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俺はロリコンどMかもしれん

 ワイバーンに村が襲われていたとしたら廃墟になっているはずだ。

 おかしいなと思ったら、先の冒険者パーティー二人も生存していた。

 どうやらワイバーンと言うのは誤報で、襲ってきたのはドラゴンもどきのドレイクだったようだ。

 とはいえ、冒険者たちも無傷で追い返せたわけではなく、傷だらけとなって療養していた。村人もいつ次に襲ってくるか恐れていたようだ。


「今日は休んで次の日から探索に出よう」


 久々に歩き続けたせいで身体がふらふらする。疲労が溜まっているようだ。


「ね、ちゅうしよー?」


 メメが急に誘ってきた。しょうがないなあ。俺は唇を尖らせてメメに顔を近づけた。べちーん。叩かれた。


「熱中症?」


 ああ。太陽の怒りに晒されると人の身体では持たないという。俺がふらついていたのはこれか。

 メメに肩を借りて、村の空き家へ運んでもらった。


「頭いたくない? マナ酔いと同じ症状でしょ? 太陽のマナを受けすぎたのよ」

「なるほどな……。先に休ませてもらうよ」


 藁のベッドはメメの魔法で蒸し焼きにされ、虫は除去された。これで安心。

 俺はそこへ横たわり、頭に水を絞ったスカーフを乗せられた。


「ヨウコは膝枕ね」

「わかったのじゃ」


 枕代わりにヨウコの太ももに頭を乗せた。むちんとしている。ふむ。これはいい枕だ。

 さらにメメとシエラが俺の身体に乗ってきた。暑い。


「溜まってるから吸い出すよ」

「あい」


 メメとシエラは手を伸ばして、俺の首を撫で始めた。


「固くなってる♥」


 首の筋をメメの細い指がつーっと撫でて、俺はくすぐったさにびくんと身体が反応してしまう。


「マッサージしなきゃ」

「あっあっ」


 メメとシエラが俺の首に掌を当てると、メメに付けられた火傷痕が光り輝き出した。


「火傷痕すごく大きくなってるよ」

「あちゅーい」


 太陽神の怒りに当てられて、俺の体内マナが増加し、火傷痕――俺の身体におけるマナ循環器官が膨れ上がっているといった感じだ。


「待って。そこ敏感になってる! いたたたっ!」

「えいえい」

「ごしごし」

「あぐぅ!」


 首筋の火傷痕を強く握られて、俺の身体はどんどん熱くなっていく!

 俺は両手をヨウコに掴まれた。


「今じゃ! ほら吐き出せ!」

「はぐぅ!」


 光り輝くマナがぼわんと顔の前に浮かび上がった。

 なにこれ怖い。


「爆発するぞい!」

「封じ込めるよ!」

「んんー」


 俺はぽいとベッドから捨てられて、三人は光を放って膨らむマナの球体を両手で包み込んだ。

 そしてボフンとしけた火薬のような音を立て、マナは霧散した。


「ふぅ、これで安心じゃ」

「まったく、ザコお兄さんは許容量少ないんだから気をつけて」

「面目ない」


 どうやら俺はまだマナに慣れていないようだ。

 太陽神のマナが俺の身体を焼き尽くそうとしていたらしい。慣れてる冒険者はこんなの平気なようだが。

 そして俺はベッドに安静にしなさいと、ぽいと寝かされた。



 そしてメメと出会った時の夢を見た。

 そしてこれは夢だとすぐに気づいたのは、俺のいる場所が初めてメメと森に入った時の、打ちのめされた時の、沢のほとりだったからだ。

 メメは地面に転がった俺にまたがって座り、俺の首に噛みつき、俺は絶命したのだ。


 夢の中で死に、現実で目が覚めると俺の身体はぐっちょりしていた。暑い。

 右腕にメメ、左腕にヨウコ、身体の上でシエラが寝ていた。汗だくだ。

 特にズボンの部分がべっちょりしていた。


「おちっこ」

「おトイレなら家の隅の壺に……ってもしかして!?」

「もうでたー」

「もうでたじゃないよ!?」


 俺はシエラをどかして跳ね起きた。

 そして俺は朝から泣きながらズボンを洗うことになった。


「ザコお兄さん。もしかして……」


 いや、違うからな!?


「俺のじゃねえよ、まったく」

「ごめんなさい」

「小さい子のしたことじゃ。謝ってるのだからそうカリカリするな」


 わかってるけど。

 でもズボンびしゃびしゃのまま出かけることになるのか。


「すぐに乾くでしょ」

「やれやれ……」


 パンツ一丁でざぶざぶしていると、シエラが突然「飴玉ー」と魔導銃を取り出して弾込めし、空へ構えた。


「ドレイクだ!」


 先の冒険者パーティーが叫ぶ。

 ちょっとまって。いまパン一なんだけど。

 朝日に照らされ空飛ぶトカゲが姿を現した。ドラゴンもどきと言われる小龍(ドレイク)とはいえ、そのサイズは鳥とは比較にならない。村の上空を旋回し、口を広げて滑空してきた!


「ばあん」


 シエラの飴玉がドレイクの翼に当たり、星型に穴を空けた。バランスを崩したドレイクは錐揉み回転しながら落下。ギリギリで体勢を整えて、地面に降り立った。


『ギュルルルルッ』


 怒りと警戒をあらわにして、ドレイクは人間に威嚇する。村人たちを避難させて、俺たち四人と冒険者二人はドレイクを囲んだ。


「なんでパンツなんだ!?」

「気にするな!」


 冒険者の一人は盾持ちで、一人は大剣使いだ。盾持ちがドレイクに体当たりをし、大剣使いが剣を尻尾に振り下ろす。だがぺちんと尻尾で弾かれた。

 俺たちも攻撃にかかる。

 メメは正面から行き、爪をかいくぐり、ドレイクの顔面を蹴り飛ばした。

 首を振られたドレイクは、ヨウコに向かって口から火球を飛ばした。ヨウコは扇を広げて仰ぐと、火球は勢いを止め、舞うヨウコの周りを回り始めた。


「ふん。たわいないのう」


 火球が龍の口と姿を成し、ドレイクに食らいつき、翼の根本を焼いた。


「ばあん」


 シエラの飴玉がドレイクの爪を弾く。俺はドレイクの首元に入り込み、新品のバスタードソードを振るった。

 マナを集めて固める。

 手に集中させたマナを剣に通す。剣の持つマナに呼応し、刀身は光を放った。

 切っ先がするりとドレイクの首元を通る。青い血が遅れて噴き出した。

 ドレイクは暴れだすが、メメが目玉に針を突き刺し、そのまま腕を突っ込み、針はドレイクの脳に達した。

 そして糸が切れるようにドレイクは地に倒れ伏せた。

 青い血まみれとなり、嗜虐しぎゃくに笑うメメを見て、俺はなぜか性的に興奮していた。

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