表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/97

第12話 空を掛ける狙撃手+Identified identity

「プラグローダーを確認。確保する」

 バタバースケイプは右手を振り上げ、以前のジギタリスと同じく下級スレイジェルを3体呼び出した。

「何なんだよお前ら!! 俺の知り合いばっか狙って、会う度にプラグローダー寄越せって!! あったま来た!!」

 桜はプラグローダーから「クラッシュアックス」を呼び出し、さながらサイの様に猛進する。スレイジェルが体当たりして止めようとするが、2体は肩のツノで貫かれ、1体は腹部にクラッシュウォリアーの頭のツノが突き刺さった。それでも止まる事はない。

「敵は力に特化しているか」

「うおらぁぁぁぁぁっ!!!」

 振り上げられた大斧がバタバースケイプへ振り下ろされる。

 しかし空へと逃げられてしまう。


「空へ逃れば、脅威ではない」

「逃げられた! …………ってイテテ! あぁもう、お前ら邪魔だ!!」

 肩のツノと頭のツノに突き刺さったまま、剣をぶつけるスレイジェルを払い落とし、斧で打ち砕く。

 その隙にバタバースケイプはボウガンを引き絞り、先と同じ様に大量の矢を撃ち放った。


 クラッシュウォリアーの分厚い装甲は矢を防ぐものの、いくつかが装甲の隙間に突き刺さる。


「いったぁ!? こ、このままじゃ反撃も出来ない! 降りて来いよ、ずるいだろ自分だけ飛びやがって!」

「これを使いなさい!」


 射撃の雨から逃げ出し、蒼葉から投げ渡されたものを受け取る。

 人間が持つには少し大きいライフルだ。銀色の銃身に鮮やかなグリーンのラインが走り、美しい外観をしている。



 しかし、桜はライフルを持ったまま呆然と立ち尽くしている。

「…………?」

「貴方まさか…………」

「い、いやいや! 銃の撃ち方くらい知ってるって! …………う、うん、知ってる、知ってる」

 まるで自分に言い聞かせる様に呟き、桜は銃を見回す。

「……ここ押すと弾出るんだっけ?」

 トリガーを適当に引くと、エネルギー弾が1発放たれた。しかしバタバースケイプの頭の上を通り過ぎていく。

「? い、いやいや、今のは練習……」

「…………っ!!」

 絶句する蒼葉。そんな2人の様子を、バタバースケイプはつまらなさそうに見ていた。


「裁きの時だ」

「っ!? か、身体が……!?」

 突如、クラッシュウォリアーの関節から大量の鎖が現れ、上空まで引っ張り上げられる。


 眼下に広がる街並みが見る見るうちに小さくなっていく。


「わぁぁぁぁぁ!! 高い高い高い!」

「墜ちよ」


 雲が眼前に迫った所で鎖は消失。桜の身体は真っ逆さまに落ちていく。

 クラッシュウォリアーの重装甲でも、ピュアフォームの身軽さでも、この高さから落ちれば助からないだろう。

「これは本当にまずい……何か、何か……ん?」


 ふと、紅葉から貰ったコネクトチップの存在に気づく。

 これに賭けるしかない。桜は直感を信じ、クラッシュウォリアーを抜いてそのチップをプラグローダーへ接続した。


《Shoot Air Raider》


「どうか、空を飛べる奴でありますように!!」


 プラグローダーを閉じ、その姿が変化した。


《強襲空撃 穿てターゲット One Shot Break Down!!》


 背中には鳥の翼の様なスラスターが一対、猛禽の様な鋭いフェイスアーマー、胸部と脚に現れた小型バーニア。


 飛行戦と射撃に特化した形態、「シュートエアレイダー」フォームである。



「ああああありがとぉぉぉ紅葉!!!」



 心の底からの感謝を叫び、桜は空へと飛翔する。

「何? 人間が空を?」

 バタバースケイプが困惑する中、桜は蒼葉から預かったライフル、「マイティライフル」を向け、撃ち放つ。

 高速で連射された弾丸はバタバースケイプの身体を大きく押し退ける。

「人間風情が!」

 反撃にボウガンを撃つが、シュートエアレイダーの眼には弾道がはっきりと見えていた。全て紙一重で躱し、至近距離まで接近。

 そこに来て、桜は銃側部のレバーの存在に気がついた。


「パワーとラピッド? 成る程、なっ!!」


 迷わずラピッドまで引き、バタバースケイプの腹に連射。腹に大きく焦げ跡を刻む。

 更に今度はレバーをパワーの方へ押し込む。一瞬で背後に回り、背中に収束した熱線を叩き込んだ。

「うぬぉぉぉっっっ!?」

 翼を焼き切られ、落下していくバタバースケイプ。


「落ちる気分を少しは味わえよ」


 桜は「マイティライフル」へシュートエアレイダーチップを挿入。


《Shoot Air Raider Standby》


 銃口にエネルギーが収束していき、シュートエアレイダーの全身のスラスターとバーニアが噴射。発射態勢に入り、翼を広げた巨鳥の様になる。


 そしてエネルギーが収束し切ったのを確認し、トリガーを引いた。



《Update Complete Shoot Out……!!》



 無数のエネルギー光弾がバタバースケイプに命中。その体を空中で拘束。

 そこへ更に一際巨大なエネルギー光弾を発射。回転しながら高速で飛翔した弾丸は、バタバースケイプを撃ち抜いた。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ@/#*%<8$#」


 爆散し、破片が飛び散る。それらが地面に落ちる前に、その全てを撃ち抜いた。



「ふゅぅ〜」

 気の抜けた声と共に地上へ降下。


 丁度そこには、山神と睡蓮、そして写見の姿があった。

(ん? 何で写見がいるの? まぁいいや)

 座り込んでいる3人の元に歩み寄り、手を差し出した。



 その時だった。



「桜……?」

「…………へ?」


 睡蓮は確かに、自分の名を言った。目の前で変身を解いたわけでも、肉声で喋ったわけでもない。分かる筈がないのだ。



 睡蓮の前で嘘は通用しない。それは百も承知だった。だが今回はそんなレベルのものではない。



 手を差し出したまま、硬直していた時だった。



《レールガンプログラム》


 背後から僅かに聞こえた音をシュートエアレイダーの感覚が拾い上げた。その方向へ反射的に「マイティライフル」を撃つ。



「きゃっ!!?」

 弾丸は蒼葉の目の前で何かと衝突し、爆発。蒼葉の身体を大きく吹き飛ばした。

「蒼葉っ!!」

 地面に落下する寸前で彼女を抱き止める。



「忌魅木…………借りを返しに来た」



 目の前に現れたのは、以前桜を打ち倒した青年、彼岸だった。

「お前は……!!」

「……変身」


《Scar Avenger!!》


 そして、スカーアヴェンジャーへと変身。


 再び、両者が相見えた。



続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ