むしった
カニの食べ過ぎでトイレに閉じこもっていたアルリナがゲッソリとした顔で戻って来たので、食べ過ぎに効くかは分かりませんがとりあえずハイポーションを一口飲ませてみると、すっかり元気を取り戻したのでハイポーションはやっぱりすごいなと思い、これからもハイポーションの無駄遣いはやめられないなと思いました。
「小並み感」
「粉ミカン?」
「いえ、なんでも。そろそろスピードを上げましょう」
操舵室に入り、コンパスを見て流されていない事を確認し、サブ操舵輪を時計回りに回してスクリューの回転を上げ、船の速度を上げます。
「これで良し。さてと、しばらく暇ですし虫たちのお世話でもしますか」
アルリナは日用雑貨を各部屋に並べてくると言って寝室に置いていた旅行鞄を取りに向かいました。
オシャレなランプなどを買っていたのできっと素敵な部屋へと様変わりする事でしょう。
甲板に置いていた布袋から虫カゴを出し、中に入っている虫たちを鑑定スキルで確認してみると前世の世界の虫たちと変わらない身体構造だったので少し安心しました。
カニがウニだったりエビだったりしていたのでちょっとだけビビってたりとかしてないんだからねっ!
ストレージからエアロアダマンタイトを取り出し、虫カゴからカブトムシを1匹捕まえて合成させます。
何の躊躇も無くマッドサイエンスを始めるロトルルちゃんは控えめに言ってヤバイ奴ですね。
自身の身体で実験済みなので何の問題も無いはずですけど、カブトムシからしたら何してくれるねんとか思ってるのかもしれません。
より強い身体に生まれ変われるんだし許してね。
鑑定スキルで確認するとエアロアダマンタイトカブトムシと表示されました。
甲虫から金属甲虫へとランクアップです。
ほぼ破壊不能なカブトムシとして生まれ変わったので踏み潰したり、動物に食べられたりといった外因によって死ぬ事は無くなりました。
さすがに丸呑みされて胃袋から出られないとか、海に落ちれば窒息死しますが、胃の中で暴れれば吐き出されると思いますし、軽いので窒息する前にすぐに浮かび上がって来ると思います。そもそも飛べますので落ちる前に船に戻って来れますし、虫カゴの中で大切に飼うのでその辺は大丈夫です。
メスの方も同じくエアロアダマンタイトを合成して、虫カゴが壊されないように、これまたエアロアダマンタイトで虫カゴを作ります。
ストレージから土や枯れ葉や木の枝、餌などをその虫カゴに入れ、最後にエアロアダマンタイトカブトムシのオスとメスを入れます。
このエアロアダマンタイトカブトムシの番からどのような子供が産まれるのか今から楽しみですね。
その後もゴールデンカブトムシやジュエルクワガタなどを生み出し、回復スキルと音色スキルを合成した回復音スキルをスズムシに合成したり、調合スキルで美味しさを追求したコオロギの首から胴体を何度も何度も切り離したりと充実した実験が出来ました。
ちなみにコオロギの味は伊勢エビに近いと思います。もちろんコオロギも鳴くので回復音スキルを合成し、食用にもするので回復スキルも合成してあります。
部屋の飾り付けが終わったのかアルリナが戻って来て、私の凶行を目撃し、「うわぁ……」とドン引かれてしまいましたが、その時の表情は中々に感慨深いものがありました。
「すごく美味しいコオロギが出来たので食べてみますか?」
「ロトルル……少し疲れたんじゃない? 部屋で休みましょう?」
「親しい友人が精神を病んでしまった時のような目を向けるのやめてもらえます? 普通に傷付くので」
虫遊びも一段落ついていた所なので、船の内装がどのように変化したのか見に行く事にします。
「ほえぇー、まるで映画のセットみたいでオシャレじゃないですか。アンティーク感溢れてて素敵です」
「えへへ、ありがとう」
よく考えたらこっちの世界だと絶賛現代進行形なのでアンティークは褒め言葉になりませんね。アルリナは全く気付く様子もないので余計な事は言いませんよ。
あと映画のセットでオシャレと言いましたが、映画なんて記憶はロトルルにはありません。
アルリナが疑問に思わなかったという事は映画があるという事なのでちょっと見てみたいですね。こっちだとどんな作品が上映されているのでしょうか? 楽しみです。
「ところでエイガとかアンティークって何?」
「無いんですね……気にしないでください……」
どうやらアルリナは「オシャレ」とか「素敵」という単語だけで嬉しがっていたようですね。
映画、見たかったな……。




