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第60.5話 空へ向かって+Departure from the cage 後編

 

 一方、桜とエヴィの元にも思わぬ事態が起きていた。

「そうと決まればまずは君を……」

「待って……誰か来る」

「え?」

 エヴィの視線を追うと、目の前に2つの光が現れた。反射的にエヴィを背に隠し、桜は光の柱を睨む。


 光から姿を現したのは、ジャスディマとアフェイクだった。


「日向桜くん、で良いよね?」

「一体何のようだ……あー、確か、アフェイク、だったっけ……それと……」

 桜の視線は彼女の少し後ろにいるジャスディマに釘付けとなる。だがアフェイクはそれにあえて触れず、本題を切り出した。

「私達と同盟を、協力をしてほしい」

「何だって……!?」

 思いもよらない提案に、桜は信じられないといった表情を浮かべる。そしてそれはジャスディマも同じだった。

「アフェイク、どういうつもりだ!?」

「言葉通りよ。ディザイアスも信じられない、インフェルノコードを持っている連中も信じられない、ジェノサイドも信じられない。けど私達2人だけじゃ絶対どちらにも勝てない。なら、残された選択肢を選ぶしかないわ」

「だが……」

「あくまで全てが片付くまでよ。せめてディザイアスだけでも何とかしない事には、私達は何も出来ない。……それに桜くん、私達の力はきっと貴方達にも役立つ筈」

「役立つって……?」

 いまいち理解をしていない桜に、アフェイクは更に説明を重ねる。

「私達のヘブンズローダーには、あらゆるデータが内蔵されている。戦闘データだけじゃない、私達の記憶や、私達が知らない情報も。それを貴方達に提供しても良い」

「……どうしてそこまでして」

「そうするだけの理由がある。私というよりも、彼と、彼の親友に」

 そう言うとアフェイクは、ジャスディマへ視線を移す。彼は目を伏せていたが、やがて桜の近くまで歩み寄った。


「俺は…………俺達が人間を管理する事が、人間を滅びから守る唯一の方法だと思っている。だが、志が同じだと思っていた奴は、俺達とは別の計画を進めていた。だから俺は、自分が信じる正義の為に奴を、ディザイアスを破壊する」

「だから、協力しろっていうのか」

「俺も賛同しているわけじゃない。だが協力し合う価値はあるのも事実だ。俺達のローダーの情報をお前達に渡すというのは、手札を見せる事に他ならない。総合的に見ればお前達が有利に……」

「本当にそれでいいのか?」


 桜は心に針が刺さるような痛みを覚えた。もう彼は自分が尊敬していた兄ではない。分かってはいるのだが。

「何が問題なんだ。その後ろにいるジェノサイドも同じだろう」

「私は……違うよ。もうジェノサイドとしてじゃなくて、人間として生きる……生きたいって決めたもん。だからエリカお姉ちゃんを、この人と助ける」

 エヴィは桜の背から離れ、ジャスディマへはっきり伝えた。桜も彼女の言葉に続ける。

「……ジャスディマ。俺達はその場限りの協力じゃない。これから先の事も考えている」

「出来るわけがない。人間同士ですら分かり合えない中、ジェノサイドと共に生きることなど」

「俺は信じてるよ。ジャスディマが自分の正義を信じているように」

 ジャスディマは言葉を詰まらせた。桜の目から見える確固たる意思は、以前に真実を告げた時とはまるで別格だった。

「あぁ……信じているさ。インフェルノコードさえあればそれが叶うからな!」

「インフェルノコードは使わせない。エリカを助ける為に」

「……諦めが悪い奴だ」

「待ってジャスディマ……っ!」

 ヘブンズローダーが掲げられる。慌てて静止しようとするアフェイクを押し除けて起動しようとする。

「やはり俺達が協力し合うなど不可能だ!」

「む……!」

 臨戦態勢に入るジャスディマを見たエヴィもヘルズローダーを起動しようとした。だがそれは、優しく手を差し出した桜によって止められる。

「ジャスディマ。本当に俺達が手を取り合うのが不可能だと思う?」

「…………」

「きっとあんたは人間ともジェノサイドとも、分かり合えると思ってる。だって、俺やエリカを道具としてしか見てなかったなら、あの時に優しく接する必要なんかなかった筈だ」

「それは……」

「油断させる為? あくまで死なせなければいいだけだ。インフェルノコード完成とは何の関係もない。……真実を告げられたあの時、俺はそれを考えていなかった。本当は──」

「俺の意思じゃない! ……奴の、ブレイブの、望みだったんだ……」

「ブレイブ……?」

 初めて聞いた名前だった。だがそれを聞いたアフェイクの表情が曇る。

 上げていた腕を下ろしたジャスディマは、空を見上げる。

「かつて俺達と共にいたアースリティア……俺にとって、友と呼べた存在だった」

「そいつは今、何を……?」


 桜が尋ねようとした時だった。


 灰色の炎が竜巻となって現れ、桜達の間に割って入った。中から姿を現したのは、

「インフェルノコードか……!?」

「エリカ、お姉ちゃん……!」


「対象確認。リンドウとの接触を図る」


「…………」

 2人の視線が交錯した。



続く

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