段を言った後に適正価格を提示するとなんだが値下がった気がする詐欺的なアレにまんまと引っ掛かるポンコツエルフなのでした。
ンルヴァのカードから私のカードに30万エルを移し、インベントリから浴槽を取り出して同じ場所に置き直しました。ケケケ、ぼろい商売やで。
「水を入れ替えるスキルとか魔法が無いと、お風呂の用意ってすこぶる面倒臭いですけど大丈夫ですか?」
「ええ、ママが居れば大丈夫でしょ?」
「ママ?」
「あ、いや、違くって……トトルルちゃんだっけ?」
「ロトルルです。名前を間違えるなんてママ悲しいわ……」
「ご、ごめんねママ! じゃなくて! ロトルルちゃん!」
「いっその事、正式にママになってあげても良いですよ?」
「いいの!? じゃなくて! 遠慮します!」
「ンルヴァちゃんは良い子だね。ママのところにおいで」
「ママー!」
「よしよし、良い子良い子、ンルヴァちゃんは可愛いねぇ」
「えへへ」
「なに、しているの……?」
「あ」
ママプレイでからかい、赤ちゃん返りに抗えずに抱き着いて来たンルヴァちゃんをあやしていると、いつの間にか来ていたスティアに、とんだ醜態を見られて顔を真っ赤に染めるンルヴァちゃん。
私は立派にママとして、ンルヴァちゃんに接していたので恥ずかしい所など何一つありませんから恥ずかしくないです。本当です。
「これは、違うの、その、ね?」
「お友達が来ちゃったから、続きはあとでしましょうね? ンルヴァちゃん」
「うん! ……って、違うのよ、これは、そういうのではないの、スティアなら分かってくれるわよね?」
「ええ、よく分かったわ。ロトルルちゃん、私のところに来てくれるかしら? その異常者の近くに居るとあなたまでおかしくなってしまうわ」
「全然分かってくれてないッ!?」
その後も誤解が誤解を生み、終いには前世で見た子争い話のように私の左右の腕を引っ張り合って「ママは私のなんだから!」「この子は私が育てます!」と私の取り合いになってしまいました。
子供が親を取られまいと争う行為もまた、親権争いと言うのではないでしょうか? 赤ちゃん返りした大人を子供と言って良いかは分かりませんけども。
エアロアダマンタイト製の体なのでどんなに引っ張り合っても問題は無いですが、私が痛がらないといつまでも引っ張り合いが続きそうなので、二人の体力がどこまで持つか試したくなってきちゃいましたので、しばらく様子を見ましょうか。
「離しなさいよ!」
「そっちこそ!」
10分経過。
「いい加減にして!」
「あなたこそ!」
20分経過。
「ふぬぬ……!」
「ぐぬぬ……!」
30分経過。
「ハァハァ……」
「フゥフゥ……」
1時間経過。
「もうムリ……」
「もうムリ……」
ロトルルWIN!
いやぁ、長い戦いでしたね。
最後は二人同時に私の腕を離してしまい、床に倒れ込んでしまいました。
美人二人が私を取り合い罵り合う姿を見るのは最高に楽しかったです。
「そろそろ私は行きますので、二人ともケンカは程々に、今後は仲良く暮らしてくださいね」
「お、置いてかないで……」
「一緒に、暮らしましょう……」
「それでは、アリーヴェデルチ!」
ロトルルはクールにその場を去りました。




