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あのあと、お土産のお礼と直接渡さなかった文句を言いに来た龍ちゃん以外には誰にも会わず、数日が経った。ずっと部屋にこもって課題をしていたので今やっているワークで夏休み課題は最後だ。それに筋トレも毎日しているので多少引き締まっていると思う、このまま続ければふくよかになることはないだろう・・・痩せすぎも駄目だけど、いいバランスを目指そう
「にしても1人って楽だー」
クーラーの効いた部屋で椅子に座ったまま腕をぐーっと上に伸ばす。いやあ快適快適!
今現在この広い屋敷には人がいない。なぜなら今日から父、雪さん、紫音さん、龍ちゃんで家族旅行に行っているからだ。私は父を除く3人には誘われたが丁重にお断りした。付いていったところで父から厳しい目線を頂くだろうし、私自身の機嫌も急降下すること間違いなし。雰囲気を悪くしたくないしね
それに私がいら立って八つ当たりをしてしまう、なんてことがあればそれこそ破滅の始まりな気がする
家で自分の学力と体を磨くことの方がよっぽど有意義だ。
因みに龍ちゃんが最後までしぶとく誘ってきたがお土産話聞きたいなーといえば渋々ながらも納得してくれた、良い子だ。
彼について作戦会議を開いてはみたのだが、今のところ私にも懐いてくれているみたいだし、殺されることはなさそう。気を付けることといえば私と仲良くして父から何か言われないかが心配なので父がいる前では馴れ馴れしくしないことくらいだろう。遊びにくる頻度も気を付けてほしい
いやー、でも今のところ特に何もなく順調だな、ぜひこのまま高校、卒業、勘当までいきたいものだ
将来結婚しそびれたらもう一度研究職に就くのも悪くない。そうしようそれがいい
ぐぅ
そんなことを考えているとおなかが小さくなった、時計を見てみるともうお昼近い、考え事をしていると時間が経つのが早いなあ
厨房にでも行ってごはん作ろうっと、椅子から降りてクーラーの電源を切ってから部屋を出る
何時も私の部屋付近には人がいないけど、この広い屋敷の中のどこにも人がいないというのは不思議な感じ
厨房に入って冷蔵庫を見ると食材はそこそこ入っていた。まあどうやって使えばいいのかわからない高級食材もあったけど、そこらへんは無視無視
ささっと炊飯器に米をセットして早炊きで炊飯する。簡単に作って食べよう、そうだオムライス食べたい、オムライス作ろう。ふわふわのにしたいけど成功するだろうか?前世でも1度だけ上手くいったことがあるくらいだからなあ
野菜と肉を切ってケチャップで炒めてご飯が炊きあがるのを待つ
ガチャ
ん?ガチャ?
音のする方を確認すると見慣れない私服の男性、誰だ?強盗?いや、流石に強盗にしてはラフすぎるし、人がいないとはいえ簡単に入れる警備システムではない
よくよく確認すると髪型こそ違うけれど無表情と三白眼に見覚えがある
そうかオールバックにしてないとこういう髪型になるのかー・・・って
「暁・・・?」
何でいるんだ?!ってそうだここに住んでる!忘れてた!今回家族旅行だから暁のことも置いていったのか!見送りとかしてないから知らなかった・・・というか、この感じだと暁にも私が留守番してること伝わってなかったのか!
無言で二人見つめあう感じになってしまっているがどうしたらいいんだろう・・・
丁度その時炊飯器の音が聞こえてはっとする、そうだご飯を作ろう、暁がいたところで何も気にすることはない。ご飯食べて引きこもったらいいのだ
杓文字を濡らして炊飯器の中の米をかき混ぜ、フライパンに米を入れるために炊飯器からお釜を取り出そうとしたら後ろから手がぬっとでてきた
「っぎ!!」
叫びそうになるのをすんでのところでこらえた、危なかった・・・もう少しでお嬢様とは思えない声が出るところだった
そっと後ろを振り返るとオフバージョン暁さん。あ、お釜もってくれたんですねありがとうございまーす。じゃない、違う違う
「暁、いきなりどうしたの?」
「いえ、私がお作りいたしましょう。お嬢様はそちらでおくつろぎください。」
暁が私を机に案内していこうとするのを止める。何故この超人使用人は働こうとしているのだ
「大丈夫よ、私でも作れるわ。暁は下がっていなさい。」
「いえ、しかし・・・」
「しかしもかかしもないわ!あなたも夏休みなのでしょう?だったら休みなさい。私も自分の面倒くらい自分で見れるわ。いい?これは命令よ、あなたが座っていなさい。」
何時も使用人に指示を出し、主人たちの面倒を見、様々な仕事をこなしているのだ、超人とは言え疲労もたまるでしょう、偶には休んでいただきたい。過労で倒れられても困るし、サービス休日出勤、駄目絶対
ぽかん、と突っ立っている暁を椅子に座らせ昼食づくりを再開する
何時も頑張ってくれている使用人頭にもオムライスを振舞ってあげようか、自分一人だけ食べるのも申し訳ないし。
ご飯の量も増やし再度作り始める、困ったように此方を見る暁なんて見えない知らない気にしない