17.相談
部屋に戻り、制服から普段着へ着替えようとマリーを呼ぶと、マリーと…何故かエデル王子とカリムがついて来た。
「ここ女子寮よね?」
「いや、違う。ここは、歴代の王族が使用した部屋で、女子寮と男子寮の上の階に繋げる様に作ってある一番広い部屋だ。部屋数も繋げてあるから、未来の花嫁と、護衛、侍女を此処に呼ぶのは普通だな。」
エデル王子が、早口で言い訳?を言ってくる。
要するに、男女関係なく過ごせる唯一の部屋で、私が一人になりたければ、自室に篭り、繋げてある部屋扉全てに鍵をかけ…って事?
えっと…、聞いてないわね。
「入学案内には記載は無かったわね?入寮案内にも記載は無かったわね?そして、マリー…貴女は聞いていて?」
「いえ、寮についてから、この部屋に荷物を…と、言われ移動しました。貴族が通う学園の寮との事で、緊急時の為にこの様な繋げてある部屋が各々充てがわれてると…。」
韋駄天…、サクッと瞬時に回答ね。
やはり、マリーも知らず…ね。ならば…お仕置きは必須。
「エデル王子…、私最初に言いましたわよね?強引な態度、私に無理強い…嫌だと!もう結構…。マリー、私は管理棟へ向かいます。手配してくださいませ。」
「り、リリアーナ…?」
「…それと、エデル王子。近日中に、婚約破棄の通知が届くと思いますので。短い間でしたがお世話になりました。さぁ、マリー行きますわよ。」
信じられないといった表情をするエデル王子と、頭を抱えるカリム。私は、言い訳も何も聞きたくなくて、マリーを連れ立って部屋を出る。
「あぁ、カリム。その部屋にあります私の荷物は、再度まとめといて下さいませ。此度は、貴方の言い分も何も聞きたくありません。良いですね?」
「いや、リリアーナちゃん…」
「失礼。」
私は、カリムの回答を待たず管理棟へと向かった。其処には、学園長と担任がいた。本来ならば、管理棟には各寮の寮母がおり、主人公にアドバイス等をくれるのだが…いや、それはゲーム知識だわ。
でも、何故管理棟に学園長と担任が?
「…此処に真っ先に来るのはエデル王子だと思ったんだがのう?」
「学園長…王族が必ず真っ先に無理難題を言ってくるから!って、管理棟に僕と居たんですよね…!?来たのアイスフェルト公爵令嬢じゃないですかっ!?王族じゃないですよ!!」
おっと?影が薄いな…と、思っていた担任だが、かなり言う方ね。学園長…自身の上司に食ってかかってるし、何より、貴方のクラスの生徒である私を家名で呼ぶなんて…この学園の先生なのよね?
「だって〜、今まではそうじゃったんじゃもん!」
この学園長もキャラ濃いなぁ…この学園キャラ濃いの揃ってるな…なんて、思わず素で思ってしまう位には学園長のキャラは濃い。
「学園長、…先生、ご相談がありますの。」
「何?何じゃ?わしは美人の笑顔にはとことん甘いから、笑ってお願いしてくれるなら学園内の事なら話はきくぞ〜」
え、笑顔?それ位なら容易いわね。
私は、笑顔で学園長に相談を持ち掛けた。勿論、部屋割りのことだ。
「と、言う事で、私は今の部屋が嫌ですの。他に空いてる部屋がありましたら其処へ、無ければ来期まで自宅からの通学をお許し頂けませんでしょうか?」
私が、話終わると、頭を抱えた学園長と担任が互いに目配せをしていた。
重い沈黙の後、先に口を開いたのは学園長だった。
「それは済まない事をした。すぐに新しい部屋の手配をしよう。それと、そんな部屋を残していた事を謝ざ…」
「それは結構です。学園長は何も悪くありません。歴代の王族が無理難題を言ってきた結果でしょうし…。言うなれば、学園長もこの学園も被害者ですわ。私は、学園に対して怒ってはおりませんもの。」
優しく微笑む。
それに、他の部屋を直ぐに手配してもらえるなら万々歳だ。
「学園長、先生、本日は沢山御迷惑をお掛けしたと思います、私の方が謝罪しなければ…ですわ。私は、新しい部屋さえ頂ければなんの問題もありません。宜しくお願い致します。あと、もう一つお願いがあるのですが…………」
私が謝罪し、お願いをすれば、学園長も先生も即座に対応してくれた。やはり、いい先生達だわ。
「新しい部屋は、サクラさんの隣だね。荷物沢山あるなら、僕も手伝うよ?」
担任が手伝ってくれるらしい。ならば、是非とも手伝ってもらおう。
「其処まで荷物は多く無いんですが、早めに食堂へ行きたいので…お願いしても宜しいでしょうか?」
「勿論だよ。じゃぁ、さっさと移動して、僕は帰るよ。」
ありがとうございます。と、お礼を言い、カリムがまとめたであろう荷物を、部屋の真ん中で四つん這いになり絶望しているエデル王子を無視して移動した。
うん。絶望したエデル王子最高っ…!!控えめに言って最高っ…!!けど、許しませんけど。
◇
荷物を、私とマリーと担任3人で2往復して移動した後、私は簡素なドレスに着替え食堂へ向かう。
初日ということもあり、夕食は寮生全て揃って取るとの事だったからだ。
食堂へつくと、其処には鬼の様な形相のヴィオラがいた。
まるで、ゲームイベントの様だ。スチルが見える…1枚に切り取れるような表情だった。
「アイスフェルト公爵令嬢?貴女、勝手に部屋を変えたそうですわね?」
「あぁ、ヴィオラ様のお耳にも入りましたのね。えぇ、変えましたわ。勿論、学園長の許可はえています。」
私は、優しく微笑みかけたつもりだった。
「…勝手に!!!公爵令嬢だからって、何でも思い通りになると行動してますの?許可を得ていようが勝手に部屋を変えるなんて…!!」
何故、部屋を変えただけで激昂してるのかしら?
「エデル王子と続き部屋なんて真っ平ごめんだからですわ。」
私は正直に答える。だって、まだ子供とはいえ男女ですのよ?それを続き部屋なんてあり得ませんわ。ふしだらですわ。
「貴女がエデル王子を語らないで!!」
次の瞬間、私は頭から葡萄ジュースを被っていた。あらあら、コレは主人公がリリアーナに受けるイベントの一つですわね。
何やら、ゲームとは流れは違うが、かなり面白くなって来ましたわね。ふふふ…ヴィオラ・クローズ伯爵令嬢…貴女の悪役令嬢っぷりを楽しませて頂きますわ!
そう、本作での正真正銘悪役令嬢メインの私が、貴女の力量を然と確かめますわ!!!
私は、実に面白い展開に、ニヤリと不敵に微笑んだのだった。




