15.寮長?
入学式、クラス分け、校内案内と無事?に終わり、私達は寮へ移動した。ここでは、寮の説明を受けるのだと思う。流れ的にね!
今期入学の1年生全員がホールに集められ、自身の部屋割を聞く。とはいえ、入学案内に部屋番号の記載はあったので、自分の部屋の両隣を知る意味もあるのだろう。
現実がゲーム風味になるならば…女子寮は、ヴィオラ伯爵令嬢が男子寮は、フォーク子爵令息が寮長のはず。さぁ、ゲーム知識よ役に立つのかしら?
「先ずは、入学おめでとう御座います。私は女子寮の寮長で生徒会副会長でもありますヴィオラ・クローズです。これから卒業迄の間、皆さんはこの寮で生活をしていきます。また、寮の雑用は慣例として庶民が行うことになります。先輩方に聞いて、明日から行うように。」
ほぅ…、副会長はヴィオラ・クローズ伯爵令嬢ここまではゲーム通りね…。
ゲームでは、年は離れてはいるが庶民嫌いの貴族で、寮での陰湿な虐めに率先して動いてた令嬢。
そして、リリアーナ達が2年生になる迄寮長を務める…。その期間、陰湿な嫌がらせの数々で、中々ストーリーが進まずヤキモキしたものだ。
まぁ、所詮この現実には反映されてないだろう部分ですけど。と、思っていましたのに…庶民嫌いっぽいですわね。
「さて、次は俺かな?新入生諸君、入学おめでとう。ヴィオラと同じく生徒会も兼任している男子寮寮長ケイン・ハイムだ。昨日までは、顔の良さと性格の良さでは学園一と自負してた。素敵な優しいお兄さんです。告白と相談事は随時募集中なので、気軽に声をかけてくれ。」
…ほらね。ゲーム通りにはならない。
ハイム侯爵令息。ゲームには登場はしなかったが、現実では中々のやり手な貴族の令息。人脈は力と云った考え方の貴族で、積極的に茶会や夜会を企画運営し、まだこの国には浸透していない他国間交流も盛んにしている…そう、私の中で参考にしている家だ。
ふむ、ゲーム要素の残る人選がくるかも…?と思えば、やっぱりそんな事もないこの現実。
肩肘張ると、肩透かし食らって疲れるだけなのは確定。
「寮長、発言をしても?」
私は、声を上げる。そう、権力振りかざし系悪役令嬢の為に!
「アイスフェルト公爵令嬢発言を許します。」
ヴィオラに許可をもらう。って、家名で呼ぶってどうなの?何か…何か…好きじゃないわ。
「ご許可ありがとうございます。リリアーナ・アイスフェルトですわ。此処で提案なのですが、寮長補佐として初等部女子寮でのまとめ役に私が、男子寮での初等部まとめ役をエデル・ハワードが担いたいのですが如何でしょうか。私達は、ご存知の通り将来的に国を背負います。それに先駆け、皆様のお役に立ちたいのです。雑用から率先して行う所存ですわ。むしろ、雑用係にして下さいませ。」
それっぽい事を言ってジャブを打つ!
そして、周りの反応を伺う。こんな展開はゲームでは無かった。裏番長の様なリリアーナの描写はあったが、現実では違う。私は皆の手足となる雑用係を率先して立候補したのだ。
「そ、そんな雑用等アイスフェルト公爵令嬢にましてや、第一王子にさせられる訳がないでしょ!!私達はこの歴史ある学園の生徒なのですよ!?」
ほぅ…、自己紹介までした私の事をまだ家名で呼ぶのね。ほぅ…ほぅ…ほう…?
「あら?上に立つ者が雑用や細々とした庶務を知らずして、立派な大人になれますでしょうか?ましてや、近い将来、私とエデル王子は国民の未来を背負うのです。だからこそ、幼き頃より雑務から学ぶ必要があると思いますの。どの様な事が人々の国民の生活に必要な事なのか、そして、どの様にリーダーシップを取るべきなのかを。」
ヴィオラは苦々しい顔をして私を睨む。うんうん、私も貴女嫌いだから敵意はバシバシ受け入れますわ。
「私からも頼む。リリアーナと入学前に決めていた事なんだ。私達が率先して動き、周りも相談しやすい環境作りをする事が、将来的にこの国を良くする為に必要な事だと思うからな。」
エデル王子が隣からフォローをしてくる。
あら?エデル王子もヴィオラの敵意感じまして?うふふ、面白くなって来ましたわね?
「ですが、今迄低学年の…しかも1年生が寮長補佐の様な事をした事はありません。ましてや王族を従えて…なんて…ありえませんわ!!!」
ヴィオラが真っ赤な顔をして私を睨む。最後は悲鳴にも似た叫びでしたわね。
「クローズ伯爵令嬢…いえ、ヴィオラ寮長、私はいえ、私達は今迄の慣習を壊しに来ましたの。この学園だけでなく…そう…この国の。ですので、寮長が拒否してもこの話は進めさせて頂きますね。そう…学園長に提案し、許可を得ますわ。」
「うむ。私達が国を背負うのは早まる事があっても遅くなる事はほぼ無いだろうしな。幼き頃から学ばなければ間に合わない。」
エデル王子、私が喧嘩を売ってますのに横入りは駄目ですわ。
「わ、私は賛成です!!リリアーナ様ならきっと良くしてくれます!」
突然背後から、サクラの声が聞こえた。緊張しているのだろう、声が震えている。
「…今期の庶民代表ですね。流石庶民…家柄が下のものが上の者に気軽に話しかけるものじゃありません。」
ヴィオラがサクラを睨む。
はぁ…どっちが悪役令嬢なのかしら?ヴィオラはゲーム通り家柄で人を判断する小物なのね…。
「で、ですが…この学園は…」
ほら、サクラが泣きそうじゃない…。はぁ…小物相手は疲れますわね。
「ヴィオラ寮長、いえ、クローズ伯爵令嬢?この学園の掲げている理念をご存知ありませんの?この学園では貴賤なし。そして、この学園は国立ですわ。この意味が分かりまして?」
私は、とっても上から目線でヴィオラ・クローズ伯爵令嬢を見下した態度を取る。土俵入りしてやるわ。そして黙らせましょう。
なにせ、ヴィオラ・クローズ伯爵令嬢は、私の嫌いな貴族らしい貴族な態度なんですもの。いい加減そんなのの相手はしたくありませんの。この学園の悪役令嬢は私であり、貴女ではありませんのよ。
さぁ、幕引きのお時間ですわよ…?




