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第31話 大地を砕く拳士+The wisdom that was crushed

 

「よっしゃあ!! 行くぞ桜!!」

「……っ、あぁ!!」

 山神に鼓舞されるように、桜もスラスターブレイドを拾い上げ、走り出す。

「下がれテランス! 君は無力化をそのまま続行しているんだ!」

 ウィズードがそう言い放つと同時に、テランスの周りをはっきり見えるほどに分厚いバリアが覆う。

「彼奴の所為で桜が本領発揮出来ないわけだな、だったら話が早い!!」

 山神はテランス目掛けて一気に跳躍。空中から左拳を一気に突き出した。

「無駄だ、私のバリアが貴様如き人間に──」

 しかしウィズードの嘲笑は、すぐに驚愕へと変わった。打ち下ろされたホウセンカの拳はバリアに大量の亀裂を走らせ、そのすぐ後に粉々に粉砕したのだ。

「ウィズードのバリアを破った!?」

「まずは、一撃!」

 バリアを砕いた拳はそのままテランスの頭部を打ち据える。

「次いで二撃!!」

 下がった顔面めがけて右拳のアッパーカット。テランスが声を上げる間も無く、ホウセンカの左拳が後ろに引かれる。

「締めに三撃!!!」

 晒された胴体へ、踏み込んでの左ストレート。テランスは一瞬消えたかと思わせるほどの勢いで吹き飛び、電柱へ叩きつけられた。


「こ、こん、な……人間が…………!?」

「追加に四撃。容赦は、しねぇ!!」

 山神はパキケファロソナーをサイドバックルから抜き、中心のローダー部へセット。


《Playback Start!!》


 パキケファロソナーから打楽器を打ち鳴らすような音楽が鳴り始める。そしてそれをまたサイドバックルへ装填した。


《Pause Opening! パキケファロストライク!!》


 突き出した拳から猛進するパキケファロサウルス型のエネルギー波を射出。電信柱ごとテランスへ追い討ちをかける。

「あ、ぁ、が、が……!!」

 地面へ落下、テランスの変身が解除された。

「どうだ桜、本領発揮出来るか!?」

「……、いける、挿しても火花が出ない、これなら大丈夫だ!!」

「させるか!!」

 ウィズードは変身を阻止すべく、リンドウの四方をバリアで囲み、押し潰そうとする。

 しかし紙一重、桜がチップを挿入する方が早かった。装甲を纏い、射出されたシールドが前方のバリアを押し退ける。その隙間をかい潜り、シールドが右腕に装着され、《イノセントシールダー》への変身を完了した。

 シールドをガントレットモードへ変形。ウィズード目掛けて連打を浴びせる。ウィズードはバリアで防ぐが、

「ぐぁ、重い、防ぐ度に一撃が重く……!?」

 ガントレットはバリアを殴りつける度に輝きを増し、ヒビを入れていく。やがて、

「せやぁっ!!」

「ぬぐぅっ!?」

 振りかぶった一撃がバリアを砕いた。そしてリンドウの上を飛び越える影が迫る。

「オラァッ!!」

「がぁぁぁっ!!?」

 全身の捻りを乗せたホウセンカの拳が炸裂。ウィズードを常に覆う薄い防御膜を破裂させ、その頭部を大きく歪ませ、吹き飛ばした。


「が、ガガ、ハソン、データノ、シュウフクヲ、開、始……」

「ウィズード……!!」

 テランスはふらつく体を無理矢理立たせ、ウィズードの元へ駆けつけようとする。

「テランス、キミは戻れ!! ここまでのデータのバックアップは君にタク。この事を、ディザイアスへ、ツタエルンダ!」

「しかし貴方は──」

「私もすぐに戻る! 早くイケ!!」

 迷うそぶりを見せたテランスだったが、ウィズードの言葉を聞くと姿を消した。苦い表情を浮かべたまま。


「クッ、言語データがマダいかれているが……さぁ、データ収集をサイカイしようか!!」

「エリカの居場所を教えたら、ぶっ壊すのは無しにしてやるぜ?」

「ここで同志を売るほど、私はオロカではなくてね!」

 ここで始めて、ウィズードから仕掛ける。翼を広げながら2人へ高速で近づき、ローブの隙間から針の様に細い手が振るわれる。鞭の様な速さの連打がリンドウとホウセンカを容赦なく打ちのめす。

「野郎、やっと殴り合う気になったな!?」

「山神、少し時間稼いで!! 一気に決める!!」

「時間稼ぎ? しょうがねぇ、やってやる!」

 山神は乱れ打ちの中を一気に走り抜け、ウィズードへ攻撃を仕掛ける。

 打ち出される拳へ、的確にバリアを展開する。しかしそれらは全て一撃で破壊され、貫通した衝撃がウィズードへダメージを与えていく。

「これは、ただハカイリョクが高いだけじゃない! 私達への対策プログラムが……おのれ忌魅木、こんなコザイクを!!」

「難しい事なんざ分かんねえけどなぁ! 俺はお前達に好き勝手な事させねぇ!!」


《Playback Start!!》


 再びパキケファロソナーを中心部へセット。打楽器を打ち鳴らす音が徐々にテンポアップしていく。


《Pause Middle Stage! トリケラタックル!!》


 大きく地面を蹴り出して放ったタックルは3本角を携えた角竜のようなオーラを纏い、バリアごとウィズードを弾き飛ばした。

「ぬぐぉっ!! 負ける…………ワタシがマケルだと……あぁ、またデータにイジョウが……!!」

「桜、準備はどうだ!?」

「おかげ様で、完了!!」


《Data Loding Complete 3……2……1……》


 既にスラスターブレイドには光が纏わりつき、桜の眼は一点に狙いを定めていた。

「エリカは何処にいる!? 答えろ!!」

「コタエナイトいったハズダァ!! ウヌァァァァァ!!!」


《Capacity Max! Innocent Shining Finish!!》


 桜はやむを得ず、スラスターブレイドを放った。一条の光と化した一射を、ウィズードは最後の力を振り絞って出現させたバリアで防ぐ。力を一点に集中させ、光の矢の侵攻を必死に阻む。


「これでダメなのか……!?」

「いいや、ダメじゃねえ!!」


《Playback Start!!》


「ナニっ!?」

「むしろ、ダメ押しするんだよ!!」


《Finale Stage!! グランドナックルフィニッシュ!!》


 ホウセンカは巨大な琥珀色のエネルギーを全身に纏う。炎の様に揺らめき、やがて右拳にそれら全てが収束する。


 そしてそれを、拮抗しているスラスターブレイドへ叩きつけた。


 眩い白光と揺らぐ琥珀の光が混ざり合い、溶け合い、巨大な螺旋を描きながらバリアを打ち砕き、ウィズードの身体を貫通した。



「バカナ、ニンゲンニ、コンナカノウセイガ……データ、データニ、クワエナケ、レ、バ……」



 ノイズが多量に混じった呻きを残し、遂に身体が爆発。巨大な焔を天に向かって立たせ、姿を消した。


「倒した、か」

「いや……チップが何処にも落ちてない。多分爆発に紛れて逃げた」

 桜は変身を解除し、燃え盛る炎を見つめる。何も聞き出せないまま終わってしまった。エリカへの糸口をまた探さなければならない。

「エリカ……」

「すぐ見つけ出してやるさ。もうお前1人じゃない。俺も転校生も写見も、社長さんだっている。俺達みんなで、エリカを助けるんだ」

「山神……ありがとう」

「さって、俺も元に戻るかな──」

 山神も変身を解除した。と、次の瞬間、


「痛ってぇぇぇ!? いっ、なんで、あ、そっか忘れてた怪我してたんだ、だぁぁカッコつかねえチキショウ!!」

「はは、山神は馬鹿だなぁぁぁぁ痛い痛い!? そうだった俺も足怪我してたイタタタ!!!」

 2人は道を転がり回りながら悶絶。とても立てる状態ではなかった。

「こうなったら救急車、救急車呼ぶぞ! パキケファロソナー、お前なら出来んだろ!?」

 山神が呼びかけると、パキケファロソナーは任せておけと言わんばかりに鳴き、頭部を展開して電波を発する。しかし、


《電波が弱いので、通話が困難な状況となっております。屋内にいる場合は速やかに外へ──》


「ここが外なんだよ!! 山神、パキケファロソナーじゃ無理なんじゃ……!?」

「いや出来る! お前なら出来る! 頑張れ、いや、本当に頑張って頼むから!」


 結局2人が救出されたのは、ノアカンパニーが現場調査に訪れた時。時間にしておよそ、20分後だった。



続く

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