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俺はワイバーンの調査を頼まれた

 動物はメスの尻に興奮する。

 人は二足歩行ゆえにお尻の強調が減り、胸でその役目を補った。これが人がおっぱいに執着する理由である。

 だがおっぱいはお尻の代用などではない。おっぱいは子に乳を与えるもの。すなわち命を繋ぐもの。

 神が人に命を与えたように、母も子に命を与える。それがおっぱい。

 おっぱいは信仰足りうる。

 おっぱい……。


 その時、街に地震が起きた。


「うお! おぉおおお!?」

「外へ避難するぞ!」

「なんじゃあ? この程度の地震で慌ておって。金玉付いてるのかの」


 平気な顔でお茶をずずずと飲むヨウコの尻尾を掴んで、俺たちは外へ飛び出した。

 幸い街に大きな被害はなく、古くからの石造りの建物が二件、貧民街の家屋の一部が崩壊、それと火事が二箇所起きたくらいで済んだ。

 街の復興支援で賛美されたのはジス教だ。街の広場に避難した者たちに聖女様は奇跡を行使し、軽い火傷や怪我を癒した。


 メメやシエラは街の外にいたため混乱に巻き込まれることなく済んだ。俺とヨウコは街の西に向かい、メメ達と合流。そしてギルドへと向かった。

 ギルドでは早速街の復興支援の依頼が発注された。木材や石材の荷運びの手伝い。街の外壁や道の補修。外での仕事となるので冒険者は完全に裏方であるが、俺達は街の外にいることに意味がある。災害時でもモンスターは街を襲ってくるからだ。

 地震から三日後。街が落ち着きを取り戻した頃に、冒険者ギルドに傷だらけ(街に帰還できた事から見た目ほど酷い怪我ではないだろう)の男がふらふらと訪れた。

 彼は北東の農村の守衛に出ていた鉛タグのパーティーの一人であった。彼は身体を支えられながら受付に告げた。「飛竜(ワイバーン)が襲ってきた」と……。


「調査をお願いします」


 そして繰り出されたのは俺達だ。討伐ではなく調査なのが幸いだが、それも当然だろう。飛竜となったら地面に落とし括り付けるバリスタが必要だ。

 翌日、俺たち四人は北東の村へ向けて出発した。


「暑いのじゃあ……」

「がんばれっがんばれっ」


 ヨウコはこの数日で力をかなり取り戻した。エルフの秘薬をぺろぺろさせた。そしてポニーに変化してメメとシエラを背中に乗せた。だが馬は暑いのが苦手だ。ポニーになって汗だくのヨウコは道中不満を漏らし続ける。


「狐使いが悪いのじゃあ……。せめて乗るのはシエラ殿の一人にして欲しいのじゃあ。メメ殿は重いのじゃ……」


 メメのかかと蹴りがヨウコの尻に刺さる。


「ひぎい!」

「ほら、サボらずちゃんと歩いて」

「お馬さんぱっかぱっか」


 そして俺は徒歩なのだが、北への道はちゃんと舗装されているわけではないので歩きにくい。さらについにへたばったヨウコポニーの代わりに俺の背中に乗ってきた。暑い。


「なあ。メメはワイバーンに勝てるか?」

「うーん。そもそも飛んでたら攻撃が届かなくない?」

「そりゃそうか」


 命からがら逃げ帰った男は、パーティーから一人伝令で送り出されたらしい。すると他のメンバーは……まあ絶望的だろうが、そうなるとこちらの手が届く所まで下りてくる可能性はあるということだ。そうしたら勝つ目はあるだろうか。炎吐かれながら降下されたら丸焦げになりそうだが。


 途中の村でその日は泊まり、次の日は太陽が昇る前に出発した。


「むにゃむにゃむ……」


 俺は荷物を背負い、寝ぼけたままのシエラを肩に乗せた。

 ヨウコは「変化し続けるのは疲れるのじゃ」と狐耳っ娘の姿でとてとて歩く。

 途中でヨウコは「わちはこの道を通ってきたのじゃ」と言っていた。北の国境沿いから商隊の馬車に乗ってきたらしく、生まれはもっと東の方らしい。


「わちは絹の商売でやってきたのじゃがの。色々あって逃げてきたのじゃ」

「ふぅん。じゃあ旅には慣れてるのか」

「とはいってもわちはのんびり荷馬車に乗っていたのじゃがの。こんな自分の足で歩くのは下男だけじゃ。主のようなの」

「俺は下男じゃねえぞ」


 雑用係なのは間違いじゃないけど。

 おかしいな。そもそも俺は雑用係を止めたくてリチャルドのパーティーを止めたのに、いつの間にか俺は少女たちの召使いみたいになっているぞ。

 俺はじろりと隣を歩くメメを睨んだ。


「疲れたの? 飴あげるー♥」


 メメは口の中の飴を手に取り出して、俺の口の中に入れた。

 うむ! 美少女の味がする! 元気でた!

 いやそうじゃなくて、荷物の一つでも持ってほしいのだが。そう文句をつけると「モンスターに襲われた時、すぐに私が対処できる方がいいでしょ?」と言われて納得しかけた。

 しかけたけど、メメさんの探知範囲なら奇襲される前に気づきますよね? そもそも平野なんだから気づきますよね?

 結局言いくるめられて俺の右腕を取られた。暑い。

 それを見たヨウコも「んむ? ここはわちもサービスしちゃるかの」と左腕を取ってきた。暑い。

 まだ陽も昇っていないのに暑い。

 両手に美少女、肩に美幼女。両手に蕾でロリコンにはたまらない状況だね! ガッデム! なんで大人の女性が俺の周りにはいないんだ!


「結局ヨウコもちんちくりんのままだし……」

「何を言うか! ちょっと伸びたじゃろ!」


 俺がマナを吸い取ったせいでちっこくなってしまったらしいヨウコは、ちまちま回復してちまちま成長した。今はメメより少し小さいくらいだ。肘を乗せるのにちょうどいいくらいの高さである。


「メメの大人バージョンが恋しい……」

「少女姿でも愛くるしいでしょ♥」

「自分で言うな」


 ほぼ裸みたいな格好の癖に、この強い日差しの下でも肌白いままなんだよな。どうなってるんだ。


「メメ殿も変化できるのかの?」

「ぐっと気合入れると大きくなるの」

「あーわかるのじゃ」


 わかるのかよ。


「魔素をどくんどくん身体に回して押し止めるんじゃよな」

「そうそう。勃起みたいな感じー♥」


 勃起言うな変態メスガキが。

 しかもちゃんとイメージしやすいのが腹が立つ。もうだめだ。勃起形態とか思ってしまってダメだ。


「ザコお兄さんはやっちゃダメだよ。多分死ぬよ」

「死ぬんかい。やらねえよ」

「なんじゃ? 主はマナの扱いが苦手なのかの?」

「この人まだマナ操作童貞を捨てたばかりなの」


 童貞言うな。これでもちゃんと操作できるようになって、とりあえずなんでもかんでも掌からマナ吸収するのは抑えられるようになった。

 というのもこれも俺の中のマナが過剰で暴走状態だったからのようだ。言うならばシエラのマナ欠乏症の逆。俺の身体の中のマナの流れはまだ目覚めたばかりで、細い水路のようなものらしい。そこへどばっと大雨が降ると当然氾濫を起こす。かといって、がんがん使えば減らせるというものでもないらしく、アリエッタ先生曰く「マナの状態は自然にしておけば安定を目指す」とおっしゃった。つまり何もするなということだ。そういえばマナポーションも「マナを増やすんじゃなくて安定化の薬」と言っていたな。エルフの秘薬はそれに加えて「浄化」の効果もあると言っていたが、アリエッタ先生の話しは難しい。だからきっとあんなちんちくりんなんだ。


 そんなこんなで二日の徒歩の旅で目的の村が見えてきた。

 あれ? 村が見えてきた? おかしいな?

 俺たちは村人に歓迎された。

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