正気度チェックした
ションボリしているアルリナを引き連れて肉屋などを巡って食料品を買い集め、宿屋に戻りました。
部屋に入り、ストレージから1万エル金貨を取り出してアルリナに渡します。それと服と旅行鞄も出しておきましょう。あと姿見も。ついでに各種パイロットスーツも。
「ポーションなどを作りにしばらく外出するので、アルリナは自由にしててください」
「えっと……?」
「私が居ると邪魔でしょう?」
「あー……なるほど」
「では、行ってきますね」
「行ってらっしゃい!」
顔を赤くして何かを誤魔化すように声を張るアルリナも可愛いですねぇ。
戦利品の確認って友達と一緒にするのも悪くはないと思いますけど、やっぱり一人で確認した方が気兼ね無く出来ると思うんですよ。
私はそういう気遣いの出来る人間なのです。
一人ファッションショーを開催すると思われるアルリナを宿屋に残して近所の森にやって来ました。
「さてと、ハイポーションの在庫補充作業をしますか」
まずはその辺に生えているであろう薬草を鑑定スキルで見つけ出して、根っ子が残るように薬草を採取、ストレージからハイ肥料ポーションを取り出して霧吹き、また採取を繰り返してある程度集まった所でハイポーションを作成し、ストレージを埋めて行きます。とりあえず3スタック分の900本を目指しましょう。
一人で黙々と作業を進め、静かな森で単調な作業も捗り、気付いたらハイポーションを1200本ほど作成した所で気付きました。
「回復効果を持った果樹を作ってポーションにした方が効率が良かったのでは?」
今更ですけど思いついてしまったので作ってみましょう。
ストレージからリンゴを取り出して丸かじりします。
残ったリンゴの種とハイポーションを合成して回復効果を持ったリンゴの種を作成。
開けた場所に植えてハイ肥料ポーションを霧吹きし、実が成るまで成長させます。
「よしよし、回復効果を持ってるね」
回復効果を持ったリンゴの木が完成したので、実ったリンゴを一つ取ってポーション作成スキルでハイポーションを作ってみます。
「あれ、メガポーション?」
何故かメガポーションが出来てしまいましたが、よく考えてみるとハイポーションの回復効果を持ったリンゴの種をハイ肥料ポーションで育てた事により、より良く成長したという事ではないでしょうか?
「まあ、ラッキーという事で」
いくつかリンゴをストレージに入れ、残りは樹木ごとメガポーションにして700本程度作成出来ました。
「まさに金の生る木! ……ハッ!?」
待ってよ……。そんな事、出来ちゃうの……?
さすがにやばくない? やばいよね? ヤバすぎて漏らしちゃいそう……。
「でもやるんだな、これが」
リンゴの種に金を合成。
地面に植えて、ハイ肥料ポーションを霧吹き。
見る見るうちに黄金に輝くリンゴの木が成長しました。
「おぉ……アルリナに見せたら発狂しそうだ……」
黄金のリンゴ。
世界各地の神話や伝説に出てくる、正にファンタジーの極みみたいな存在。
「こんなもの、誰にも見せられませんね……」
戦争の火種どころの代物じゃありませんから、店で売るとかそんな事、間違ってもしちゃいけません。
「勿体ないですけど、処分で」
という事で処分、する前にポーション化してみます。
「黄金ポーション。えっと、飲むと糞尿が黄金になると……」
ガチの黄金水……アルリナに飲ませてみるか……。
冗談はさておき、黄金のリンゴは特級危険物として錬金スキルで金のインゴットにしてストレージに仕舞っておきます。
ちなみに常人の顎では黄金のリンゴは硬くて食べられません。食べても美味しくないと思いますけど。
空を見上げると太陽が天辺を過ぎた辺りに移っていたので3時間ぐらいは経過したようですね。
恐ろしい集中力です。
我が事ながらちょっと引きました。
ポーションはこれで良いとして、夕方ぐらいまで時間を潰したいので他の作業に移りましょう。
ストレージからエアロアダマンタイトを取り出して、お試しで私の爪に合成してみます。
「ほほう。エアロアダマンタイトネイルですか……」
ただの爪切りでは絶対に切れなくなりましたが、錬金スキルなどで加工すれば問題ありません。見た目も特に変わっていないので大丈夫でしょう。
次に私は自分の骨にエアロアダマンタイトを合成しようと思いましたが、液化合成だと皮膚までカチカチになってしまうと思い、身体変化スキルで左腕の骨を剥き出しにしてみました。
「うーん、グロい……」
正気度がガクッと下がりましたが発狂するほどではありません。
剥き出しになった骨にエアロアダマンタイトを合成。
「エアロアダマンタイトボーン、軽くて硬い成長する金属骨……ふむ」
こちらも見た目に変化無し。痛みなどもありませんが右腕と比べると羽根のような軽さです。これぐらいの変化なら直ぐに慣れるでしょう。
という事で全身の骨に合成していきます。
「流石に背中は難しいな……」
目に見える範囲の骨はあらかた終わりましたが、背中側を自分でやるには無理があります。
なのでもう1人、自分を作りたいと思います。
「分身魔法」
万物魔法スキルで分身魔法を使い、もう1人の自分を召喚してみました。
「……うふん」
「……かわヨ」
分身しても思考が分散される訳では無いようです。せいぜいマルチタスクがしやすくなったぐらいですね。
……ナニは捗りそうですが。
「自分の体でどっちも卒業ってどう思いますか?」
「やっぱり好きな人に捧げたいかなってロトルルは思うよ?」
「ですよね」
自分自身との対話って不思議な感じがしますね。
頭の中だけで考えるよりも、よりクリアに答えが導き出せます。
「では背中側をお願いしますね」
「りょ」
思考は一つなのでいちいち話し掛けなくても良いのですが、なんとなくそうしてしまう感じです。
鏡に向かって話し掛けているというより、家族に話し掛けている感覚に近いと思います。
服を脱いで身体変化スキルで背中側をぱっくりと開くと、分身体の視界が共有されて正気度チェックが入りました。
土から錬金スキルで100面ダイスを作って、50以上の出目が出たら発狂する事にしましょう。
「ほいっ」
放り投げたダイスが地面をころころと転がり、90の面で止まりました。
ロトルルは発狂した。
「えへ、えへへ、えへへへ。ロトルルちゅわ〜ん、チューしよ、チュ〜」
「うわ、鏡で見るよりもキモい」
自分自身なので遠慮無くベロチューを楽しみました。
鏡では味わえない快楽にハマってしまいそうで怖いです。私の唇、感度良過ぎ。
おふざけは程々に、背中側の骨にもエアロアダマンタイトを合成し、全身の骨をエアロアダマンタイトボーンへとアップデート。
ロトルルはエアロアダマンタイト人間へと進化した!
「とりあえず実験です。思いっきり殴ってください」
「とりゃ!!」
「あうっ!」
分身の私で私の顔を思いっきり殴って貰いましたが、普通に痛いですね。なんなら分身の私の拳も痛いです。
「皮膚や筋肉、内臓も強化する必要がありますね」
皮膚や筋肉にエアロアダマンタイトを合成してしまうと人の温もりが消えてエッチな事がし難くなりそうで嫌ですし、エアロアダマンタイトシリコーンを試しに合成してみますか。
二の腕部分にエアロアダマンタイトシリコーンを合成して感触を確かめてみます。
「うーん、ぷにぷに感が増したかな? ちょっと噛んでみて」
「ガブッ、ガジガジガジ」
「程良く痛いね。これ以上噛むと歯が砕けそうだし、これで良いかな」
「いいとも!」
という事で皮膚と筋肉にエアロアダマンタイトシリコーンを合成しました。
「あとは内臓か……正気を保てるか心配だ……」
内臓もエアロアダマンタイトシリコーンの合成で良いと思いますが、果たして直視出来るでしょうか?
「やっちゃいなよ、そんなのロトルルなら簡単でしょ?」
「厄介なものですね。もう一人の自分というのは……」
「ロトルルならなんとでもなるはずだよ!」
「ここからは地獄だよ……?」
「やってみせてよ! ロトルル!」
「……えぇ、言われなくても私ならやれます!!」
やりたい私と、やりたくない私の自問自答の結果、やる事に決めました。
まぁ、最初からやる事は決まっていたので茶番劇ですけどね。
踏ん切りをつけたかっただけです。
身体変化スキルで胸からお腹までぱっくりと開いて内臓を露出させ、ドクドクと鼓動する内臓一つ一つにエアロアダマンタイトシリコーンを合成していきます。
「うっ、グロ過ぎる……吐きそう……」
「頑張ってください私! もう少しで終わりです!」
「美少女の内臓の感触とか、一生忘れられないね」
「貴重な体験だね!」
心臓、肺、胃、肝臓、腎臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腸、膀胱、鑑定スキルを使いながら目についた物から順に合成していき、私はある事に気付いてしまいました。
「……そこを弄るのは流石に……」
「ちょっとだけなら……」
「そう、ですね……ではちょっとだけ」
それに少し触れた瞬間、私の脳に電流が走りました。
「あっ」
そこからの記憶は曖昧です。
内臓を直視し過ぎたせいで正気を失い、狂気に陥っていたに違いありません。
最後にはメガポーションを使うハメになってしまいました。
「やり過ぎましたね。反省」
「でも凄かった! またやろうね!」
「やりません!」
「えー、やろうよ?」
「記憶を消しましょう」
「うぅ……勿体無いなぁ……」
狂った者だけが辿り着けるような快楽など私には不要です。
もう二度としないように痛かった記憶だけを残して消し去りました。
「さて、次は頭です」
「うぇ……」
頭を開いて脳を露出させ、エアロアダマンタイトシリコーンを合成。
美少女の脳みそは綺麗なピンク色でした。エロい事しか頭に無いんだなとか言わない。
眼球、鼓膜、三半規管、舌などにも合成し、歯はエアロアダマンタイトを合成して、全ての作業完了です。
「あ、髪の毛を忘れていましたね」
「エアロアダマンタイトシリコーンを液化合成しましょう」
液化したエアロアダマンタイトシリコーンを髪の毛全体に馴染むように揉み込んで合成。
「さらふわで触り心地抜群だね」
「完全体ロトルル、あるいはパーフェクトロトルルとでも呼びましょうか」
我ながら素晴らしい出来です。
このパーフェクトな肉体ならば、例え火の中、水の中、あるいは隕石が衝突しようともビクともしないでしょう。
窒息はしますが。
「もう一度殴ってみてください」
「おりゃ!」
「あうっ」
痛いようで痛くない、少し痛いぐらいですね。
次は鉄バットを作ってフルスイングしてみましょう。
ストレージから鉄を取り出して錬金スキルでバットに成形。分身体に渡します。
「ふんっ! ふんっ! 行くよ!」
「バッチこい!」
「とりゃあ!!」
「ぎゃんっ!?」
私の頭を鉄バットでフルスイングしてみましたが、思っていたよりも全然痛くありませんでした。
「バットが折れちゃった」
「怖っ」
自分の体とはいえ、鉄バットがへし曲がる勢いで殴るなんてロトルルは恐ろしい子です。
「次はナイフ行ってみましょう」
「きゃー、自分殺しー!」
折れた鉄バットを錬金スキルで刃渡り25cmほどのナイフに加工し、分身体に刺してもらいます。
「それでは、どうぞ!」
「往生せいや!」
「いっ!?」
腹部を思いっきり刺してみましたが爪楊枝でチクッとつついた程度の痛みで表皮すら貫通しませんでした。
「ナイフが丸まってしまいましたね」
「よし、次はアダマンタイトナイフで試してみましょう」
ストレージからアダマンタイトを取り出してナイフに加工し、自分の人差し指をスパッと切り付けてみました。
「切れてなーい」
これでアダマンタイトよりもエアロアダマンタイトシリコーンスキンの方が硬いという事が分かりました。
鑑定スキルでただのアダマンタイトよりも皮膚に合成した物の方が硬いとは分かっていましたが何事も経験してみなくては分からない事もありますからね。
「次は、魔法で攻撃してみましょうか」
「ファイアボール」
「あつっ!?」
ファイアボールの炎に全身を包まれましたがサウナに入った時の暑さで特に問題は無さそうです。
「ぷっ!」
「あぁ!?」
分身体の視界共有で私の眉毛とまつ毛が燃えて無くなってしまった事に気付きました。というか間抜け顔を晒した自分自身を笑うなんて酷い私も居たものですね!
ストレージからハイポーションを取り出し、顔に振り掛けて眉毛とまつ毛を再生させ、エアロアダマンタイトシリコーンをそれぞれに合成しました。これで完璧。
一応言っておきますが今は全裸なので服が燃えてイヤンな事にはなってはいませんよ。
ん? 人気の無い森の中とはいえ全裸で居る事自体がイヤンですか? それはそうですね。
「次は雷を落としてみましょう」
「サンダー」
「ぎゃああああっ!?」
痛い痛い痛い!? めちゃくちゃ痛いです!?
「おご、おごご……」
「痛覚共有してなくて良かった……」
体には傷一つ付いてはいませんが、全身を静電気が駆け巡ったような鋭い痛みが走り、その場に崩れ落ちてしまいました。
「死にはしないけど、電気はダメですね」
エアロニウムもアダマンタイトもシリコーンも通電はしないはずですが、皮膚などに合成したせいで通電するようになってしまった可能性があります。
というか脳から送られる電気信号で体を動かしているのですから通電して当たり前でしたね。むしろ通電しなくなっていた場合を考えると結構ヤバかったのでは?
「ロトルルは死なないわ。私が居るもの」
魔力が尽きるまで分身体が勝手に消える事は無いので、少し面倒ですが分身体に元の肉体に調合し直してもらえば万事オッケーです。
備えあれば憂いなし! 流石私!
その後も風魔法や土魔法など、物理的な魔法で私の体は傷付くのか試してみましたが、どの魔法でも傷付けられないという結果になったので大満足でした。




