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第38話 必殺の鮫牙+The treacherous real intention

 

 一方、ユキワリとテランスの戦いも苛烈さを増す。


 モサビークルは咆哮に似たエンジン音が猛々しく響き渡らせ、大地を削りながら迫る。

「その巨大さ……小回りは利かないはず!!」

 テランスは大きく左に飛び、モサビークルの突進を回避。通り過ぎ様に、搭乗しているユキワリ目掛けて刺突剣を突き出した。当然ユキワリはバイクから飛び降りて回避せざるを得ない。それが狙いだった。

 着地した隙を逃さず、刺突剣を振るう。切っ先はユキワリの装甲を削り、仰け反らせた。そして喉元へ剣先を突きつける。

「油断しましたね。巨大で鈍重な相手ならいざ知らず、私を捉えられるとでも?」

「……あんた達相手に、油断したことなんか一度もない」

「何を……?」

「横、気をつけた方がいいわよ」

 その一言に誘われるように右を見る。その瞬間、テランスの身体をモサビークルが連れ去って行った。

「なっ!? 自動操縦……!?」

「AIは調整した。その辺のバカよりは賢いからせいぜい気をつけなさい」

 誰のことを引き合いに出したのかは定かではないが、ユキワリは再びモサビークルへと乗り込んだ。

「この程度の、拘束……!!」

 テランスは刺突剣をモサビークルの牙の隙間へ捻じ込み、こじ開けて脱出する。この時能力を剣へ込めて突き刺したのだが、やはりバイクの機能は停止しなかった。


 猛攻は止まない。モサビークルのフロントからレーザーが発射、更に後部から大量のミサイルを射出する。

「そんなものが効くとでも!!」

 レーザーは刺突剣で打ち消し、ミサイルはヘブンズローダーの能力を解放して無力化。地面へ落下し、爆発と共に土煙を巻き上げる。

「はぁっ!!」

「ぐぁうっ!?」

 その中を突っ切り、ユキワリが跳び蹴り。胸部へと命中し、テランスは宙へ吹き飛ばされる。


「終わらせる」

《Playback Start!!》


 サイドバックルから飛び出したプレシオフォンは中央装置へとはまり、必殺技を放つ態勢へと入る。そして再びサイドバックルへと装填。


《Extra Stage!! オーシャンスラッシュフィニッシュ!!》


 モサビークルが吼え、テランスを咥え上げながらユキワリ目掛けて突進。ユキワリの眼から光が波のように揺らめき、右足のブレードは蒼いエネルギーを取り込んで長大化。


 孤を描くように振るわれた回し蹴りと、モサビークルの咬撃の挟み撃ちが炸裂。大量の火花を散らしながらテランスの身体が地面へ叩きつけられた。



「そ、んな……わた、しが……ぐぅ、ふっ……!!」


 人間体へと戻り、尚も身体から電光を迸らせながら呻く。しかし蒼葉は変身を解かず、ゆっくりとテランスへと近づく。

「転校生ー! ……そっちも終わったのか。やるじゃねえか」

 ホウセンカも合流。同じくテランスを警戒しつつ、近づいていく。

「トドメを刺す気ですか……!?」

「おう、そんなに言うならやってやるよ。一撃で、楽に決めてや……」

「そんなことするわけないでしょう」

「えっ?」

 拳を振り上げて走り出そうとした山神を制止する蒼葉。その視線の先にあるものは、


「貴女のプラグローダー、解析すればどれだけの情報が手に入るのかしら?」

「か、解せ……!? い、いや、やめ、て、やめて!! それだけは!!」


 先程までの強がっていた素振りは消え失せ、テランスは這いずって逃走を図る。

「な、なんだあいつ? いきなり慌てて」

「アースリティア、だっけ? スレイジェルの親玉、ないし幹部クラスなら重要な情報くらい記録されている筈でしょう。彼女らにとってのローダーは、私達にとっての脳なんだから」

「……あ、そうか!! だったらエリカの行方も!」

 納得したように手の平を合わせる山神。呑気な彼に構うことなく、蒼葉は逃げようとするテランスのヘブンズローダーに手をかける。


「やめてっ!! いっそのこと私を破壊して!!」

「いくらでもやってあげる。解析が終わったらね」

「やだ……私の所為で、完全な世界への道が、やだ、そんなこと、許されない……誰か、誰か助けて!!」


 アースリティアには許されない、感情を剥き出しにして叫ぶ声。

 空へと響き渡った瞬間、灰色の頁が蒼葉へと降り注ぐ。

「な、何が……あぁっ!?」

「転校生っ! ぐおっ!?」

 吹き飛んだユキワリを受け止めようとしたホウセンカ。しかし衝撃を受け止めきれず、2人は地面に倒れ、変身も解除されてしまった。


 舞い散る灰色の切れ端。見上げたテランスの瞳には、自分を逃して散った筈の彼が立っていた。

「あ、あぁ……ウィ、ズード……!?」

「意外と早い再会になったものだ。テランス、私と共に来てもらう」

 テランスの身体を抱き上げたウィズードは、地面に伏した蒼葉と山神へと向き直る。

「野郎、生きてやがったな!?」

「君達2人には伝えておこう。日向桜の動向には細心の注意を払うことだ。彼の扱い方を間違えれば、取り返しのつかない未来が待っているよ」

 そう言い残すと、再びウィズード達は灰色の頁となって姿を消してしまった。


「桜の動向……? 何を起こす気なの……?」

「転校生、重いから早くどけって……ぐぇっ!?」

 頬を引っ叩かれた後、蒼葉は山神から退いた。

「にしたって、彼奴やっぱり生きてたのか……次に会ったら今度こそぶっ壊す」

「それもあるけど…………っ、桜!」

 2人が話していると、森の中から静かな足音を立てて桜が現れた。

 その表情は窺い知れない。だがひんやりとした雰囲気に、思わず蒼葉の鳥肌が立った。


「桜……?」

「あ、蒼葉。何かあったの?」

 いつもと変わらぬ声色。だが蒼葉は気がついてしまった。その目から、いつもの快活な光が消え失せてしまっていることに。

「おい桜、黒川は……」

「須乃子ちゃんならまだ森にいるよ。悪いけど迎えに行って貰えるかな、山神」

「お、おう。ジェノサイドは倒したんだな……じゃあ迎えに行く」

 山神は桜の様子を横目に見ながらも、黒川がいる森の中へと入っていった。


 去ろうとする桜の背にかける言葉を探して、蒼葉は口を噤んだ。

 代わりに、桜の方からこんな言葉がかけられた。


「蒼葉はさ、何の為に戦おうって決めたの?」

「え……?」

「…………ううん、やっぱり何でもない。これは俺が考えなきゃならないから」





 旧草木ヶ丘遊園地に2人は降り立った。


 この場所は観覧車乗り場。ウィズードに降ろされたテランスは安堵した表情で座り込む。

「良かった……生きていたのですね、ウィズード」

「少し言い方がおかしいが、まぁそんなところさ」

「しかしその姿は一体……?」

 ウィズードは微笑んだまま、テランスの身体を立ち上がらせる。

「とにかく、君の力が必要だ。協力して貰いたい」

「はい。全ては完全なる世界の為、再びディザイアスの元に集──っ!!?」


 テランスが言葉を発し終わるより早く、ウィズードはテランスの胸を貫手で刺し貫いていた。傷口から灰色の炎が溢れる。


「な、何を…………っ!?」

「さっき言った筈だ。協力して貰いたい。だからしばらく待っていてくれたまえ」

「ウィズード……どう、して……!」

 やがてヘブンズローダーが取り外され、テランスは機能の一切を停止した。魂が抜け落ちたその顔には涙が伝っている。


「どの道、これほどの感情を得てしまっては、戻ったところでフェイザーに始末されていただろう。君はこちらにつくしかないのだよ。……ほら、お望みの品だ、レディ・クロッサム」

 テランスのヘブンズローダーを投げ渡す。受け取ったクロッサムはローダーを頬に当て、見た目に似つかわしくないほど妖艶な表情を浮かべた。


「使えるじゃ〜ん。ご褒美は何にしよ〜かなぁ?」

「私のローダーが使えるようになれば良いのだが」

「それは大丈夫。必要になったら使えるようにしてあげるから。……さぁて、これも手に入ったし、私のワンちゃんの働きに期待だな〜」



続く

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