第18話 信じているから+Not collapse friendship
「野蛮な戦い方を!!」
ウィロウも手槍を構え直し、リンドウと迎え撃つ態勢に入る。スラスターブレイドと手槍では、射程が槍の方に部がある。
「行くぞぉっ!!」
桜は槍の射程一歩手前でスラスターブレイドのレバーを上部へ一気に引き上げる。当然暴発するが、その瞬間に地面にあてがい、衝撃を利用して一気に跳躍。槍の一撃を躱しつつ距離を詰めた。
「なにっ!?」
ウィロウは避ける事が出来ず、胸部から一直線に焼け跡が刻まれてしまう。半暴走に陥ったスラスターブレイドを逆に利用し、嵐のような連続斬りを喰らわせる。
「き、貴様ぁぁぁっっ!!」
ウィロウは決死の覚悟を持って、スラスターブレイドをその身で受け止める。止まった隙を狙って無防備な胸部を槍で貫こうとする。
しかし、
《Crush Warrior》
「馬鹿なっ、グォッ!?」
分厚い装甲に当たった槍は無残にへし折れ、肩の角を利用したショルダータックルで吹き飛ばされた。
「あの一瞬でフォームチェンジを……!」
「どう蒼葉? 前より戦い方良くなってるだろ?」
「ふ、ふふ……前よりは、ね」
小さく笑う蒼葉。対するエリカは、未だに信じられないといった様子で戦いを見ていた。
「凄い……桜……!」
「グァァァミトメラレルモノカァァァ!! 人間ゴトキニィィィ!!!」
「さっきまでの賢そうな話し方はどこいった?」
「ダマレェェェェェェッ!!!」
瓦礫を吹き飛ばし、リンドウと取っ組み合うウィロウ。しかし細身なウィロウでは、クラッシュウォリアーの馬力に敵わない。
「アサハカデ愚カナ下等生物ガァァ!! 私達ニカンリサレナケレバ貴様ラナドォォォ!!」
「いい加減聞き飽きた!! お前達の悪口なんか!」
クラッシュウォリアーの額の角が輝き、ヘッドバットが炸裂。ウィロウの頭へ大きなヒビが入り、大きく仰け反る。
更に桜はシュートエアレイダーへフォームチェンジ。絶え間ない連射を頭部へお見舞いする。
「アガ、アガ、ァァァ…………!?!」
「さぁ、終わりだ!!」
桜はプラグローダーを3回スライド。エネルギーが左手からマイティライフルへ伝わり、同時に右手にも輝きを増す。
《Update Complete Shoot》
ウィロウへ高速で接近し、右拳のアッパーで天高く吹き飛ばす。そして天へ向けた銃口に光が収束し、
「……発射!!」
トリガーを引いた瞬間に無数のレーザーへ分裂。ウィロウを刺し貫き、そして、
「¥+<|〆:♪¥%〒-!!!!!」
爆散した。
戦いが終わった桜は変身を解き、2人の元へ戻る。戻ってきた桜を見たエリカは小さく笑うと、目を蒼葉の方へと向ける。
「蒼葉……」
「色々と話したい事はある。だけど今は……」
今度は蒼葉の目がエリカの方を向いた。
「そう……だな。エリカ、睡蓮の所に戻るぞ」
「う、うん……あ、蒼葉さん!」
エリカはバイクに向かう前に振り返り、小さく一礼した。
「まだ私、何が起きてるのかよく分からないけど……桜の事、よろしくお願いします。良かったら今度何処かでお茶しましょう! 睡蓮ちゃんも一緒に!」
「あ…………えっと…………」
返事をする前に、トライアングルホースに乗った2人は行ってしまった。
今まで生きてきて初めてだった。同じ歳の少女からお茶に誘われる事など。
顔に違和感を感じ、口元に触れてみる。僅かに持ち上がっていた。
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アリゲータージェノサイドが大口を開いて飛び掛かる。しかしそれを、ロータスは難なく躱す。
もうこれを幾度となく繰り返している。おかげで公園の木々には歯型が大量につき、天使を象った銅像の頭は無くなっている。
ロータスはただ避けているわけではない。アリゲータージェノサイドが無闇矢鱈と暴れ回るせいで、中々隙を見せないのだ。どうやらロータスからの先制攻撃を食らった事により、かなり気が立っているらしい。
「ウグルァッ!!」
爪を振り上げ、ロータスを斬り裂こうとする。しかしそれをいなすと、勢い余って銅像の台座に突き刺さってしまった。アリゲータージェノサイドは必死に引き抜こうとするが、深く突き立った鉤爪は台座を離そうとしない。
「今!!」
ビーム刃をランチャーから展開、アリゲータージェノサイドの右腕を切断した。
「ウガァァァッッ!?」
「はぁっ!!」
突如支えを奪われたアリゲータージェノサイドがよろめいた瞬間、ロータスはでっぷりと突き出た腹にビーム弾を撃ち込んだ。腹部の中央に不自然な窪みが穿たれる。
「イギィオオオゥゥ!!?」
聞いたことのないような奇声を上げ、アリゲータージェノサイドは地面を転げ回る。
しかし再び立ち上がり、ロータスに向かって牙を剥く。既に右腕は無く、口や腹から黒い液体を垂れ流しているにもかかわらず、未だに戦意を喪失していない。
「これ以上の戦闘は、無意味と判断。対象に、安らかな眠りと、新たなる旅立ちを」
ロータスはプラグローダーを3回スライド。両腕のランチャー内にエネルギーが充填され、一際長いビーム刃を形成。背部からスラスターが展開し、高速でアリゲータージェノサイドへ迫る。
対するアリゲータージェノサイドも自身を奮い立たせるように咆哮し、真正面から突進する。
2つの影が合わさった瞬間、勝敗は決した。
「ハァァァァッッッ!!!」
ロータスが振るうビーム刃はアリゲータージェノサイドに無数の斬撃を見舞い、トドメに十字の軌跡を残す一撃が振るわれた。
「ァァァ、ガ、ガ、ガァ…………」
「天へと還りなさい」
アリゲータージェノサイドは苦しげな、だが何かから解放されたような呻きを漏らし、
爆散する事なく、静かに塵となって消失した。
「…………」
小さく息を吐き、変身を解除。睡蓮の姿へ戻った。
「さぁ、ここからが…………本当の戦いだ……」
振り返らずとも分かる。
自分の元へ走ってくる親友の足音が。
足音が止まる。振り返ると、少しだけ息を切らした親友がそこにいた。
「エリカ、話の腰が折れちゃったけど、改めて話すよ。私ね ──」
「そ、その前に……い、言わせて……」
切れ切れな息を整えると、エリカは睡蓮の肩を掴み、小さく笑ってみせた。
「睡蓮ちゃんがどんな秘密を持ってたとしても、私は受け入れるよ。だから何でも話して! 隠してて辛いなら、全部出しちゃって!」
「……っ!! …………よかった」
「えっ?」
睡蓮は涙を流しながら、笑顔を返した。いっぱいの喜びと感謝を込めて。
「私、人間を好きになって良かった! エリカと友達になれて良かった!! ありがとう、エリカ!!」
月夜に照らされた噴水の前。
睡蓮が話した事を、エリカは真剣に聞いていた。時に驚き、時に悲しげな表情を浮かべ、それでも話し終えた後、エリカは彼女を抱きしめた。
その様子を茂みから見守っていた桜は、胸を撫で下ろした。
「結局、心配することなんてなかったか」
《人間と、スレイジェルの友情……》
と、プラグローダーから蒼葉の声がした。
「あれ、蒼葉も繋げるんだ?」
《まぁ……》
「それはそれとして。人間とかスレイジェルとかなんて、きっと関係無いんだよ。人間とスレイジェルが仲良くすることもあるし…………争う事だってある」
《時には同じ人間同士でも…………ふぅ、いつ彼女に謝れば……》
「それは…………」
桜は少し考え、やがて空を見上げながら答えた。
「明日にしよう。俺も付き合うから」
続く




