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街中にエルフの恥ずかしい噂話が広まっていた

 ンルヴァとスティアに対してなんでも言う事を聞かせられる権利を手に入れた私は現在、冒険者ギルドでカードの再発行をしてもらっています。


「今回は特別に再発行手数料は無料とさせて頂きます」

「どうも」


 スティアに再発行してもらったカードを確認し、また厄介ごとが起きないようにびっちりと書かれたスキル一覧から調合、合成、錬金のスキルだけを残して偽装魔法で修正しました。


「これでヨシッと」


 再発行されたカードにもしっかりと残金が表示されていたので、このカードシステムを作った人には本当にリスペクトしかありません。ベニッシモ素晴らしい。


「ねぇ、ロトルルちゃんのスキルの秘密ってやっぱり教えてはくれないかな?」

「良いですよ」

「やっぱりダメよね……って、良いの!?」

「みんなには秘密ですよ?」

「も、もちろんよ!!」

「では、何故私のスキルが沢山増えたのかと言うと、スキルを持ったアイテムを体に合成したからです」

「……それだけ?」

「それだけですよ?」

「……体に悪影響とかは無いの?」

「あれば調合スキルで外します」

「なるほど……教えてくれてありがとうロトルルちゃん」

「いえいえ」


下手に隠してまた余計な茶々を入れられるのも面倒ですし、今のスティアなら教えたところで私に実害を及ぼす何かをしてくるとは思えませんからね。


ちらりとンルヴァの方を見てみると、長耳をピクピクとさせてバッチリ聞き耳を立てていたみたいです。


「ンルヴァ、発情した猫の物真似をしてください」

「え、にゃーご! にゃーご!」

「次は発情した犬の物真似をしてください」

「ヘッヘッヘッヘッ! アオーン! アオーン!」

「お手!」

「ワン!」

「おかわり!」

「ワン!」

「チンチン!」

「ワンワン!」


両手を犬の手のように曲げて、腰を振り振りとさせています。可愛いですけど、お手からはお願いしていませんので、契約魔法とか関係なくンルヴァ自身がその場の勢いでやっただけです。指摘すればめちゃくちゃ恥ずかしがってくれると思いますが私はそこまで意地悪では無いのでなにも言いませんよ。


「ンルヴァも今聞いた事は秘密にしてくださいね?」

「……はい」

「ロトルルちゃん……」


スティアが何か言いたそうな視線を送って来てますが、本当に嫌なことなら断れるはずなので、ンルヴァは聞き耳を立ててた罪悪感で私のお願いを聞いたのでしょうね。


「さてと、私は市場に買い物に行きますけど二人はどうしますか?」

「……付き合うわ」

「私も、と言いたいところだけど、さっきは無理言って抜け出して来ちゃったから、このまま仕事を続けるわね」


 という事でンルヴァと市場でお買い物デートです。


 市場にやって来た私とンルヴァは道行く人たちに、奇異な目で見られたり「あれが噂の……」とか「例の抱っこの子ね?」とかコソコソと話をされながら目的地に向かっています。


 冒険者ギルドに行く道中は人通りが少なかったのもあり、あまり気にはなりませんでしたが流石に市場だと人が大勢居ますので、私たちを見つけた人たちがそこかしこで噂話を楽しんでいるようでした。


「あー! 抱っこエルフだ! ママー! 抱っこエルフが居るよ!」

「こら! 大声で言ったらダメよ! こっちに来なさい!」


 無邪気な女の子がンルヴァを指差して抱っこエルフという恥ずかしい称号で叫ぶと、その場に居た人たち全員が一斉に噴き出して、流石におかしいと思ったンルヴァが私に助けを求めてこちらを振り向きました。


「昨日、酔い潰れたンルヴァを赤ちゃんを抱っこするように抱き抱えて街中を練り歩き、恥ずかしい噂話が流れるように仕向けました」


 それを聞いたンルヴァは体をぷるぷると震えさせ、顔が茹でタコのように真っ赤になってしまいました。


「シニタイ……!」

「全力で生きてくださいね」

「くっ……! 殺して……!」

「くっころの使い所が間違っていますよ?」

「何の話か分からないけど、ここには長居したくないわ! 早くお店に入りましょう!」

「しょうがないにゃあ」


 ンルヴァに腕を引かれて雑貨屋に入ると、突然肩を掴まれてガクガクと揺さぶられました。


「なんでそんな恥ずかしい事をしたの!?」

「仕返しですけど、何か?」

「くっ……! それにしても陰湿じゃない!」

「そうでしょうか? 子供を行方不明にしたエルフよりは、子供に抱っこされてお家に帰った泥酔エルフの方が噂話として100倍マシでは?」

「それは……そうだけど……もう少し、何か、こう、無かったの?」

「その場の思い付きでやりました。反省はしません」

「くぅううぅっ!」


 先程よりもガクガクと揺さぶる力が強くなってきましたが、私の首はエアロアダマンタイト製なので、どんなに揺さぶられようが折れたりはしないので好きにさせときます。


 それに……。


「おい、例の抱っこエルフが子供を揺さぶっているぞ?」

「本当だわ。あの子大丈夫かしら?」


 また新たな噂話が広がろうとしていますしね。


「違っ、これは、もう!」


 私の腕を取り、店から出ようとするンルヴァを引き止めます。


「私がまだ買い物をしている途中でしょうが!」

「うぅぅ、いっそ殺して……!」

「生きろ、そなたは美しい」

「な、何を急に!? 恥ずかしい!」


 前世では有名なセリフですが、こっちでは当然流行っていないので、言葉通りの意味として受け取っちゃいますよね。美しい見た目なのは事実なのでそれで良いですけど。ツッコミが欲しいなぁ。


 店内を一通り見回して、必要そうな物なら自分で作れば良いという事に気付いたので、ここは冷やかすだけにして、次は食料品店に向かう事にしました。


「買い物をするんじゃなかったの?」

「雑貨なら自分で作れるので大丈夫でした」

「……我慢、我慢よ、私!」

「エルフもトイレに行きたくなるんですね」

「違うわよ!」


 握り拳をぷるぷるとさせて、今にもぶん殴って来そうな気配をビンビンに漂わせている抱っこエルフは、なんとか理性を保とうと気を紛らわすために深呼吸を繰り返しています。


 暴力エルフなんて称号は流石に可哀相なので余計な茶々はこの辺りでやめておきましょう。


 食料品店へ向かう道中でも、私たちを見かける度にコソコソと噂話をする街の人たちにうんざりとした表情を見せるンルヴァに「罪には罰が必要ですから」と私が言うと悲しいような、辛いような、怒っているような酷く微妙な顔を見せてくれたので、私は大変満足出来ました。

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