魔法検査
俺の今世の名は、シルヴァント・フォン・ノワール。現在3歳だ。
我が国、ウォルヘン王国の上津役の息子だ。
俺は今、2度目の人生を送っている。1度目の人生の最後に飛ばした魂が宿っている俺は己の状況を赤子の時からしっかりと理解していた。さぞ利口に見えただろう。
今生きているこの時代は2度目の始まりを迎えた世界。
調べてみてわかったが、この世界は破滅の歴史とは様々なことが異なっているようだ。
1つは魔法。破滅の歴史に比べるとこの世界の魔法は随分とレベルが低い。それに伴い、魔導士の優遇がすさまじい。どうやら、戦力の中心は魔導士のようだ。なぜ、魔導士の話をしたかというと、俺が今から『魔導検査』とやらに向かうからだ。魔法の適性を調べるものらしい。まぁ、どれだけ魔法に適性があろうとも俺がなりたいのは前世と同じ大剣豪だが。
「シルバー、行くわよ?」
「あぁ、今行く。」
母と向かうのは中央神殿。国で一番大きい神殿だ。この神殿は主に王族や貴族が使用するらしい。父、ランセットは侯爵としての公務で白にいるので不在だ。
神殿は実に大きく、目が痛いほどに白かった。神聖だから白くすればいいってもんじゃない。周りには俺と同じくらいの子どもが親と一緒にいる。どうやら魔導検査とは3~5歳の子どもが受けるようだ。
神殿の中には神官がたくさんいて、母が神官の説明を受けている。検査は魔法水晶と呼ばれるものの判断と簡単な実技によるものらしい。今はどっかの貴族の息子が水晶に触れている。年は5歳くらいだろう。
「すごいわ、ジェード!さすが私の子ね!」
「ふん。とうぜんだよ。」
結果は適正アリ。水晶に映った色は赤、青、黄の3つ。俺からしてみれば平凡どころか頑張ったとしても下の中程度に見えるが、この世界ではすごいのだろう。
魔法水晶は触れたものの適性の有無、属性を調べる。属性は強いものから順に水晶が色づくことでわかる。水晶は全部で10の属性が分かる。
赤、青、黄、緑、茶の5つと白、黒、紫、橙、灰の5つで10の属性だ。
赤は炎、青は水、黄は雷、緑は植物、茶は土。この5つは基本的な魔法で世の中の魔法が使える人間の8割がこの5つに当てはまる。そして残りの5つは白は光、黒は闇、紫は毒、橙は治癒でこの4つは一つ適性があるだけでも相当珍しい。このほかの属性はすべて灰の無属性に当てはまる。
そして、ようやく俺の番が来たらしい。前にいたやつらと同じように水晶に触れる。光った色は黒から始まり青、黄、灰、紫、赤、茶、橙、緑、白。どうやらすべての属性に適性があるらしい。検査の説明をしていた時からやけに腰の低かった神官が顎が外れるんじゃないかというほどに口を開き、飛び出るんじゃないかというほど目を開いた。母は、淑女然としていた表情を崩し、表情を驚きに染めていた。
「こ、これは素晴らしい結果ですよ!ノワール侯爵夫人!」
「え、えぇ、そうね」
「私は長年この神殿に努めていますが全ての魔法に適性がある方など見たことも聞いたこともありません!シルヴァント様はきっと、いや、必ず歴史に名を残す素晴らしい魔導士になるでしょう!」
俺の結果を見るや否や神官はすごい勢いで話し始めた。母もこの結果を受けとても驚いているようだった。
きっと今頃母は、頭の中で俺の将来を思い描いていて神官の話など全く聞いていないだろう。破滅の歴史に生きていた俺からしてみればこのくらいできない事には生きていけないと思うが。
こうして俺の初めての魔導検査は終了した。
ひとこと言わせてくれ。
俺がなりたいのは歴史に名を残すような素晴らしい魔導士ではなく何物にも立ち向かう大剣豪だ。