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第42話 繋がる三姉妹+Madnnes of justice

 

 手を繋いで歩く2人は、あてもなく旧遊園地跡へ向かって歩いていた。

 エヴィ曰く、自分の家へ案内するとのこと。

「えっと、エヴィちゃんのお家で何をするの?」

「行ってから考える」

「そ、そうなの……」


 この子の面倒を見る。一見何ということはなさそうなのだが、それよりも自分を狙って現れる者達の方が気掛かりだった。

 エヴィを巻き込むわけにはいかない。握った手に知らずうちに力が入る。

「お姉ちゃん……」

「あっ、ごめん! 痛かった?」

「あったかい手してる。私の手、冷たいから……」

「う、うん」

 小さく口角が持ち上がる。つられてエリカの顔も笑ってしまう。


「エリカ…………!?」


 その時自分の名を呼ぶ声が聞こえ、思わず振り向いた。

「あ、セラ……」

「エリカ、今まで何処行ってたの!? みんな心配してたんだよ!?」

 杖をつきながらこちらへ歩み寄るセラ。制服とカバンを持っていることから学校帰りだろうか。

「いや、ちよっと……」

「って、その子は誰? 迷子?」

「う〜ん、何と説明したらいいか……」

 エリカはエヴィの方へと目を向ける。


 思わず背筋が凍った。


 口元からは笑みが消え、少しムッとした様な顔になっていた。これだけならまだいい。

 目が氷の様に冷めきっていた。


(何でこんな目を……!?)

 震えるエリカを他所に、セラはエヴィの元へ歩み寄る。

「こんにちは。名前、なんて言うの?」

「セ、セラ、この子は……」

「……エリカお姉ちゃんの、何なの……?」

「ん?」

「エリカお姉ちゃんの何なのって聞いてるの!!」

 威嚇するかの様にエヴィが叫ぶ。思わず手を離してしまうエリカ。

 エヴィの手が裾で隠れたヘルズローダーへ伸びる。


「私はセラ、エリカの妹だよ。はい、これあげる」


 ヘルズローダーを起動させようとしたエヴィの手に、セラは小さな包み紙を握らせた。

「これ……?」

「飴。美味しいよ」

 飴とセラを交互に見ながら、包み紙を開く。中からはピンク色の小さな飴が現れる。仄かに香る苺の香りの誘惑に負けてしまい、エヴィはそれを口へ放り込む。

 コロコロと口の中で飴が転がる音が聞こえ始める。

「お名前は?」

「んー? エヴィ」

「エヴィちゃんか、そっか。美味しい?」

「おいしい」


 エヴィの表情が穏やかになっていく。ほっと胸をなで下ろすエリカへ、セラは再び視線を移す。


「桜さん達が探してたよ。連絡ぐらいしたら?」

「そうだね……そうしておくよ」

「私これから帰る予定だけど、エリカは?」

「ん、と……」

 エヴィの方を見る。飴に夢中になっていたが、エリカの視線を感じたのか見上げる。

「エリカお姉ちゃんのお家、行きたい」

「エヴィちゃんのお家はいいの?」

「お姉ちゃん達のお家の方が楽しそう」

 随分気まぐれな少女である。見ればもう片方の手は、いつの間にかセラの手を握っていた。

「うーん、こんなに早く懐かれるのも心配だなぁ……エリカが拾っちゃうのも分かるかも」

「もう1人の妹……みたいな?」

「…………ちょっといいかも」

 3人は仲良く並び、人が全くいない歩道を進んでいった。




 ── ヴィヴィヴィヴィヴィヴィ!!! ──


 羽音で強風を巻き起こし、立ち向かう4人を吹き飛ばそうとするグラニー。

「この強風じゃ近づけない!!」

「ここは俺に任せとけ! 頼むぞ!」

 ホウセンカのサイドバックルからパキケファロソナーが飛び出す。


《コール、トリケライナー、コール、サイドパキケファイナー、コネクト、ホウセンカ》


 何処からか現れたバイクがホウセンカと合体、《マッシブアクセル》へ変化。その重さで強風を物ともせずに突き進む。

「オラァッ!!」

 右腕のサイドパキケファイナーを射出。巨大な頭部の顎を捉え、地面に倒れ込んだ。強風が止むと、ユキワリはモサビットの上に乗り空を翔ける。

 起き上がったグラニーは溶解液を空へ放って撃ち墜とそうとするが、サーフィンのように空を飛ぶユキワリはこれらを掻い潜る。反撃としてモサビットの口部からレーザーが放たれた。

 リンドウはマイティライフルを出現させ、光弾を連射。《シュートエアレイダー》の時と比べれば命中精度は落ちてしまうが、弾幕を張るぐらいならば問題なく《イノセントシールダー》でも扱うことは可能なのである。


── ヴァァァァ!!! ──


 ここで初めてグラニーが咆哮を上げる。口が何かを噛み砕くように動いたかと思うと、赤いガスを周囲にばら撒き始めた。

 その赤い気体に触れた途端、モサビットやパキケファイナー、果てはユキワリやホウセンカの装甲まで黒く変色を始める。

「腐食ガス……!?」

「何だこれ!? 体が腐ってやがる!? 気をつけろ桜!」

 だが山神は目を疑う光景を目の当たりにする。


 《イノセントシールダー》の装甲は依然曇りなく輝いていた。


 振り下ろされるグラニーの爪。それを右腕の盾で受け止める。自分よりも遥かに巨大な爪を防ぐのみならず、その盾を携えたリンドウもまた微動だにしていない。


《Lust!! Cracking Break!!》


 その一瞬の隙に、ストラが再び拘束を仕掛ける。リンドウを押し潰そうとしていた爪から力が抜け、ふらつき始める。


「決めろ3人組!!」


「あぁ!!」

「分かってる」

「お前に言われなくてもやってやるよ!!」


《Data Loding Complete》

《Playback Start!!》

《Playback Start!!》


 リンドウのシールドがガントレットへ変形、眩い光に包まれる。

 ユキワリの全身を蒼色の鮫のエネルギーが包み込む。

 ホウセンカは琥珀色のエネルギーを全身に纏い、大きく腰を落とす。


 リンドウとホウセンカは空高く跳躍。ユキワリはモサビットから飛び降りる。



《Capacity Max! Innocent Finish!!》

《Finale Stage!! グランドナックルフィニッシュ!!》

《Finale Stage ディープファングフィニッシュ》


 3つの光条がグラニーの頭部へ直撃。初めは拮抗していたが、やがてそれも崩れ、


 ── ヴァァァァァァァァァァッッッ!!!! ──


 遂に光はグラニーの頭部を貫いた。


 体の至る所から白、蒼、琥珀色の光が突き破り、やがて許容量を超えて大爆発。同時に3人は地面へ着地した。

「何とか上手くいった……」

 爆発の方へ振り向くと、そこには人間態へ戻ったグラニーが横たわっていた。

 ヘルズローダーは既にグラニーの腕を離れ、彼女自身も黒い灰をこぼし始めている。


 そんな彼女を優しく抱き上げる影。


「うー…………?」

「お疲れ様、グラニーちゃん。お腹空いてない?」

「あー……空いてないー…………今は、眠い……」

「そっかぁ。……じゃあ昼寝が終わったらおやつにしよう」

「うんー……ストラ、好きぃ……」

 最後にいつもの屈託のない笑顔を浮かべ、グラニーは灰となって空へと旅立っていった。


 遺されたヘルズローダーへ歩み寄ろうとする蒼葉。だが桜はそれを片手で止めた。

「桜?」

「そういう、約束なんだ」

「でもよ桜……」

 山神は言いかけたところで、口を閉じた。桜の目に揺るぎない意志を感じた為だ。

 3人を見た後、ストラはグラニーのヘルズローダーとチップを拾い上げる。

「悪い……少なくとも、俺はもう人間を襲ったりしない。他の奴らは俺が言っても聞かないから……」

「信じろっていうのか? 桜と転校生はともかく、俺は絶対信じない」

「信じなくてもいい。でももう、俺は戦いたくない。戦う理由がないからな……」

 その目からは完全に戦意が消えている。しかし彼女が生きていた証をしっかり握りしめていた。


「なぁ、リンドウ、だっけか? 最後でいい、本当の名前を……」



《Update Complete Shadow Slash》



 言いかけたその問いは、何かを刺し貫く音でかき消された。

 ストラの腹部と胸から突き出た2本の刃。黒い液体を滴らせ、アスファルトを染める。

 手から零れ落ちたヘルズローダーとチップは、黒い霧によって吸い込まれた。

 桜はその背後に、影を見た。


「ヒガン、バナ……!?」


「都合が良い。お前のヘルズローダーも渡して貰おうか」

「ぐっ、ふ……な、なるほど……ラスレイが言ってた協力者ってのは……!!」

 ストラは振り向き様にヒガンバナを突き飛ばそうとする。しかしそれを見越していたかのようにヒガンバナは黒い霧を纏った蹴りで迎撃。力尽きた様に崩れ落ちる。

 だが、ストラの顔は笑っていた。


「モテるのは結構だが……野郎なんかに渡してたまるかよ!」

 自らの手をヘルズローダーへかける。そしてそれを無理矢理外し、桜達の元へ投げる。肉体と融合していた為か、黒い液が宙を舞う。


「グラニーちゃんのじゃなくて悪いけど、代わりに渡すぜ!!」

「どうして……!?」

「知らない奴に渡すより、俺の頼みを聞いてくれたお前達に渡した方が良いに決まってる! だから、頼む……」


 グラニーと同様に、彼の身体からも灰が散り始める。その眼差しは真っ直ぐ桜を見据えていた。



「彼奴らを、止めてくれ……!!」



 ストラの伸ばした手が、指先から灰となっていく。


 桜は走り出した。もう間に合わないことは分かっていた。それでも走らずには、手を伸ばさずにはいられなかった。

 もう少しで分かり合えたかもしれなかった。互いに死ななくても、殺さずとも、済んだかもしれなかった。


 それなのに。


 完全な灰となったストラの手に触れた瞬間、桜は喉が割れんばかりに叫んだ。



「ヒガンバナァァァァァァァァッッッ!!!!!」



 《イノセントシールダー》の装甲がみるみるうちに錆つき、弾け飛んだ。複眼は黄金に輝き、刺々しい姿へと変貌を遂げる。


 以前にホースジェノサイドを葬った時と同じ。


 その姿を目にした蒼葉は思わず息を飲んだ。

「一体何が……!? 待って、桜!!」


 ヒガンバナは突っ込んでくるリンドウを見て、すぐに《シャドウアサシン》から《スカーアヴェンジャー》へ形態変化。


 リンドウのスラスターブレイドとヒガンバナのブレイクソードが衝突した。



続く

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