透明な蜥蜴
ある猟師が、村の西側の深い深い森の中で、一匹の透明な蜥蜴を見つけたそうな。
猟師はそれに驚いて、じっと眺めてみるけれども、やっぱりそれは透明で、これは何か珍しい蜥蜴に違いないと、猟師は村に持ち帰ることにしたという。
ところがこの蜥蜴が動かないものだから、一体生きておるやら死んでおるやら、猟師は蜥蜴に触るまで分からなんだそうだ。
脈のあるので、蜥蜴が生きておるようだと確信した猟師は、これを村まで持って帰った。
村の人々は、猟師の持ち帰った蜥蜴に仰天して、次々に騒ぎ立てたというから、やっぱりそれは珍しい蜥蜴に違いなかったと、猟師は誇らしげになっておったそうな。
その騒ぎを聞きつけて、村の司祭がやってきたのだけれども、この司祭にも、その蜥蜴を見たことはなかったらしい。
司祭はこの蜥蜴を祭壇の上に載せて、蜥蜴が良いものなのか悪いものなのか、占ってみることにしたそうだよ。
占いの用意をして、さて神様に訊いてみようと、村のみんなで祈りを捧げているうちに、蜥蜴は消えてしまったそうな。
村のみんなは大層驚いて、司祭に占いの結果を尋ねたという。
すると司祭は、蜥蜴が精霊になりかかっておって、身体の透けていたのは、このためだったのだと言うたそうな。
占いの儀式で、あの蜥蜴は神様に一番近いところにおったから、神様が蜥蜴の徳の高いのに感心して、精霊になるのを手助けしたのだとも言うたそうな。
村のみんなは大層この蜥蜴をありがたがって、祭壇に描いたというから、今もその祭壇には、蜥蜴の姿が刻まれておるそうだよ。