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12.無意識無自覚


 

 教室に向かう迄の間に、しばし考えを整理する。

 ただし、既に記憶は曖昧でゲーム通りには一切進んでない事だけは肝に銘じて欲しい。整理も何も、既に色々と違うので、私がこの世界がゲームではない…という事は分かっているのよ。

 ただ、ゲームと同じ事もあるのよ。


 登場キャラクター

 私しかり、エデル王子、プレイヤー(主人公)、他にもいるかも知れないわね。と、いう事は、この世界は、ゲームキャラクターの元となった人間が生存していた世界…?


 ゲームを作成した人は…


 そこ迄考えた所で、カリムに教室へ案内され、思考整理は終了。




 教室は、洋式というか…何というか、クラシックな貴族の屋敷みたいな出入り口でした。


 ゲームでは、日本式小学校の教室だった筈なのに…!

 結局、ゲームの記憶は何も役に立たないのよ…!!!


 もう、此処は…この世界はゲーム風味な別の世界と思いましょう。なんか、考えるだけ、期待するだけ疲れるというかショックを受けてるのが情けなくなってきましたわ…。



「あっ!リリアーナ様っ!!!」


 急に名を呼ばれ、振り向くとピンク頭のサクラがキラキラした瞳で私を見つめてる。あ、このテンションカリム(バカ)枠な気がするわ。勘ですけどね。



 ただもう、エデル王子(アホ)カリム(バカ)も揃ってるから、騒がしい枠は埋まってるわよ?いらないわよ?



「大丈夫ですか?リリアーナ様が倒れられたと聞いて、私…私…」


 グイグイ私ににじり寄って、心配したとゴリゴリくる。押しの強さはカリム以上ですわね…!?


「えぇ、大丈夫ですわ。あまりにも入学式が騒がしくて驚いてしまいましたの…。」


 無難な答えを言い、視線を下げる。

 本当に心配してくれたのだろう、瞳にはうっすら涙が溜まってる。


 騒がしい人しか私の周りには居ない…けど、全員基本的に優しいのだ。エデル王子(アホ)カリム(バカ)も私を心配し、保健室まで運んでくれたし…はぁ…ならば、私は礼を尽くさねばならない。礼儀知らずは貴族の恥ですわ。



「サクラさん、それにエデル王子、カリム、心配かけました。私は大丈夫ですわ。ですから、そんなに心配そうに見つめないでください。貴女の宝石みたいな瞳が溶けてしまいますわ。」


 私は、サクラの瞳に溜まった涙を指で掬う。


「さぁ、私は大丈夫ですのよ?愛らしい笑顔を見せてくれますね?」


 私は、サクラに微笑む。

 これで良いかしらね?子供の扱いは分からないわ…。(私も子供とは言わないお約束よ!)


「あ、あの…あ…私、失礼しますっ!!!」


 サクラは、真っ赤になりながら自分の席であろう机に戻り、頭をうずめてる。どうしたのかしら?


「あららら〜、リリアーナちゃんは王子と一緒か。しかも、無意識!!!」


 カリムが、失礼な事を言う。

 私がエデル王子(アホ)と一緒ですって?


「カリム、私がエデル王子と同じって…、貴方何か知ってるなら教えて下さい。」


「えっ?マジで無意識っすか??え〜…こりゃ先が思いやられるな…王子、ライバル確実に増えるっすよ。」


 何の話よ?


「リリアーナ…あまり、方方に笑顔を振りまくな。」


 なんて…失礼な。


「私が笑顔を出さなければ、怒ってるように見えますでしょうに。エデル王子は黙ってて下さい。」


「あ、はい。」


 エデル王子が、黙る。全く、私が真顔だと周りはビクビクするじゃないですか。

 マリーの次に長い事一緒に居て分からないのかしら?


「王子弱いっす…。リリアーナちゃんはマジで分かってないのに。分かっててやってる女より、天然の美少女の方が被害が怖いっすね。」



 本当にカリムって失礼ね!私が天然なんてありえませんわ。それに、被害なんて…私は無意識で加害者になるとでも言うのかしら?



「カリム…、私の席は何処ですの?」


 もう、天然問題は放置する。それより、席は何処よ。


「あっ!席!!私が知ってます!!!」


 真っ赤な顔をしたサクラが顔を上げ、私達に聞こえるよう声を上げる。

 その必死さに、思わず笑みが溢れる。

 

 まるで、コロコロぴょんぴょん跳ねる小鳥や小動物の様ね。見てて、飽きないわ。私は、可愛い生き物を愛でる気持ちに為って、無意識に笑んでしまっていた。


「せ、席なんですが…はぅぅ…リリアーナ様、その微笑みは…はぅぅ…」


 ん?サクラが悶絶し始めましたわ。どうしたのかしら?


「だから、リリアーナ…あまり笑みは…」

「リリアーナちゃん、その女神スマイル止めよう?マジで止めよう?見て?クラス!見て、男女問わず、むしろ、先生まで頭抱えてるから!!!胸抑えて頭抱えてるから!!!」


 エデル王子の悲痛な止め方と、カリムの絶叫が響く。


 はい、カリム、貴方は取り敢えず黙りましょうね?五月蝿い。単純に五月蝿い。


「カリム…五月蝿いです。もう少し、ご自身の声量を意識なさい。騒音ですわ。」


「えぇ!!!!自分の無意識無自覚女神スマイルは無視っすか!?見てくださいって!!!」


「カリム?私には、貴方の声を遮ろうと必死に耳を抑える面々しか映ってませんけど?」


「えぇ〜?けど、見てくださいよ!女神スマイルから、女王様冷やか目線への移行にギャップに悶て、頭抱えてる人もいますよ?ねぇ?リリアーナちゃん、自分が思うより、美人さんなんだからさ!!!」



 カリム、マジで五月蝿い。

 あら、いけませんわね。前世の癖でついつい…あ〜、本当に五月蝿い…。


「カリム、黙りなさい。ここは教室ですのよ?そして、私は貴方の目の前に居ますの。声量を考えなさい。いいですわね?」


 私は意識して、冷たく見える様に視線を尖らせて言う。


「はい…。」


 静かになったカリムを置いて、私はサクラに向き直った。

 まだ赤い頬に思わず笑みが溢れてしまう。


 あ〜、主人公だからか、完璧に愛らしいお嬢さんですね。うん。最高!!!




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