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第13話 隷属する天使+Leaders of angels

 

 最初に仕掛けたのは桜だった。


「マイティライフル」のレバーをパワーモードに引き、熱線を発射。

 スカーアヴェンジャーはこれを横に交わし、反撃に銃型に変形したブレイクソードのトリガーを引く。銃後部に電気が収束していく。


 だが発射直前に、シュートエアレイダーの弾道予測機能が発動。自分の胴体を狙った一射を飛行して回避した。


「ここじゃみんなを巻き込む!」


 桜はスカーアヴェンジャーへと体当たり。スラスターを全開にして引き離す。


「行っちゃいましたよ……何なんすか彼奴ら…………!?」

「そんなの後だ! おい転校生、しっかりしろ!!」

「あ、そ、そうっすよ! 早く病院に連れてかないと!!」

 意識を失った蒼葉を山神が背負い、2人は駆け出そうとする。

「おい行くぞ睡蓮…………睡蓮? ちょ、彼奴どこ行きやがった!?」

「あれ!? そういえばいない……!?」

「ったく仕方ねえ、睡蓮探すのは後だ! 今は転校生を運ぶぞ!!」

 いつのまにか忽然と姿を消した睡蓮。

 嫌な予感が頭を離れないまま、山神達はその場をあとにした。



 人のいない、公園の外れにある森。


 そこに着陸した2人は再び銃撃戦を開始する。

 1発を放つのにタイムラグがあるスカーアヴェンジャーに対し、射撃に特化したシュートエアレイダー。射撃戦を続ければいずれ押し込まれるのが分からない彼岸ではない。

「はぁっ!!」

「……っ!!」

 桜はラピッドへレバーを引き、エネルギー弾を連射。彼岸は一度ブレイクソードをソードモードに戻し、降りかかる弾丸を斬り払う。

 そして大きく跳躍し、巨大な岩の陰に身を隠した。


「隠れたって無駄だ!!」


 レバーをパワーへ引き、すぐさま岩陰に回り込んだ。


 しかし、


 《レールガンプログラム》


 スカーアヴェンジャーの姿が見えた時には、既にブレイクソードの剣先には電光が迸っていた。

「あっ!?」

「墜ちろ」

 咄嗟にトリガーを引き、両者が放った弾丸とレーザーがぶつかり合う。

 拮抗したエネルギーはぶつかり、混ざり合い、やがて爆裂した。

「うわっ!?」

 爆風を煽られ、大きく吹き飛ばされた桜は大木に背中を強打。ピュアアーマーの時以上のダメージが身体を襲う。

「空が飛べる分、装甲が……!」

 そのまま重力に引かれて落下。装甲から火花が飛び散る。

「奴は……!?」

 あたりを見回すが、既にスカーアヴェンジャーの姿は無い。撤退した、と考えても良いのだろうか。

「はぁ〜…………逃げられた…………いや、見逃されたのかな……?」

 フラフラと立ち上がり、プラグローダーを開く。普段は周りを確認してから変身解除をするのだが、疲れからかそれを怠ってしまった。


「貴方は……!?」


 コネクトチップを引き抜いた瞬間、桜にかかる声。気がついた時にはもう遅い。

 身に纏っていた装甲とインナースーツが分解し、桜の姿が露わになる。


「桜……」

「す、睡蓮…………!? 何で……!?」

「それはこっちのセリフだよ!! 何やってんのさ桜!? 理由も言わないで学校辞めて、どれだけ私達が心配したと思ってるの!?」

 その声には、怒りが混じっていた。桜は今まで、本気で怒った睡蓮を見たことがなかった。故に、気圧されるほどの衝撃を受けた。

「転校生……蒼葉さんと何をやってるの!?」

「ま、待ってくれ睡蓮、これには深い理由が……」

「どんな理由だろうと、こんな事もうやめてよ!! スレイジェルに関わったらいずれ……」

「スレイジェル……?」

 その単語に反応した桜を見て、睡蓮は我に帰ったのか口元を押さえる。

「何でその言葉を知ってるんだ……?」

「それは……」


 先程とは立場が逆転する。静かに歩み寄る桜、そしてそれから逃げるように後ずさる睡蓮。


「俺も自分の事を話す、だから教えてくれ! 何でスレイジェルを知っているんだ!?」

「…………」

「睡蓮!!」


 問い詰めるように叫んだ時だった。



「静かに。小煩い人間」



 突如2人の間に、1人の男が現れた。

 眼鏡をかけた、白髪の男。何処か無機質な雰囲気を醸し出す出で立ちだ。

「誰だあんた……!?」

 桜は男に問う。だが直後、ある事に気がついた。


 睡蓮の肩はガタガタと大きく震え、息は過呼吸になっている。口元はひたすら、ある単語を発していた。

「お、お、お許、し、を…………我が罪を、どうか、ど、うか……!!」

「睡蓮? 何言ってるんだ?」

「我々を見ればこうなる。例え道を違えた者でも、私達には決して逆らえないのは変わらない」

 男は眼鏡を押し上げる。その時、袖口からあるものが姿を現した。


 桜が左手に身につけているもの──プラグローダーに似ている機械だ。


「お前もプラグローダーを持ってるのか……!?」

「プラグローダー? プロトタイプと一緒にされるとは心外だな」

「プロト……?」


 意味を理解していないのか、途端に気が抜けた様な表情になる。それを見た男はやれやれと言った様に手を振った。

「やはり、人間は私達が管理しなければな」

「人間を管理とか……さっきからまるで、自分は人間じゃないみたいな言い方だな」

「ご名答。先程の様子から痴れ者だと思っていたが、勘はそこそこ鋭いか?」

 小馬鹿にした様な笑いを口元に浮かべると、男はプラグローダーの様なもののカバーを開いた。


 《Set Up》


 男が右手を開く。すると掌から、1枚のコネクトチップが現れた。

「これから長い付き合いになるだろう相手だ、名乗りを上げようか。我が名はウィズード。愚かな人間を導く存在、アースリティアの1人だ!」

 高らかに名乗り、コネクトチップを挿入。カバーを閉じ、中心にある十字架のようなボタンを押した。


 《Set Up Complete》


「天臨」


 《Falling Angel…… Wisdom》


 巨大な光輪が男──ウィズードの頭上に現れ、眩い光が彼の体を包む。

 本の頁の様な幻影が飛び散り、真の姿を現した。


 烏帽子の様に天高く伸びた頭部の真ん中で輝く1つの複眼。純白のローブを纏い、その隙間から細い手脚が覗く。胸部には杖を掲げる4枚羽根の天使が刻み込まれ、自身の背にも4枚の羽根が生えている。


「スレイジェル……!!」

「全く、理解力がないな。隷属する天使ではない。それらを統治する先導者、それが我々アースリティア。確かに我々を生み出したのは人間、しかしここまで自己進化を遂げたのは我々の実力だ」

 呆れ返るウィズードの言葉には耳を貸さず、桜はすぐに変身しようとする。しかし、

「……っ!? 身体が、動かない……?」

 まるで身体を全方位から押さえつけられている様な感覚が襲う。

 そんな様子を尻目に、ウィズードは睡蓮へゆっくり近づく。彼女の目は既に焦点が合っておらず、その場に座り込み、両手を固く合わせて祈るような姿勢になる。

「やめろ!! 睡蓮に何をする気だお前!?」

「少し忠告しておくだけさ。黙っていろ」

「うっ!?」

 押し付ける力が更に強まり、身体から鈍い音が鳴り始める。


「No.2、君の、いや、君達のおかげでスレイジェルを量産することが出来た。それは認めよう。だが…………少し人間に近づきすぎた様だな」

「…………っ、っ、…………!!」

「だが君達を処分するのは私の仕事ではない。近いうちに迎えが来る。その時までに行いを改めれば、あるいは救われるかもしれないな」


 そう言い残し、ウィズードの姿が消えた。


 同時に桜を押し付けていた力も消える。勢い余って倒れかけた身体をなんとか立て直し、すぐに睡蓮の元へ駆け寄る。

「睡蓮! 大丈夫かお前……っ!?」

 そこで桜はあるものに気づいた。気づいてしまった。

 虚ろな目で宙を見つめる睡蓮の左手に握られた、コネクトチップの存在に。

「何でコネクトチップを、睡蓮が……」



「ハッ、決まってんだろぉが! そいつが、スレイジェルだからだよ!!」



 今度は桜達の目の前に、1人の青年が現れた。ギラギラとした鋭い目、金のピアスを耳にかけ、黒いレザージャケットを身につけている。


「何だお前……いやそれよりも!! 睡蓮がスレイジェルだと!? デタラメを言うな!!」

「デタラメだぁ!? そいつが持ってるチップと、俺の勘が証拠だ!! 人間狩りなんぞ興味は無いが、スレイジェルは不快な連中だ!! 俺がスクラップにしてやる!!」


 青年は大きく叫び、左袖を捲る。そこには想像を絶する光景が広がっていた。


 青年の左腕には、先程ウィズードが身につけていたプラグローダーの様なものとよく似た機械が取り付けられていた。しかしその色はドス黒く、血管の様な赤いコードが剥き出しになっている。


 そして青年が取り出したのは、黒いコネクトチップ。


「カアッハッハッハハッ!!! 俺が、全部、奪い尽くしてやるぅ!!!」

 黒いプラグローダーを開くと、


 《Shut Up!!》


 とノイズがかかった音声。

 乱暴にチップを挿入し、壊れんばかりにカバーを閉じた。


 《Shut Down!!!》


「降…………臨!!!」


 《奪え! 荒らせ!! 蹂躙せよ!!! Greed! Greed!! Greeeeed!!!》


 青年の足元から黒い沼が現れ、噴き上がった汚泥が全身を包む。それはやがて乾き、硬化し、


 中から怪物が姿を現した。



 両手両脚には大きく曲がった鉤爪。しなやかながらも頑強な筋肉を浮き出た肋骨が鎧の様に覆っており、頭部は巨鳥の頭骨を纏い、そこから真っ赤な複眼が浮き出ている。


「ジェノサイド!? いや、何か、何か違う!!」

「覚悟しろぉっ!! この腐れ鉄屑天使がぁ!!!」


 鴉の様なけたたましい雄叫びを上げ、2人に襲い掛かってきた。



 続く

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