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ぼったくられた

「ほんとにごめんねロトルル!」

「アルリナのなら全然大丈夫ですよ」


 アルリナの嘔吐物を清掃魔法で綺麗にしたと見せ掛けて、そのほとんどをストレージに入れておきました。宝物です。後でこっそりと使いたいと思います。ナニに使うかはご想像にお任せしますが。


「それでは宿屋へ行きましょうか」

「うん」


 辺りはすっかりと暗くなってしまっているので宿屋を探します。


「綺麗な街だね」

「そうですね」


 これまで見てきた街とはまるで違った印象を受ける街並みで、看板などが魔法で照らされています。

 ネオン街とは少し違いますけど、どこかサイバーパンク感を醸し出していますね。

 見た目がカッコイイのでお店などを出店する時には素直にパクろうと思います。


 ストラ大陸とフーリア大陸とは違い、ユーグドラシア大陸は文明レベルが少しだけ進んでいるのかもしれません。

 こういった違いを見つけるのも異世界観光の醍醐味なのではないでしょうか?


 適当な宿を見つけて一部屋借りて晩御飯を食堂で頼むと、虫料理が出て来てアルリナが悲鳴を上げました。


「虫!? 虫だよ!? ロトルル!?」

「美味しそうですね。いただきます」

「えー……」


 前世の記憶の無いロトルルなら悲鳴をあげて卒倒していたかもしれませんが、前世ではイナゴの佃煮やらハチノコ、子供の頃には道端を歩いていた蜜アリなどを踊り食いしていた事があったので私は問題無く美味しく食べれました。


 虫が苦手な方に配慮して虫料理の描写は致しません。ご了承下さい。


 という冗談はさておき、ここが漫画やアニメの世界ならテーブルに並べられた料理にモザイク処理されているはずです。円盤化した時はモザイクが外れてリアル描写されていると良いですね。求めてない? 私が見たままをお伝えしたいだけですが何か?


「うぃぃ……幼虫……まだ動いてるよ……」

「甘くてクリーミーで美味しいですよ」

「こっちはセミだよ……」

「ほぼエビです」

「クモなんて……」

「カニとエビと鶏肉のハイブリット味ですね。美味しい美味しい」

「うぅ……また吐きそう……」

「いつでも受け止めるのでどんと来いです」


 アルリナに昆虫食はまだ早いみたいなので、ストレージからお皿とリンゴを取り出して料理魔法ですりおろしてアルリナに渡しました。


「こういうのでいいじゃない……なんでわざわざ虫なんて……」

「カレー味のうんちとうんち味のカレーどちらを食べたいですか?」

「え……どっちもやだよ……」

「つまりはそういう事です。無理して食べる必要は無いんです」

「う、うん……いや、どういう事?」

「分かりませんか? 私もそれっぽい事を言ってみただけなので特に意味はありません。ただうんちとカレーならカレーを食べた方がお腹は壊さずに済みますよね。たとえうんち味だったとしても」

「……そうだね。あと食事中に話す事じゃ無いね」

「これは失礼」


 食事を終えて部屋に戻り就寝しようとすると、お風呂は無いのかと遠回しにアルリナがお願いしてきたので清掃魔法と浄化魔法を掛けてあげました。

 こんな所にお風呂なんて作れませんよ。騒ぎになったら面倒ですからね。

 不服そうなアルリナをくすぐり攻撃で寝かしつけて、明日の予定を考えながらその日は眠りにつきました。


 翌朝。


「ちょっと商人ギルドでお金稼ぎして来ますね」

「え、うん……?」


 所持金が心許無くなってきたのでポーションを売り付けに商人ギルドへと向かいます。

 アルリナはお留守番です。大金を目にしてどうなるかは想像に難くないので。

 二人きりの時は良いですけど、他の人の目に触れてしまうとアルリナの名誉が傷付きそうで心配になりました。


 宿屋の店員さんに商人ギルドの場所を教えてもらい、向かってみるとラブホの様な如何わしい外観をしたハートマークだらけのお城風の建物に着きました。

 本当にここかと何度も確認しましたが看板が出ていたので間違いは無さそうでした。

 正直間違っていて欲しかったな……。


 恐る恐る扉を開けると、そこには胸元をこれでもかとはだけている痴女達が忙しなく働いている様子が見えたので、そっと扉を閉じました。


「あれれー? おかしいなー? 商人ギルドって看板が出てるのに、中身は大人のお店だ」


 アルリナは連れて来なくて正解でしたね。あの子にはまだ早い。


「あらぁ? どうしたのかしら? ここはあなたみたいな子にはまだ早いわよ?」


 後ろからおっとりとした声を掛けられたので振り返って見るとボン、キュッ、ボーンなナイスバディのお姉さんが大胆に開いている胸元をこれでもかと強調するように前屈みで話し掛けて来たので無意識に抱き着いてしまいました。


「あぁん。どうしたの? 迷子かしら?」

「はっ!? すみません! 無意識に吸い寄せられてしまいました!」

「あらあら、しょうがないわねぇ。むぎゅー」

「あへえ!?」

「気が済むまでこうしてて良いからね。一人で寂しかったね。いい子いい子」

「おほぉぉぉ!」


 どうやら迷子と勘違いされてしまったようですが、わざわざ訂正する必要は無いと判断しました。

 今が幸せならそれで良いじゃない。人間だもの。


 気が済むまでナイスバディを堪能したので本題に戻りましょう。ふへへ。


「商人ギルドに用があって来てみたのですが、その、そういうお店だとは思っていなくてですね。どうしたら良いかと……」

「あなた商人志望なのかしら?」

「商人志望というか、ギルドには登録してあるのでポーションを売りに来たんです」

「ポーションを……その年齢でって事はもしかして外国の方かしら?」

「そうですそうです。ストラ大陸のメボン国から旅をしているんです」

「ストラ大陸から……随分と遠いとこから来たのねぇ。良いわ、ポーションの買取ならこっちに来てちょうだい」


 手を繋がれてお店の裏手にある、小ぢんまりとした建物の中へと連れて行かれるとナイスバディのお姉さんがカウンター裏へと入って行きました。


「ようこそ商人ギルドへ! 私はギルマスターをしているサラと言います。今日はポーションの買取という事で早速品物を拝見させてもらうわね」

「え、あ、私はロトルルと言います。買い取って欲しい品物はこちらです」


 おっとりとしていた雰囲気からガラッと変わって商売人の口調や顔付きになってしまったので面食らってしまいました。この人、出来るッ……!


 お腹ポケットのストレージからハイポーションを1本取り出すと、ゾワッと怖気が走り、恐る恐るお姉さんを見るとニコニコ笑顔でこちらを見ていました。


「わ、私を食べても美味しくないですよ……?」

「……どういう意味かしら?」

「いつでも逃げられるという意味です」

「……そう。じゃあこちらからは何もしないわ」

「そうして貰えると助かります」


 逃げるとは言ったけど本当に逃げたりしたらどこまでも追いかけて来そうな感じがしてすごく怖いです。脚がガクガクして来ました。落ち着け私。


 勇気を振り絞ってハイポーションをカウンターに置くと、お姉さんは無言で100万エルは入っていると思われる現金袋をカウンターに置いてきました。


「え」

「足りなかったかしら?」

「いえ、私の国では10万エルほどだったので……」

「そう……。かなりぼったくられていたようね……。それとも余程貧乏な国だったのかしら?」

「小さい国なので後者かと……」

「ねぇ、うちの専属にならない?」


 お姉さんがそう言った瞬間、心臓を鷲掴みにされた様な感覚に襲われて全身に鳥肌が立ちました。怖いよぉ……。もう逃げ出したい……。


「……ヒズル国に向かって旅をしているので無理です」

「あら、残念……じゃあ、あるだけ出してちょうだい」

「……はい」


 ここで馬鹿正直に全部出すとヤバイ事ぐらい分かってます。2本ぐらいにしておきましょう。


 ストレージからハイポーションを2本取り出してカウンターに置こうとした瞬間、腕を掴まれました。


「うぇひっ!?」

「あるだけ、出してね?」

「ひゃい……」


 もうやだあああああああ!!


 蛇に睨まれた蛙の如く、お姉さんの言われるがままにストレージに入っていた全てのハイポーションをカウンターに出すと、お姉さんは満面の笑みを浮かべて本数を数え出しました。


「……21、22、23本ね。全部買い取るから2000万エルで良いわよね?」

「……はい」

「ありがとう。良い取引が出来たわ」


 しれっとカウンターに置いてあった100万エルの入った現金袋を引っ込めると、代わりに2000万エルが入っていると思われるパンパンに膨らんだ大きくて重そうな現金袋をどさりとカウンターに置きました。

 太っ腹なのか、がめついのか判断に困ります。(400万エルも損しているんだから相当がめついぞby前世)


 これ以上ここに居ると精神が保たないので現金袋をストレージに仕舞うと一目散に外へと駆け出しました。


「またね。ロトルルちゃん」


 ねっとりとこびりつく様な声を無視して私はアルリナの待つ宿屋へと逃げ帰るのでした。

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