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第23話 集結の戦場+Angels and devils and humans

 

 黄金に揺らめく炎は、フォックスジェノサイドの周りを浮遊している。フラフラと漂っているようにも見えるが、彼女を守るようにも見える。


「成る程、これが正体という訳か。全て合点がいったよ。確かにインフェルノコードの担い手として、これ以上の適任はいまい」


 唖然とする桜と蒼葉を差し置き、1人全てを把握したかのように頷くウィズード。

「ね、ねぇ桜……何が起きたの? 目の前を、火の玉が飛んで……」

「ならば君の姿を見ればいいさ」

 混乱するフォックスジェノサイドの目の前に、ウィズードは1枚のバリアを出現させる。それは鏡のように、フォックスジェノサイドの姿を映し出した。

「ひっ!? ジェノ、サ……あ、あれ…………違う、何で、同じ動き……何で……?」

「やめろっ!!!」

 桜は力の限り壁を殴りつけた。それはすぐさま砕け散ったが、舞い散る破片に映った自分の姿を見て、全てを知った。



 自分が、稲守エリカが、フォックスジェノサイドだと。



「そう……か…………私、ジェノサイド、だったんだ……」

 力無くうなだれると同時に炎が身体を包み、その姿をエリカへと戻した。その目は何の感情も宿していない、虚無の色と化していた。

「さて、自分の本当の姿が分かったところで、一緒に来て貰おうか」


 ウィズードが手を差し出そうとした瞬間、振り下ろされたブレードがウィズードの手を斬り裂こうとした。間一髪バリアを張り、ブレードは阻まれる。

「エリカは渡さない!!」

「力に呑まれて彼女を殺しかけた者がよく言う。やめておくがいい。彼女は人間に御しきれる存在ではない」

 打ち下ろされる拳や蹴りはバリアで弾かれるが、桜へ攻撃する素振りは見せない。攻撃手段がないのか、別の事情があるのか。

「エリカは……俺達の友達なんだ!!」

「随分と私情が絡んだ理由だ。愚かな人間らしい理由──」



《Update Complete Scar Murder》



 突然響いた電子音。2人が反射的に後方へ飛び退くと、無数の黒い剣閃が目の前を通過した。

「何だ……?」

「この黒いのは…………彼奴か!?」

 少し離れた場所に、傷だらけの剣士が佇んでいた。

「ヒガンバナ……!!」

「…………」

 ヒガンバナは蒼葉を一瞥するが、以前の様に襲いかかる様子はなかった。

 だが桜の意識はそちらの方へと向いたままになってしまう。メガロファングの副作用で闘争本能が極限まで高められた今の桜には、外敵の存在だけで周りが見えなくなってしまう。

 しかしウィズードの方は至って冷静にヒガンバナを観察する。

「ジェノサイドの陣営か?」

「どちらの陣営でもない。だが目的は同じだ。稲守エリカをこちらに渡してもらう」

「やってみるがいいさ」

 すると、座り込むエリカの周りを半球状のバリアが覆う。幾重にも重ねられおり、更にはエリカ本人からかなり近い距離を覆っている。下手にブレイクソードで攻撃しようものならバリアごと斬られてしまうだろう。

 しかしヒガンバナは何ら焦る様子は見せない。

「そうだな、そうして何重にも張っていればいい」

 プラグローダーからチップを抜き、新たなチップを挿入した。


《Shadow Assassin》


 ブレイクソードを一度鞘へ戻し、プラグローダーを閉じる。そして剣を引き抜いた。


《That shadow is not hindered! You can not escape from the fate of death!! 復讐者よ、血濡れた手で魂を掴め!!》


 鎧が消え、赤黒くボロボロのローブとマフラー、欠けた仮面を身に纏う。ブレイクソードは分割されて大小2本のショートソードへ。

 ヒガンバナ、《シャドウアサシン》である。


「そんなもので何を──」

 ウィズードが嘲笑った瞬間だった。ヒガンバナの姿が消えたかと思うと、バリアの中からエリカの姿が消えた。

「っ!?」

 気がついた時には既に遅い。ヒガンバナはエリカを抱え、彼方へと跳び去っていく。


「まさかあんな搦め手を……奴のプラグローダーも回収対象に入れねばならないか」

「待てぇ!! ヒガンバナ!!」


 ウィズードには目もくれずに走り出す桜。しかし、



「カァッハハハァァァッ!! 見つけたぜぇぇぇ!!」



 突如目の前にカラスジェノサイド──リーディが立ち塞がる。ブレードと鉤爪がぶつかり合う。

「途中で逃げやがって……もう逃がさねぇ!!」

「どけぇっ!! お前の相手をしてる暇はない!!」

 激しく斬り合う2人。ブレードを的確に生身の部分へ叩き込む桜に対し、リーディは一撃の度にメガロファングの装甲で身体が傷ついていく。

「ケッ! この程度──」

「くたばれぇっ!!」

「グブッ!?」

 リーディの頭に拳がめり込む。鈍い音と共に黒い液体が飛び散り、吹き飛ばされる。


 桜はその隙にプラグローダーを3回スライド。

「やめて桜!! これ以上は身体が保たない!」

「邪魔な奴はここで片付ける!!」

 蒼葉の言葉はまるで耳に入っていない。鮫を模したエネルギーが全身を覆うと同時に、身体の各部から火花が飛び散る。


 それを見たウィズードの頭にある考えが浮かぶ。


 エネルギーを纏って突進する桜。ふらつきながらも反撃の構えを取るリーディ。このままでは撃破されるだろう。


 その時、桜の目の前に巨大な白いバリアが立ち塞がった。拳が衝突すると、鮫型のエネルギーはバリアに喰らい付き、食い破ろうとする。バリアには徐々にヒビが入り、やがて砕け散った。

 しかし、


《Re:Conect!!》


 その先ではヘルズローダーから流れ出た赤黒いエネルギーを手に纏わせたリーディが待ち構えていた。

「くたばるのはテメェだぁっ!!」


《Greed!!Cracking Break!!》


 エネルギーは鋭利な翼の形をとり、桜を切り裂いた。メガロファングの装甲が弾け飛び、変身が解除。プラグローダーからチップが強制排出される。

「ぐ、あぁ……」

「はっ、トドメ……ぐ……!?」

 リーディの腕からもおびただしい火花が散る。メガロファングの反射装甲はしっかりとダメージを与えていたようだ。

 振り返ればアースリティアの姿もある。手負いの状態で戦えばどうなるかくらいはリーディにも理解出来る。

「けっ、今回は見逃してやる」

 吐き捨てると、黒い羽毛を散らせて何処かへ消えてしまった。


「これで良いデータが得られただろう。さて、私もあの黒い奴を追うとしようか」

 それを見届けたウィズードも、白いページが飛び散ると同時に姿を消した。



「桜っ!! しっかりして、桜っ!!」

 蒼葉は桜を助け起こし、意識の有無を確認する。息はしているが、目覚める気配がない。メガロファングに変身した反動もあるのだろう。

「桜ってば!」

「あら、お困りのようね」

 聞き覚えのある声が頭上からかかる。見上げるとそこには、


「貴女……アースリティア!?」

「ひどーい! ちゃんと名前で呼んで。私はアフェイク。あーん、そんな事よりも」

 距離を取ろうとする蒼葉から、アフェイクは桜を奪い取る。

「桜に何をする気っ!?」

「怪我しちゃったんでしょう? だから私が愛の施しを、ね」

 そう言うとアフェイクは桜を優しく抱きしめた。するとどうだろうか、外傷はたちまち塞がり、浅くなっていた呼吸も落ち着く。表情も安らかになっている。

「一体、何が目的で……」

「私ね、彼の今後が気になるの。理想と現実の間でどう足掻くのか、どう立ち向かうのか。それを想うと……たまらなく愛おしいのよ」

 アフェイクは桜を地面に寝せると、何処かへと姿を消してしまった。


 何の因果か、アースリティアと意思を保ったジェノサイドが桜の周りに集まりつつある。それに、


「エリカがジェノサイド……それに…………インフェルノ……コード?」



続く

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