14.悪役令嬢
席を教えてもらい、担任に騒がしくした事を謝罪し、学園のカリキュラムや教科書の説明を受ける。
流石に、その間はエデル王子もカリムも静かに聞いていたが、隣からサクラの熱視線を感じていた。
これは完全に私の事を知っていて、疑ってる視線ね。ゲーム内の私を知ってて、あまりにも違う私に怒ってるのかしら?だから真っ赤になって見てくるのね…。
そうよね、私が陰湿な事をして、主人公を追い詰めて行く事で、エデル王子だけでなく、様々なキャラクターを攻略して行くんだものね。
そりゃ、私が陰湿系悪役令嬢じゃなきゃ物語は進まないわよね…。申し訳ないわ…。
「…と、言う事で、このクラスは特に優秀な成績な者や、家柄が優れてる者を集めた特別クラスです。ですので、この学園の模範となる様、特に気を引き締め、この学園だけでなく国内に特別クラスの素晴らしさや功績を広められるよう精進して欲しいです。……僕からは以上です。」
あら?先生のお話が終わりましたわね。
しかし、特別クラスね…コレもゲームとは違うわ。
「先生、発言宜しいでしょうか?」
隣の隣から声が上がる。エデル王子だわ。
「…はい、エデル王子どうぞ。」
ひょろりとした野暮ったい担任に許可をもらい、エデル王子が席を立ち発言をする。
「先生ありがとうございます。え〜、皆様同じクラスになれた事嬉しく思う。それに伴い、私からお願いがある。先程の入学式でも伝えたが、私はこの学園の理念がとても好きです。この学園内での貴賤なし…、これを是非とも私も大切にしたい。故に、せめてクラスの皆だけでも家柄等には捕らわれず、仲良くなれたらと思っている。」
エデル王子の力強いお願いが続く。
「そして、皆も先程体験したから分かると思うが、私の婚約者であるリリアーナは、とんでもなく天然です。しかも美女だ…。皆がリリアーナの魅力にときめくかもしれないが、私の最愛の婚約者なので、手出しは駄目です。宜しくお願いします。」
は?
「だが、リリアーナはとても努力家で、しかもとても優秀だ。皆もリリアーナを見習って、努力家になろう!幸いこのクラスは優秀な人しか居ない。是非とも、努力家なリリアーナの手助けをしてもらえたらと思う。私からは以上です。」
「先生!私も宜しいでしょうか?」
私は、エデル王子のとんでもない発言に驚いた。いえ、怒りすら感じますわ。何で私がエデル王子にお願いされた人達に助けて頂かなければならないの?
「……どうぞ。」
担任の弱々しい「どうぞ」を頂き、席を立ち教壇へ向かう。驚いた担任を尻目に、教壇でカーテシーを行う。より優雅に見えるよう意識し、より優位に立てるよう意識する。
「皆様、エデル王子に紹介して頂きました、リリアーナ・アイスフェルトです。これから一年、皆様と共に学べる事を嬉しく思いますわ。また、私はこの学園内だけでなく、王国をより良く出来る様邁進する所存ですので、皆様の知恵を又は、力をお貸しいただけたら幸いですわ。私は、妥協は致しません。何事にも真摯に取り組みたく思いますの。ですから…」
周りを見渡す。私の、この態度が不遜と取られるかもしれないが…知ったこっちゃないわね。なんせ、私は悪役令嬢にならなきゃならないんですからね。
「精々、足手まといにならない様、切磋琢磨して下さいませ。」
笑顔で話を締め括る。うん、凄く高飛車で嫌な悪役令嬢を演出出来たわ!百点満点ね!
クラスの皆を見渡してみれば、怒りに震えるように、赤くなって私を睨んでますわね。うんうん、こんな女の癖に何をっ!?って、なるのは分かるわ〜。
「……リリアーナちゃん、かっけぇっす!!何なんすか?その人をヤル気にさせる手腕!!!」
カリムが机に足を置いて座ってた癖に…有り得ない格好してた癖に…なんなの!?
ヤル気って何?皆様は、私の百点満点な悪役令嬢に怒りで震えてますのよ?カリムは分かりませんのね…。
「カリム、座り方が美しくありません。椅子には正しく座りなさい。そして、担任に許可を得てから話しなさい。」
「…はい。すみませんでした。」
カリムを黙らせ、担任へ頭を下げる。担任も、私の挨拶が効いたのか、赤くなり怒りに震えてますわね。
ん〜!私、百点満点ね!
「皆様、良いですわね。ここが特別クラスと云うならば、その能力、余すことなく伸ばし、この学園を、この王国を…世界に注目して頂きましょう。そして、学園だけでなく、王国内だけは貴賤なしでお互いに切磋琢磨出来る様な環境を作りましょうね。私は、貴方達なら出来ると期待してますわよ。」
最後に、私はクラスメイトへ発破をかけ、ニヤリと笑うと席へ戻った。
うんうん。鉄は熱いうちに打てってね。エデル王子が努力努力と言った内容を打ち消せましたかしら?
努力じゃどうにもならないのよ。お互いに切磋琢磨し、刃を研がなければ良い人材は生まれないし作れないわ。
私の様な、生まれながらに勝組な立ち位置にいる様な人間に、こんなムカつくであろう事を言われ、皆はどう思ったでしょうね。
ふふ、私の権力振りかざし系悪役令嬢は上手く行きそうね。
「「「いやいや、リリアーナ(ちゃん・様)その笑顔は駄目でしょう!!!」」」
エデル王子、カリム、サクラ……五月蝿い…




