2度目の世界
世の中には始まりというものが必ず存在する。この世界が始まりを迎え、神々が恩恵を与え、野が華やかに咲き誇り、山は緑に囲まれ、海が蒼々と輝くことは2度目のことだった。すべてが崩壊した1度目の始まりは今の世では神話や伝説となり、「破滅の歴史」と呼ばれていた。
そして、2度目の始まりを迎えたこの世界に一つの魂がたどり着いていた。魂が宿る生命ある者の名を
『シルヴァント・フォン・ノワール』
という。
シルヴァントは生まれたばかりの赤子であった。しかし、シルヴァントは自分が赤子であることをしっかりと理解していた。
今、自分をのぞき込んでいる女性が母親で横目に映り込む男性が父親であることも、シルヴァントは理解していた。
「あら、起きてしまったかしら?」
そう言って母親、リリーゼは父親であるランセットを見た。ランセットはリリーゼの視線を受け、苦笑しながらシルヴァントを見た。
「シルバー、お前はなかなか気配に敏感だな。」
ランセットは国の重役であり、無意識に気配が薄くなってしまうことがある。
「シルバーは生まれてすぐだけど利口な子のようだわ。きっと素晴らしい魔導士になるわね。」
リリーゼはそう口に出し、シルヴァントを優しい目で見た。