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ホームシックになった

「ちわーっす。ロトルルでーす」

「きゃっ!? 突然現れるのやめていただけないかしら!?」


 素だとお嬢様っぽい口調になるルリコさんは置いといて、宿屋にはもうセイラさんは居ないみたいで帰ってしまったようでした。


 これはタイミングが良かったのか、それとも悪かったのか……。


 居ないものはしょうがありませんので街へと出かけましょう。


「じゃ、街に買い物に行くのでこれで」

「ちょっと待ちなさいよ! こんなゲートの出口みたいな感じに使われたら、って、もう居ない!?」


 すっかり忘れていた虫カゴを回収して宿屋を後にしました。


「こうも忘れるとは、私は生き物を飼う資格は無さそうですね……」


 人目の付かない路地裏へ行き、ゴールデンカブトムシたちとジュエルクワガタたちから調合スキルで金や宝石を取り除き、子供たちに弄ばれて死なないようエアロアダマンタイトを合成しなおして孤児院に預ける事にしました。


 虫たちのおかげで虚空に消えてしまった宝石の一部が戻ってきたのはラッキーでしたね。ありがたや~。


 孤児院のそばにゲートを開いて辺りを見回し、人が居ない事を確認してから転移して、孤児院の玄関から堂々と入って職員室へ。


「おや、ロトルルじゃないか、また出戻りかい?」

「あ、おばあちゃん……」

「誰がババアだって?」

「言ってない言ってない」


 職員室に入ると院長おばあちゃんが子供たちの破れた服を縫い合わせていました。


 院長おばあちゃんについては特に話せる事はありません。

 ほとんど接点が無かったのでたまに見かけるおばあちゃん程度の認識です。

 前世の学校の校長先生と同じような感じですね。

 田舎の学校なら毎日話すかもしれませんけど、少なくとも前世のオタク君が通っていた小学校の校長先生と話した記憶はゼロです。


「で、なんか用かい?」

「えっと……子供たちの教育に虫のお世話でもどうかと、上手く繁殖させれば毎年市場で売れるようになると思いますし、どうでしょうか?」

「……飼えないなら買うんじゃないよ、まったく」

「……ごめんなさい」

「ま、虫ぐらい良いさ。で、迷惑料はいくら出せるんだい?」


 あの金髪ゴリラの上司なのでこういう話になるとは思っていましたけど、この孤児院には金にがめつい人しか居ないんじゃなかろうか?


 いや、まぁ、迷惑を掛けている事には違いは無いんですけども……。


「今は手持ちが無いので……ハイポーションを置いて行きます」

「ポーションでは無く、ハイポーションかい?」

「はい」


 ストレージからハイポーションを10本取り出しおばあちゃんに渡します。


「アイテムボックスなんてスキル、持っていたのかい?」

「偶然手に入っただけです」

「そうかい。で、これがハイポーション、なのかい?」


 スキルについて根掘り葉掘り聞かれるかと思いましたがあっさり流されてしまいましたね。

 私の表情から読み取って、この子はスキルについて何も話さないと察して流してくれたのかもしれません。


「鑑定指輪を持っているので、それで鑑定してみてください」


 インベントリから鑑定指輪を取り出しておばあちゃんの小指にはめました。

 ゴツゴツとした良い手です。


「便利な物を手に入れたね? これはくれないのかい?」

「ダメです」

「ケチだねぇ。さて、ハイポーションか。ふーむ、確かに本物だ。これはロトルルが作ったのかい?」

「そうです」

「……ふふ、良い子に育ってくれたみたいでワタシは嬉しいよ。よく頑張ったね」


 おばあちゃんに頭を撫でられたのは誕生日以外では初めてだったので、何かこそばゆい感じがしますね。

 ちなみに誕生日の分からない孤児の誕生日は孤児院に預けられた日付になります。


「一本飲んでみますか? 肩こり腰痛その他諸々を癒せますよ?」


 気恥ずかしさを誤魔化すためにハイポーションを一本勧めてみました。


「自分で飲むより売った方が金になるだろ」

「お金も大事ですけど健康も大事ですよ。じゃあ、もう一本あげるので今飲んじゃってください。飲まないって言うならあげません」

「誰が金にがめついドケチ守銭奴ババアだって?」

「全然全く一言も言ってない!」


 年老いたせいでちょっと呆けも入っているかもしれません。


 背中を掻く振りをして、ストレージからメガポーション2本を取り出し合成してエクスポーションを作成、一旦ストレージに仕舞い、おばあちゃんに見えるようにストレージからエクスポーションを取り出して、グイッと一本飲ませました。(この間10秒)


「あぽっ!?」

「ぶふっ!?」


 どうやら入れ歯だったらしく、エクスポーションにより急激に歯が生えて、コメディ映画並みの勢いで入れ歯が口から飛び出して行きました。


「何するんだいっ!?」

「健康になって良かったじゃないですか……ぷぷっ」

「この悪戯っ子め!」


 エクスポーションを飲ませた事により、皺だらけだった顔や手が艶を取り戻し、おばあちゃんからおばちゃんぐらいにまで若返ったような気がします。


「それにしても、体が軽いね。まるで20代の頃に若返ったようだよ」

「そうですね」


 流石に20代は無いですが余計な事を言うと藪蛇になるので、ツッコミたい欲を抑えて素直に肯定しておきました。


「また困った時はいつでも帰って来な。もちろん迷惑料は取るがね?」

「お金に困ってる時はどうするんですか……?」

「その時は体で払って貰うさ。飯の用意におむつの取り換え、庭掃除、やる事は多いよ?」

「うへ……」


 その後、鑑定指輪を返してもらい、虫たちをおばあちゃんに預けて孤児院を後にしました。


「雨か」


 空を見上げると雲一つ無く、星々がきらきらと瞬いているのが見えました。


「ホームシックになりそう……」


 前世のおばあちゃんを思い出してしまい、魂が前世の家に帰りたがっているのかもしれませんね。

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