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船を作った

 スッキリ目覚めて、今は宿屋の食堂で朝食を取っています。


「今日は船探しです」

「ねぇ……ここで暮らすっていう選択肢は」

「ねーです」

「そっか……」


 食べ終わったらさっそく港へと出発しましょう。


 さんさんと降り注ぐ太陽の光を照り返す海原、心地良い波の音、海鳥の鳴き声、船が岸壁を擦る音、潮風の匂い。


「海は良いですね」

「そうだね」


 アルリナと一緒に大きく腕を広げて胸一杯に深呼吸。


「よし、行きましょう」

「うん」



「ドラゲン島か……うちじゃ無理だな」


「ドラゲン島……他をあたってくれ」


「ドラゲン島かい……行けるには行けるが……いや、やっぱり無理だ、すまんな」


「ドラゲン島、親父が行って帰って来たと自慢していたが、その後ぽっくり逝っちまったよ……本当に行けたかどうかは分からん」


「ドラゲン島に行くには最低でも航海系のスキル、魔法、加護、祝福のいずれかを受けた大型のキャラベル船が必要だ。欲を言うならガレオン船が良いがそうそう入港して来ないからな。そして今入港している船の殆どが漁船と近海を周る小さな商船だ。つまりどうしても今すぐドラゲン島に行きたいっていうんなら、船を待つより1から作った方が早いって言う話だな」


 港に居る船乗りさん達にドラゲン島へ行けるか聞き回ってみましたが、悉くお断りされてしまいました。

 断られるたびにアルリナが笑顔になって行くので、あとで全身隈なく揉みしだこうと思います。


「残念だったねロトルル」


 笑顔を必死に抑えているようですが、口角が引き攣ってますよアルリナ。


「そうですね。では船作りを始めましょうか」

「え」


 無いなら作る、それがロトルル流処世術。


 前世で戦艦大和のプラモデルを作った経験はありますが、こっちで作るとなると馬鹿目立ちますので、その辺に停まっている帆船のデザインをパクろうと思います。

 鑑定スキルで船の構造を調べ、記憶保存魔法で完璧に覚えた後に人気の無い海岸へと向かいました。


「この辺りが良いですね。では船作りを始めましょう」

「と言いながら岩を消していってるのはどう言う事なの?」

「船の材料集めですけど?」

「岩で……、沈みそうな船だね?」

「岩でも沈まない船は作れますけど、まぁ見ててくださいよ」


 懐疑的なアルリナを余所に、海岸にゴロゴロ転がっている岩を片っ端からストレージに仕舞い込み、砂浜へと変貌させて行きました。


 ちょっとしたプライベートビーチぐらいの広さは確保出来たので、拾い集めた岩にエアロアダマンタイトを合成して量産し、大量のエアロアダマンタイトを確保していきます。


「良し、これだけあればしばらくは困らないでしょう」


 開けた砂浜に先程生産したエアロアダマンタイトの塊を置いて帆船へ加工していきます。(この間10秒ほど)

 両手を叩いて地面に手を当てる仕草なんてしていませんよ? ほんとですよ?

 アルリナにかっこ良く見せるために指パッチンはしましたけど。


「すごい……」

「ふふーん!」

「ロトルルはほんとになんでも出来ちゃうんだね!」

「ふふふふーん!!」


 アルリナに褒められたので身体変化スキルで物理的に鼻を伸ばすと気持ち悪がられてしまいました。ギャグをギャグとして受け取られないとちょっと凹みます。


 まだデザインをパクっただけの船なので、これからオリジナリティを追加していきましょう。


「あまり派手にしても海賊に狙われる可能性もありますし、幽霊船……は逆に目立つか? いかにも貧乏そうなボロ船風にしてみますか」


 帆を継ぎ接ぎ風に加工し直して、船全体の色合いも経年劣化で色褪せた感じの灰色に変更しました。


「えぇ……せっかく綺麗な船だったのに」

「安全対策です。外面は見窄らしくして襲われる可能性を低くしますが、内装は豪華客船並みに整えるので安心してください」

「うーん……でも、この船に乗ると思うと、ちょっとね……」


 どうにもボロ船風の見た目がアルリナの美的感覚的に相当気に入らないご様子。

 航海自体を嫌がっているアルリナのやる気をこれ以上無くさせるものどうかと思うので船のデザインは好きにさせてあげますか。


「ではアルリナが乗りたいと思うようなデザインの船にしますので、どんな感じにしたいか言ってみてください」

「え、えーと……急に言われても思い付かないよ」

「言わないとボロ船のままにしますよ?」

「ちょっと待って! えーと、うーんと、まずは船の色をツヤツヤの木目がくっきり見えるライトブラウンにして、帆も継ぎ接ぎの無い真っ白にするでしょ、それから船首に女神様の像を付けて、あとでっかい大砲を載せられるだけ載せて、それからそれから……」

「一つずつやって行くので、いっぺんに言わなくても大丈夫です」

「う、うん」


 その後はアルリナの要望通りに船を加工していき、手摺や窓枠などの細かい部分の造形まで拘り始めた所でストップを掛ければ良かったのですが、私も悪ノリし始めてしまい、最終的に王族が乗るような豪華戦艦へと魔改造されていました。


「ふつくしい……」

「カッコイイ……」


 元が小さな帆船だったとは思えないほど改造し尽くされた船、いや艦を見て「こんなの乗れないな……」と私は小さく呟くのでした。


「さてと、お遊びはこの辺にしてちゃんとした船を作りましょうか」

「え?」

「……私が何か言わなくてもアルリナはもう分かっているんじゃ無いですか?」

「ロトルル……悲しいね……」


 あまりにも悲しそうなアルリナの顔を見たら、この艦を加工し直して別の船にする事など私には到底出来ませんよ。

 それにそんな事をしてしまえばアルリナの心を深く傷付ける事になってしまいます。


「スモール」

「ええ!?」


 という事で万物魔法スキルで対象を小さくする魔法を使い、豪華戦艦を1/100スケールのミニチュアにしてアルリナに渡します。


「可愛がってあげてください」

「……そんなペットみたく言われても、でも気持ちは受け取っておくね」


 赤ん坊でも抱えるかのようにミニチュア豪華戦艦を抱きしめるアルリナの姿は聖母そのものと言っても過言ではないほどに慈愛に満ち溢れていました。陽射しの向き的に後光が差している様にも見えます。


 ……よく考えるとアルリナを聖母と言うにはちょっと欲が深すぎる気がしますが、今の見た目だけなら聖母と言っても構わないでしょう……たぶん。


 その後は無難に、どこにでもありそうな帆船を作り上げました。


 メインデッキに魔力を込めると魔法の砲弾が発射される魔導大砲を左右合わせて6門設置し、船首と船尾に魔力充填に少し時間が掛かりますがシロナガスクジラぐらいなら一撃で沈められる威力を出せる大魔導大砲をそれぞれ1門ずつと、船首像はようじょ、では無く女神様。マストは2本の3段帆、前部甲板に三角帆、後部甲板に補助帆、メインデッキの左側に手漕ぎボート。前部甲板に操舵輪。


 後部甲板に操舵室、サブ操舵輪とでかいコンパスと世界地図、転覆回避用飛行モードレバー。船に飛行スキル合成済み。


 第2甲板、前部に客室とトイレ(私とアルリナはアイドルなので使いません)、中部に食堂と調理室、後部に寝室と浴室。


 第3甲板、アルリナ用にピラミッドのように並べた金塊と山と積まれた金硬貨、宝石各種をばら撒いたお宝倉庫、後部に魔導エンジンルーム、後部船底にスクリュー。帆船とは言ったが動力が風だけとは一言も言っていない。


「最後に名前を付けたら完成です」

「ルルリナ号」

「もう考えていましたか」

「そしてこっちの子はリナルル号。姉妹船よ」

「……あ、はい」


 アルリナの目からハイライトが消えて、ミニチュア豪華戦艦を撫でています。


 手塩に掛けて育てた我が子よりも先に妹の子供が日の目を見る事にドロドロとした感情が芽生えてはいるが、そのドロドロとした感情に自分自身はまだ気付いていないとかなんとか。

 私の勝手な想像でしかありませんが、アルリナが今どういう感情を抱いているのかは分かりません。

 下手なフォローをしたりすると藪蛇になりそうなので、ここはそっとしておくのが正解でしょう。


 光の消えた笑顔のアルリナさんの事は一旦置いといて、ストレージには一体どれぐらいの大きさの物なら入れられるのかの実験です。

 入ったらラッキー、入らなくても魔法で小さくすれば良いやと全長30メートル、マスト高24メートルの実物大、というか実物をストレージに仕舞ってみると、スルッと難無く入ってしまいました。


「ロトルル……」

「あはは、これは流石に人前ではやりませんよ」


 私のファインプレー(珍プレーとも言うかもしれない)でアルリナの表情が戻ったので全てヨシッ!


 航海の準備は整ったのであとは宿屋を引き払って出発です。

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