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21.野望



 5歳のあの日、エデル王子と婚約してから王都に入り浸るように王妃になる為の勉強をし始め、私は領地だけでなく王国の事、そして近隣諸国の事を知りましたの。


 ゲームの世界では、王国の詳しい事も、領地の事も…ましてや、近隣諸国の話など一切登場しませんでした。

 学園内での恋愛ゲームであり、王国を舞台にしたゲームではなかったので、詳しい設定も何も出ず、学園内で始まり、学園内で終結する…狭い世界でのお話。


 けれど、リリアーナ()が生きるこの世界は、ゲームではなく、現実で、学園内で終結する様な物ではないわ。

 アイスフェルト領しかり、ハワード王が治めるルワード国しかり、勿論近隣諸国や、海を越えた先にも国はある。

 そんな世界の事を知り、私は何が出来るのでしょう?どうすれば、領地だけでなく国を、世界をもっと幸せに出来るのか…、その事ばかり考えていました。


 私が、この世界に呼ばれ?生まれ変わり、リリアーナ・アイスフェルトとして生きる事に意味があるのかもしれない…。

 ならば、私はリリアーナ()は何が出来るのか…。


 勿論、生前大好きだったゲームの世界に生まれ変わり、生で廃課金を繰り返しする程焦がれたスチルを拝める…それもとても魅力的で、最初はそればかり考えてましたけど…。


 今、私は公爵令嬢で、時期王妃…。勿論、ゲームのシナリオ抑制力等があれば落ちぶれるかも知れない地位ではあるが…実際、今はその権力も立場も全力で活かす事も、殺す事も出来る状態で…、知識も得ようと思えば幾らでも得られる立場…。

 ならば、学園に入学する前に、総ての基本知識を得る。

 そして、入学後は、貴族の子供達の矯正を中心とした活動をするのは、後々私自身の力に、そして、この国の力になりはしないだろうか…?私なら、今は虐げられている地位に居る人達の力になれるのではないか?前世の知識や、現世での私の立場は力になるのではないか…?


 そう思ったら最後…。ゲームでは廃課金を繰り返し、仕事では連日の残業を楽しんで…?こなしてた私なら…出来る気がしてしまったのだ。

 そこからは、ひたすら勉強勉強勉強勉強の日々。王妃になる為の知識だとしても、王国の歴史や、近隣諸国の知識、そして国内の貴族達の情報は本当に役に立つ予定ですの。

 そう、私の計画の為に。


 エデル王子の矯正は、今でこそ学園長に一任してはいるが、元々は私が行う予定でしたし。

 学園内にある、貴族の縮小図も、私が全力でひっくり返す予定ですの。

 そう、総ては最後の最後…、ゲームでのエンディングの先にある未来の為に。

 その未来に、私が居なくても構わない。皆が…そう、この国…いえ、世界中の子供達が笑顔で過ごせるならば。


 その為に、私はアプリゲームでは回避し続けたエンディング…卒業迄にやらなければ成らない事が複数ある…。



 やらなければならない事の一つ、()()()、補習授業である。









「ケイン生徒会長、お願いがございますの。」


 私は、ここの所連日の様に生徒会室に入り浸り、ケイン生徒会長と、補習授業の前準備の相談をしていた。

 

「俺に?何?」


 私は、ハイム侯爵家が気になっていましたの。今、この国では他国間交流はほぼ皆無。その中で、多数の近隣諸国との交流を頻回に行っている…そして、交流を行う中で、貿易にも手を広げ始めている…そんな、ハイム侯爵家は、アイスフェルト公爵家としても、私の夢の為にも是非とも仲良くしたい貴族であり、今後も国の為にも邁進して頂きたいと…そう思ってますのよ?


「この補習授業、貴族の補習は勿論ですが、自由参加も認めて頂けませんか?」


 私は、ケイン生徒会長に出来るだけ好印象を持ってもらう為、ニコニコと愛想良く聞いてみる。


「それは何故だい?」


 自分は、エデル王子入学と同時に学園一のイケメンではなくなったと言っていたが、エデル王子とはまた違った系統の、ややホストチックなお顔で微笑みながらも、私の意図を逃さず汲み取ろうとする瞳が私を見ている。


「今期、私の学年は特別クラスを設け、庶民の学生も多く居ますわ。もしかしたら、今回の補習授業で友達や兄弟とか…知り合いが来るかもしれません。なら、自分達でこんな事をしてるよ!とか、こんな事を勉強すれば学園に入れるかもしれないよと、直接教えてあげる事が出来るかもしれませんわ!それって、とても素晴らしくないですか?」


 私は、話してる間にワクワクしてしまい、思わず立ち上がって興奮した様子で話してしまう…。うぅ…だって、笑顔が生まれるかもしれないと思うと、それだけで幸せスチルの完成ですわ!

 興奮してしまうのも仕方ありませんわよね…。


「成績優秀者同行も素晴らしいですけど…自主的に行いたいと思える様な、そんな補習授業にしたいんです。そうですね…、それこそ毎月有志で勉強会を開催する…そんな風に出来ないかと、私は思うんです。」

 

 私は、ワクワクしているの…。もしかしたら、アイスフェルト領だけでなく、王都でも定期的に勉強会が出来る様に出来るのではないかと。

 その、地盤作りを今してるのだ!と、いう実感が湧いてきて熱く語ってしまった…。


 熱く語ってしまった!と、思ったら恥ずかしくなって来ましたわ…顔が熱い…。確認しなくても、私の顔は真っ赤になっているわね…恥ずかしいわ…。


「う〜ん、それ採用!いいね!そうだよね。この学園には庶民の子達も居るんだから、積極的に参加する子も居るよね。なら、自由参加枠も設けてやってみようか。そうだな…、いきなり補習授業です!って、やるよりかは、自由参加者で勉強会の基盤を作ってからのが受け入れやすいよね。お互いにさ。」


 おぉ!ケイン生徒会長は、私の真っ赤になった顔には触れず、私の提案を拡げてくれたわ。やはり、生徒会長ね。出来るわね…。


「では!」

「うん、とりあえず自由参加者集めて、週末にでも1回やってみようか。やってみる事で改善点とか見えるかもしれないしね。」


 うふふ、やったわ!やりましたわ!私の夢の第一歩が踏み出せそうですわ!


 私は、ケイン生徒会長にお礼を言い、自由参加者を募るため、更に細かく話を詰めていった。


 その様子を、憎しみに満ちた目で見てる人物がいる事も知らずに……。



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