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サバを読まされてた

 ルリコさんの泊まっている宿屋を後にしたロトルル一行は現在、裁縫ギルドに来ていました。


「こっちの服も良いし、こっちは可愛い、うーん迷う……」

「両方買えば良いのでは?」

「そう? じゃあ両方ください!」


 何故、裁縫ギルドに居るのかというと、ルリコさんが泊まっていた宿屋のお向かいさんが裁縫ギルドだったので、裁縫スキル持ちのアルリナが興味を持ったからです。


 というのは建前で純粋に可愛い服が欲しかったんでしょうね。


「さてと、買い物はこの辺りにしてクエストを見に行きましょうか」

「あはは、目移りしちゃってごめんね」

「アルリナが笑顔になってくれるならそれが一番です」

「ロトルル……(キュン)」


 私相手じゃなくてもお金持ちなら誰にでもキュンキュンしそうなアルリナは放って置いて依頼ボードを見ていきましょう。


「レベル1で受けられる依頼なんて変わり映えしませんよねぇ」


 前に来た時と同じ内容の依頼だったので、とりあえず糸の巻き取りでもしてみましょうか。


「あ、そうだ。アルリナさんアルリナさん」

「なになに?」

「ギルド登録してみたりしますか?」

「します!」

「じゃあ、一旦スキルを外すのでお手を拝借」

「はい」


 アルリナの右手をとり、麻痺魔法と静音魔法を発動しました。


「ちょっと天井を見ててね」

「……?」


 私に言われた通りアルリナが天井を見上げたので、素早くアルリナの小指をポーション化し、ストレージからメガポーションを取り出して振り掛けて再生させます。

 あとは魔法を解いて、調合スキルで裁縫スキル以外を取り除けば完了です。


「もういいですよ」

「天井に何かあるの?」

「いいえ、何も。ただ下を見られると発狂されそうだったので」

「発狂? って、何をしたの……?」

「小指をポーションにしただけですけど何か?」

「……ねぇ、ロトルル。殴って良いかな? 良いよね?」

「ちなみこれがアルリナポーションです。そしてこちらは鑑定指輪」


 ストレージから取り出した鑑定指輪をアルリナの指にはめてポーションを鑑定させます。


「えーっと、アルリナのブラッドポーション。わたしの名前……。このポーションを使用するとアルリナの持っていたスキルを手に入れる事が出来る。すごいね。アルリナの記憶の一部を手に入れられる。えー、やだー。アルリナの眷族になる。眷属って奴隷みたいなやつだっけ?」


 鑑定が終わり、指輪とポーションを返してもらったので念の為、アルリナポーションから眷属効能を調合スキルで取り除いておきます。

 自分自身に使っても何も起きないとは思いますが、突然アルリナが吸血鬼とかになられても困りますからね。


「という事でギルド登録が終わったらポーションを飲むか液化合成するので、そのあとギルドカードのスキル欄を偽装しますね」

「めんどくさいね」

「それ以上のめんどくさいに巻き込まれない為です」

「世の中、世知辛いや……」

「私利私欲の為にはなんでもする人達が居ますからね。常に気を付けねば」


 とか言ってギルド内で散々やらかしているじゃないか、と心配してくれる人たちに言っておきますが、ギルド内は閑古鳥状態で私たち以外にはギルド職員のお姉さんしか居ませんので心配無用です。

 そのギルド職員のお姉さんも裁縫スキル以外は持っていないので安心安全です。


「ギルド登録お願いします!」

「新規の方ね。じゃあこちらに手をかざしてください。はい、登録完了です。カードの再発券には手数料が掛かるから気を付けること。それでは良き裁縫師ライフを!」


 ギルド登録が無事に完了したようで、アルリナがはしゃぎながら自分のギルドカードを見せびらかして来ました。微笑ましいですねぇ。


 アイーシャ、人、女、15歳、裁縫師レベル1。


「ん?」

「なになに、何か変なところある?」

「いえ、名前が」

「名前? あ……」


 アルリナのギルドカードの名前欄にはアルリナではなく、アイーシャと記入されていました。

 つまりアルリナは名無しなんかでは無く、私が名付けるより先に名付けられたと言う事ですか……。


「わたし……アイーシャって、こんなの……今更……酷いよ……」

「アイーシャちゃん……」

「……普通そこはアルリナって呼ぶところじゃないかなぁ?」

「アルリナよりアイーシャの方が可愛いと思いますよ」

「……ありがと、けど私の名前はアルリナだから、ロトルルが名付けてくれたアルリナだから……」

「ではこうしましょう。今日からアルリナはアルリナ・アイーシャと改名する事にします」

「……貴族みたいな名前だね。でも気遣ってくれて嬉しいよ。ありがとうロトルル」


 ぎゅっと抱きしめられたので背中をぽんぽん叩いてよしよししてあげました。


「それにしても15歳でしたか……15歳と10歳で同じ体型……ヤバイですね」


 2歳もぶれると言う事はアルリナの居た孤児院は相当ブラックなところだったようですね。


「それ、今言う事?」


 アルリナの抱き締める力がより強くなりました。


「イタタッ、何か良いポーションを作るので許してください」

「ならば許す」

「ありがたき幸せ」


 うっかり本名が判明してアルリナの精神が病んでしまう案件は、いつもの茶番劇でなんとかなりました。シリアスな空気は苦手です。けど今は良いですがこういう事って後々ぶり返したりするので、今後もアルリナの家族としてフォローしてあげられたら良いなと思いました。

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