忘れてた
「まだ裁縫ギルドの依頼を続けますか?」
「もちのろんよ!」
「麻雀って知っていますか?」
「いいえ、知らないわ」
「なら、いいです」
こっちの世界にも麻雀があるのかと思いましたが、少なくともアルリナは知らないみたいですね。
無いなら私が作って商人ギルドに売り付けて特許を取れれば大金持ち確定ですね。名称違いの似た物があったとかいうオチが見えてますけど。
依頼ボードを見に行くとアルリナは即決でコットン生地の作成を受けに行ってしまいました。
元々裁縫スキルを持っていたアルリナは楽しくて仕方ないのかもしれません。
「さて、私はレベル4の依頼を……って、なん、だこれ?」
アラクネの捕獲、アラクネの糸の採取、キラーカイコの捕獲、キラーカイコの繭の採取、ジャイアントタランチュラの捕獲、ジャイアントタランチュラの糸の採取。
「難易度跳ね上がりすぎぃ! ってレベル40の依頼だわ……」
これはうっかりロトルルちゃんですわ。オホホホ。
「改めてレベル4の依頼は……古着の補修、シミ汚れ取り、靴下の作成、枕の作成、ぬいぐるみの作成、カイコの捕獲、カイコの繭の納品、クワの葉の納品、縫い針の納品、裁ちバサミの納品、糸切りハサミの納品。ふーむ」
縫い針の納品でいっか。
「縫い針の納品は鍛冶ギルドか彫金ギルドで購入して持って来るのが一般的だけど、どうせあなたはここで作るんでしょ?」
「次のレベルまで何回ですか?」
「15回よ。つまり縫い針だけで達成したいなら150本の縫い針が必要って事ね」
一つの依頼で10本必要って事ですか。
縫い針の相場は知りませんが、ほぼおつかいクエストなので報酬金は微々たる物でしょう。悪くすれば赤字ですね。私には関係ありませんけど。
「分かりました」
お姉さんが呆れた顔をしていますが、構わず縫い針を作っていきましょう。
ストレージから鉄を取り出し……鉄で良いのかな?
「縫い針の素材に指定ってありますか?」
「無いわよ。鉄でも銅でもなんでも良いけど報酬金は変わらないから、金で作ったら大赤字ね」
「なるほど。ちなみに金で作ったらお姉さんは嬉しいですか?」
「え? ええ、それはまぁ、こっそり裏で着服するぐらいには嬉しいわね」
「悪い事したらダメですよ?」
「冗談よ。あなたも冗談でしょ?」
「さて、それはどうかな?」
「またまたぁ」
ストレージから金の延棒を取り出してお姉さんに見せびらかします。
「それ、本物じゃ無いわよね? おもちゃよね? ……ねぇ? なんで無言なのよ!?」
錬金スキルを発動し、カウンターに置いた金の延棒を細長く伸ばして縫い針の長さで切って150本作成し、糸を通す穴と針先を鋭く加工して金の縫い針を完成させました。
「どうぞ」
「……偽物よね? 流石に本物なんて持っているわけ無いものね? ね?」
「鑑定スキルで調べたら良いじゃないですか? 持っていればですけど」
「鑑定用の虫メガネぐらい持ってるわよ! 鑑定するわよ? するからね!?」
「どうぞどうぞ」
お姉さんがカウンター裏の棚から鑑定用の虫メガネを取り出し、縫い針を鑑定すると、目ん玉が飛び出るほど目を見開き、口をあんぐりと開いて驚愕してしまいました。虫でも口に放り込んで更に驚かしたいですね。
あ、虫カゴ……孤児院に置き忘れてきちゃった……?
「こ、これ、ホンモノ……!」
「急用を思い出したので失礼します」
「は、え?」
「では」
急いで孤児院に戻って虫カゴを回収せねば、物珍しさで商人に売られたりしたら大変です。
「ちょっと!? これ、どうすんのよ!?」
後ろから大きな声で呼び止められますが、今はお姉さんに構っている暇は無いんです。急げ急げ!




