捕まった
「大変お世話になりました。さようなら!」
「寄付金持っていつでも帰って来いよ! 待ってるからな!」
こんな所、二度と来るか! ペッペッ!
「ロトルルちゃんまたね! アルリナちゃんも!」
「レフィー! またどこかで会いましょう!」
「レフィーちゃんまたね!」
見送ってくれるのが金髪ゴリラとレフィーしか居ないのは私の人望が無さ過ぎるという理由だけでは無く、卒業後に出戻ってしまう子たちも珍しい事では無いからです。
孤児院の窓から複数の視線を感じますが「何だゴミ虫か」ぐらいの感情しか伝わって来ないですしね。
とにかく地獄の孤児院から抜け出せたので今度こそリコルス国へ転移しましょう。
「ここってロトルルの地元なんだよね?」
「そうですけど観光とか出来ませんよ。私の能力に気付いた役人が私を追っている可能性があるので」
「そっか……ちょっと残念だね」
本当に残念そうな顔するのやめてもらえます? 私の心がざわついてしまうので。
というか、よくよく考えたら逃げる必要って無くなった気がするんですけど気のせいでしょうか?
ほぼ無敵の肉体を手に入れたスーパーロトルルちゃんがその辺のモンスターや悪漢にやられる訳も無いですし、あの痴女エロフもボコボコのけちょんけちょんにしてやれるはずです!
そう思ったらなんだかヤレる気がして来ました!
「やっぱり観光してからリコルス国に戻りましょう。今の私ならどんな相手でも勝てる気がするので」
「やった! でも無理はしないで良いよ? 逃げれる時はすぐに逃げて良いからね?」
「ええ、それはもちろん」
とりあえず孤児院から街までは距離があるので前に作った鉄の小屋に転移しましょう。
「外には……誰も居ませんね」
空気穴から外を覗いて誰も居ない事を確認し、転移で小屋から出ます。
「ロトルルは昔から変な物を作ってるのね」
「転移拠点があると便利ですからね」
街に着くと、アルリナのテンションが上がって「うわぁ」と何度も言いながら街を見渡し、どこからどう見ても田舎からやって来たお上りさん状態に、私はにっこりと微笑んで見守りました。
「ここがロトルルの地元なんだ、素敵な所だね!」
「リコルス国なんかと比べたらど田舎ですけど」
「この街の空気感好きだな。住むならこういう街が良いよ」
私的にはあまりお勧め出来る街では無くなってしまいましたが、アルリナが住みたいと言ってくれたのは素直に嬉しいです。
「さてと、次はお店巡りに出発!」
「無駄遣いはしないように」
「うっ、分かってるよ!」
手近な雑貨店に入り、この地方独特のデザインの食器や家具などをキャッキャウフフと見回し、アルリナが気に入ったと言う猫耳デザインのコップを購入してお店を後にしました。
「えへへ、可愛い」
先ほど購入した猫耳コップを食い入るように見つめながら次のお店へと向かうアルリナさん。
歩きスマホという訳でも無いですが、前を見て歩かないのは危ないですし、注意したい所ですが、こんなに嬉しそうにしてるのを邪魔するのはなんだが気が引けてしまいます。
まぁ、私が辺りを注意しながら歩けば大丈夫でしょう。
アルリナがこけそうになった時に支えられる様に少しだけアルリナのそばに寄って歩きます。
「壊れないように後で強化しておきますね」
「え、うん……?」
何ですかその目は? 変な改造とかしませんからね? ほんとだよ?
「ミツケタ」
殺気!?
「ミツケタミツケタミツケタ! アハハハ! ヤットミツケタ!」
転移……! いや、こんな街中じゃ目立ち過ぎる……! 逃げ……! アルリナを連れて無事に!? 無理!!なら! ここは迎え討つ!
「来るなら来い! ヤッテヤル!」
「ロトルル?」
「ツカマエタ」
「なっ!?」
「え? え?」
バカな!? どこから湧いて出て来たんだ!? 転移か!? いや、気配は感じていたから隠密系スキル辺りか!
くっ、こんな簡単に背後を取られるなんて不覚!
そもそも対人戦なんて一度もやったことが無いんだから戦う選択なんてしちゃダメでしょが、ロトルルのバカバカバカ!
「うひひ、ロトルルちゃん捕まえた!」
「くっ、離せ!」
「ロトルル!」
「さあ! ダイゲンにしたように私にもスキルを合成して貰うわよ!」
「へ?」
「んー?」
後ろを振り返って見ると、そこに居たのはシシドウさんやダイゲンさんたちとよく飲み交わしていた、微妙に露出度の高い軽装備を身に着けたお姉さんでした。名前は知りません。
「ダイゲンのヤツが急にぴょんぴょんと空を飛び始めて、問い詰めてやったらロトルルちゃんからスキルを買ったって言うじゃない。それからずっとあなたの事探してたのよ?」
「はぁぁ、びっくりさせないでくださいよ。えっと、知り合いだけど名前を知らないお姉さん」
「あら? まだ名乗って居なかったっけ? 私はルリコよ。改めてよろしくね」
「どういう事?」
ぽかんとしたアルリナにも分かるように説明して、改めて自己紹介をし直しました。
「前にロトルルちゃんに口説かれたルリコと言います。よろしくね」
「ロトルルに命を救われて姉にさせられたアルリナと言います。こちらこそよろしくお願いします」
「もうちょっと普通に自己紹介出来ませんか?」
「うふふ」
「ふふん」
何その笑顔、ロトルル分かんないや。
自己紹介も無事? に終わったので本題です。二人の関係性とか想像し出すと心労が溜まりそうなので考えないようにします。
「いつもの溜まり場じゃ困るわよね? 私が普段使ってる宿屋で良いかしら?」
「良いですよ」
ルリコさんが定宿にしているという宿屋へと向かい、2階の陽がよく差し込む部屋へと招かれると、早速欲しいスキルの一覧を紙に書き出し、そのスキルごとの値段を書いて欲しいと言うので適当な値段を書いていきました。
「飛行スキルが200万エルで剣術スキルが100万エル、ストレージスキルが200万エルで火炎スキルが50万エル、鑑定スキルが100万エルで裁縫スキルと料理スキルがタダと……え、タダでいいの!?」
「家事系スキルならタダで良いですよ。家事が出来ないってだけでバカにされる事が多いじゃないですか? ですから全人類皆家事スキル持ちにしたいという夢があったり、無かったりします」
「どっちなの? でもタダで貰えるなら助かるわ。それとついでに値引きとかしてくれないかしら?」
「値引きですか? うーん……ルリコさんの体を好きにして良いって言うなら考えますけど」
「……ロトルルゥ?」
アルリナの視線が痛いですが、絶好のチャンスを見す見す逃す手は無いかなってロトルルは思いました。
「それは、エッチな意味でかしら?」
「そう言う意味合いも含まれます。イタッ!? アルリナさん落ち着いて!」
無言の笑顔を浮かべながら私の頭をポカポカと叩いてくるアルリナははっきり言って怖いです。ここはスリープでも掛けて眠らせてしまいましょう。
「眠れ、安らかに……」
「くっ……起きたら……覚えてなさいよ……zzZ」
「ええ……こんな事して大丈夫なの?」
「へーきへーき、宝石とかプレゼントすればすぐに機嫌を直してくれますからね」
「う、うん。キミがそういう人なんだって分かってお姉さんは良かったよ……」
という事で邪魔者は眠りについたので商談再開です。
次にこういう事をする場合は、アルリナにはお金を渡して街の観光でもしててもらいましょう。
「それで、値引きの話ですが、どうしますか?」
「えーっと、具体的には何をするか聞いても?」
「そうですねぇ。まず胸を揉みます。それから脚。お尻。二の腕なんかも良いですね。つまり全身マッサージみたいなものです。痛い事もするかも?」
「なーんだ、それぐらいなら全然良いわよ。むしろ毎日でもして貰いたいぐらいだわ」
「では、交渉成立という事で、どれぐらい値引きして欲しいですか?」
「そうねぇ。そのリストのスキル全部合わせて300万エル、は言い過ぎね。500万エルでどう?」
「300万エルで大丈夫ですよ」
「ほんと!? やった! ロトルルちゃんありがとう!」
余程嬉しかったのかルリコさんが私の両手を掴んでぶんぶんと上下に振って感謝を伝えてくれました。腕がもげそうです。
「スキルを合成する前にルリコさんの持ってるスキルを見ても良いですか?」
「どうぞどうぞ」
「では、失礼して」
鑑定スキルを発動させ、ルリコさんのスキル一覧が表示されました。
潜伏スキルレベル53、釣りスキルレベル21、文芸スキルレベル2、見切りスキルレベル60。
やはりありましたね潜伏スキル。
見切りスキルもありますし、もし見つかりそうになっても相手の視線を回避したり出来ると思うので暗殺とか向いてると思います。
「ふむふむ、なかなか良いスキルをお持ちで」
「そう? 敵から逃げるのには向いていると思うけど、いざ戦いになると全然使えないわよ」
「んー? 潜伏スキルで背後から急所を狙えば無敵じゃないですか?」
「はは、2〜3匹ぐらいなら良いけど、それ以上は武器が持たないわよ」
「そこは良い武器を買いましょうよ」
「良い武器よりも、良い化粧品よ!」
なるほどね。装備代ケチって命落とすタイプの人でしたか。
「ルリコさん」
「何かな?」
「冒険者はやめて漁師になりましょう。あなたの天職は漁師です。間違いありません」
「えー!? 急にそんな事言われても困るよ!」
「文芸スキルはともかく、潜伏スキルと見切りスキルに釣りスキルと来たらもう漁師が天職としか思えません。ルリコさんは釣りをするために生まれて来たんですよ!」
「な、なんですとー!?」
「漁師に転職すると、この場で誓ってくれるなら、漁師に必要そうなスキルをタダで合成してあげます!」
「タダ!?」
「どうしますか? あと10秒で決めてください。10、9、8765432……」
「はやっ!? なります! 私、漁師になります!!」
「よろしい」
半ば強引にでしたが、このまま冒険者を続けて死んでしまうよりは漁師になってもらった方が断然良いと判断しました。
ルリコさんのスキル構成的にも漁師は本当に天職だと思いますしね。
「はぁ……ロトルルちゃんが焦らせるから漁師になるなんて言っちゃったけど、本当に漁師にならないとダメかな?」
「このまま冒険者を続けるよりも稼げるようになると思いますよ?」
「そ、そうかな? そうなら良いけどね?」
「ルリコさんなら高級魚ばんばん釣り上げてすぐにでも億万長者です! 間違いありません!」
「億万長者かー……なんだかやれる気がして来た!」
「では、早速スキルを合成していきますね」
「よろしくお願いします!」
まずはルリコさんの欲しがっていたスキルを合成していきましょう。
お腹ポケットのストレージから、ってルリコさん相手に偽装する必要はありませんね。
目の前の空間に手を突っ込んでストレージに入っている各種スキルを持ったブドウを取り出していきます。
「ブドウ?」
「ええ、スキルを量産したり生産するのに便利なので」
ルリコさんは口をポカーンと開けて放心してしまったようです。
無理に理解する必要もないのでこのまま面白顔を堪能しておきましょう。
飛行スキル、剣術スキル、ストレージスキル、火炎スキル、鑑定スキル、裁縫スキル、料理スキルを持ったブドウを一つずつルリコさんの手に持たせて錬金スキルで液化合成していきます。もちろんスキルレベルは1で合成してます。
「消えちゃったけど?」
「カードを見てみてください」
「うん?」
ルリコさんが胸元からカードを取り出すと(どこに仕舞っているんだ)目が飛び出るほどに驚き、またも私の両手を握るとぶんぶんと上下左右に振り回してくれました。もげるッ!
「凄い! 凄いわ! ロトルルちゃん! こんな事が出来るのはロトルルちゃん以外に居ないわよ!!」
「お、落ち着いてください。もげるー、もげてしまうー」
もちろんエアロアダマンタイト製の体はもげたりしないけど、気持ちの問題です。
「あ、ごめん。でも本当に凄いわね! でもこれ、本当にタダで良いの?」
「良いですよ。ルリコさんには私の都合の良い日に全身マッサージをしてあげますので」
「それって私にばかり都合が良過ぎない?」
「合法的に女性の体を触れる機会なんてそうそう無いんですから問題ありませんね」
「……ロトルルちゃんがそれで良いなら、良いけど」
この子本当に女性が好きなのね。という感情をルリコさんの表情から読み取れました。やはり私はニュータイプだったか。
「あ、もちろんマッサージする時は全裸でお願いしますね?」
「ああ、うん。お手柔らかにね……」
その後、漁師に必要そうな精神力スキル、集中力スキル、持久力スキル、体力スキル、筋力スキル、視力スキル、聴力スキル、技術力スキル、毒耐性スキル、麻痺耐性スキル、睡眠耐性スキル、気絶耐性スキル、疲労耐性スキル、痛覚耐性スキル、アイテムドロップ率スキル、品質スキル、水質スキル、幸運スキル、仕事運スキル、健康運スキルなどなどを合成していくと「こんなの誰にも見せられない」と言うのでギルドカードのスキル一覧を偽装魔法で偽装してあげました。
「鑑定スキルで私自身を見られたら一発アウトよ」
「それは、知りません」
ルリコさんに一通りのスキル合成は終わったので次は釣竿です。
ストレージからエアロアダマンタイト製の釣竿を取り出してルリコさんにプレゼントしました。
「釣竿?」
「私が作った絶対に壊れる事がほぼ無い釣竿です。ほぼ無いと言うのは私なら壊せると言う意味なので気にしなくて大丈夫です」
「う、うん。すごい釣竿っていう事は分かったわ。ありがとうね」
「早速ストレージスキルを試してみてください」
「え、ええ。やってみるわ」
ルリコさんが私の渡した釣竿を空中に押し入れると、釣竿は綺麗さっぱり消え去ってしまいました。ストレージスキルがちゃんと発動したようで良かったです。
「これ、凄く便利ね」
「釣り上げた魚もストレージに入れておけば腐る事はありませんよ。長く入れておくと死にますけど」
「そう……生き物はダメって事ね」
「時間停止型のアイテムボックスがあれば生き物でも運べるんですけどね」
「そんな神話級のアイテムボックスがあれば、それだけで一生遊んで暮らせるわね」
「そうですね……?」
何か今、閃きそうな気がしましたが気のせいでしょうか?
いいや、気のせいじゃ無いはず!
閃け脳細胞! 弾けろシナプス! 私ならどんな事でもお茶の子さいさい!
「見えた!」
「え!? 何が!?」
万物魔法スキルで時間停止型アイテムボックス魔法を発動!
時間停止型アイテムボックス魔法は超級魔法なので発動出来ません。という脳内アナウンスが流れた気がしました。
「ぐえ」
「さっきからどうしたのよ?」
「すみません。気にしないでください……」
「持病の発作とかでは無いのよね?」
「全然違うので大丈夫です」
「そう、なら良かったわ」
挙動不審な私の事を心配してくれるなんてルリコさん良い人だわ。
余計な心配をさせるのは良くないですから、次から人前での閃き行動は慎む事にしましょう。そうしましょう。
「さて、じゃあスキルの合成も終わりましたし、そろそろアルリナを起こして詫び宝石をプレゼントしないと」
「あら、私をマッサージするのはいいのかしら?」
「……今夜とか?」
「ふふ、それじゃあ今夜、楽しみに待ってるわよ?」
「へへ、こちらこそです」
という事でアルリナを覚醒魔法で起こしてあげると、ほっぺた引っ張り攻撃を受けてしまいましたが、すかさず宝石をプレゼントすると簡単に機嫌を直してくれたので、本当にチョロい姉だなとロトルルは思ったのでした。




