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13.5積雪



 ほんの少し前まで、私は幸せだった。


 そう、幸せだったのだ。

 

 貧乏でも、家族が居れば幸せだったー…。









 私は、ルワード王国の最北端にある、小さな小さな村で私は生まれた。

 赤髪で太陽の女神の様に美しく優しい母と、銀髪の身体が弱いが優しい父、そして2人を足して2で割った様なピンク色の髪をした私。


 優しい両親に優しい村の人達に囲まれ、私はスクスクと育った。


 村でも、ルワード王国でも滅多に居ないというピンク色の髪を持って生まれた私を、母はお花の様な髪色ねと愛でられ、父からはこの国には無い島国の花の色の様だと髪を撫でられる。


 そんな日々が宝物だったの。


 そんな毎日が崩れたのは、身体の弱い父が倒れ、そのまま帰らぬ人になった時からだった…。


 父を愛してた女神の様な母は、悲しみにくれ、父の後を追う様に父の書斎でその命を断った…………。


 


 村の人達は、そんな私を心配してくれた、沢山慰めてくれた…。



 けど、私の心は寒くて辛くて悲しかった。



 父は線が細く、元々身体も強くは無かった。

 だから、きっと私が大人になる前に死んでしまうと、父は私に寂しそうに言っていた。だから、少し悲しいけどいつか父は亡くなると覚悟はしていたの。


 だけど、あの太陽の様な母が私を置いて自死してしまうなんて…そんな事父が亡くなった時は思わなかった。


 父が亡くなっても、私と一緒に生きてくれると思ってたのに…。


 父が亡くなってから、母はその瞳に私を映さなくなった。

 日がな父の書斎で、父の遺した日記を手に、ただただ泣いていた。私の知る母はそこにはおらず、愛する者を亡くした女がそこには居た…。



 ーーーーワタシハ ココニイルヨ…



 だから、母が亡くなった日も、あぁ、やっぱり置いて逝かれた。そうとしか思わなかった。




「あ〜ぁ、私独りっきりになっちゃった。」



 私は、誰も居ない家で、呟いた言葉が刺さる。

 嗚呼、ワタシハ ヒトリダーーー…












 そんなヒトリが続いて1年程経った頃、ルワード王国王都にある学園の奨学生制度の話が村にもやって来た。

 

 来期、ルワード王国のエデル第一王子が入学するにあたり、沢山の優秀な子を学園で受入れる為、国中で特別試験を設けるとの事だった。


 その試験は、家柄の優劣はなく、ただ優秀であれば良いとの事で、その優秀さは勉学だけでなく、芸術面や技術面等、得意な分野で試験を受ける事が出来るとの事だった。


 また、試験を合格し、特別クラスに入る事が出来れば学費免除、全寮制の寮費免除、学園在籍中の学食費免除と、様々な面で優遇されるとの事だった。


 ならば、どうせ村に居ても親無し子として、村の負担にしかならないのだから、ダメ元で試験を受けてみても良いかもしれない。

 本の執筆をしていた父から、勉学の基礎や本の読み方を習って居たので、無理なく勉強が出来た事も幸いした。


 私は、村の人達の協力も経て、一番近くの試験会場まで連れて行ってもらい、試験を受ける事が出来た。試験の内容は、私からするとかなり簡単で、試験から数ヶ月後には合格通知と、庶民代表としての挨拶をする様にと封書が届いた。



「王国で一番の学園と言う割には、かなり簡単な試験だったわ。」


 

 私は入寮の為に、学園から頂いた制服と、小さな鞄だけを手にして、村の人達が王都に特産物を納品する際に、好意で馬車に乗せて行ってもらった。


 この村から、王都に着くまでに馬車で一月はかかる。なので、多分誰よりも早くに入学の為に、生家を後にした。

 だが、そこには寂しさも悲しさも無かった。あの日から私は、何処に行ってもヒトリなのだから。











 そして、誰よりも…とはいかず、無難に何人目かの入寮を果たし、入学式を迎える。

 沢山の同学年であろう人達。それに交じる様に、異質な3人組。


 一人は母の様に燃えるような赤髪の整った顔をした長身な男性、一人は眩しい位の金髪に見る人全員が全員振り向く様な美男子、一人はまるで初雪の様な白銀の髪を持つ美しい少女。

 この三人に、皆瞳を奪われていた。私もその一人だ。


 コロコロと表情の変わる赤髪の男性と、呆れ顔の金髪美男子はまるで兄弟の様だし、その2人を通り越し周りを見渡す美女は冷ややかで温度を感じない瞳で鋭く観察を続けている様だった。


「凄い目立つ3人ね…」


 私の呟きは、3人に夢中になってる周りの人には聞こえていない様だった。


ーーーーでも、あの美女はきっと微笑みもしないんだろうな…。



 私は、そう思いながら、自身の挨拶へ意識を集中していった。










 突然だった。



「リリアーナちゃん、流石っすね!ピンクを素敵って!!!いや〜、流石っす!」



 広い講堂に響き渡る声。その声の主があの3人組の、赤髪の男性だと気が付いたのは、後から続いた「リリアーナちゃんがそう言うなら!いや〜、すまないっす!挨拶初めて良いっすよ!!!」

と云う言葉からだった。


 赤髪の男性の隣には、あの初雪の様な美女が、驚いた顔をして赤髪の男性を見ていた。



ーーーーあの人も驚くのね!?



 私もびっくりして、美女を二度見してしまった。あの初雪の様な美女の表情が変わる様は、まるで雪解けの様だった。

 とても綺麗で、私の中に積もった悲しいとか寂しいとかそう云った負の気持ちも綺麗な雪解けと共に解けるような、そんな予感がした。




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