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新たな家族との出会いから早3日経つがご飯を用意してくれる使用人に合う以外私は誰とも会っていない
私が部屋に引きこもって勉強や筋トレをしていることもあるが、基本的に皆こちらの部屋の近くには近寄らないし、ご飯も1人別室で食べているからだ。悲しい。
まあ以前の私だったら基本的に無表情か不機嫌そうな顔、突発的に我儘や癇癪を起こす子供だったから腫物扱いされているのだろう
「・・・・・・ごちそうさまでした。」
朝食を食べ終え、使用人に片づけを頼んで部屋へと戻る。今日は勉強の前にこの間片付けたおもちゃを売るものと残すものに仕分けて売りに行くのだ!ちょっとはお金になるしね!
「・・・・・・何故?」
意気揚々と自分の部屋の前まで行って目の前の光景に立ち尽くす
わが義弟の龍太さんが私の部屋の前で居座っているではないか・・・え?まだ君のお姉ちゃんには何もしてないよ?ほんとだよ!
心の中で言い訳をしながら隠れて様子を伺うが、壁にもたれかかった彼もそこから退く気配がない・・・仕方がない
「ごきげんよう、龍太さん」
「・・・ん?あーゴキゲンヨウ?」
意を決して声をかける。前世の私はごきげんようなんてキャラではないが東雲零は一応お嬢様だから、たとえ社交場に出ることなどなくても家柄というものはあるのでそういった教育は少しだけさせられた
一方龍太さんは元は一般家庭なのでそういった教育はこれから力を入れていくのであろう、片言で目をそらしながらぼそぼそと返事を返してきた
「そこは私の部屋なのですが、何か御用でしょうか?」
「別に、アンタに用があるわけじゃないよ。逃げてただけだもん。」
ぶすっと不機嫌そうにしている顔は年相応で可愛らしい、義姉としてはそのまま可愛らしく育っていただきたいものである。
「そうでしたか。では私は失礼しますね。」
彼の前を通り過ぎ部屋の戸を開けて中に入るとそれと同時にさっと入室してきた、アンタは猫か!!
あまりの素早さに呆然としていると、わが物顔で入ってきた龍太さんが自由に歩き回り始めて部屋を眺めた後、触り心地のいい大きなクッションに座ってくつろぎ始めた、自由だなオイ・・・
思わず口の端が引きつりかけながらも少しの小言位は言ってもいいだろうと龍太さんに近づく
「あのですね、「ピンクだけどなんもない部屋だね、紫音ちゃんとは大違い。」・・・そうですか。」
人の言葉に被せるように話しよってからに・・・!キョロキョロと部屋を見渡しながら少し楽しそうにしている姿は13歳にしては幼い気がするがまあ攻略時にはそこも1つの魅力で彼の成長していく姿はお姉さま方から人気があったようだ
そういえば彼との選択肢では叱ることと褒める事の程度が難しく、攻略キャラでも中々苦労した。
叱りすぎると仲が険悪になるし褒めすぎると甘えが出すぎてダメなのだ
私は攻略する側ではないので好感度選択し云々を気にする必要はないが、これ以上家族に当たる人に嫌われるのは嫌だし、本編の他に死亡フラグを建てることもしたくないのでそんなに怒らないようにしよう
なによりに年下というのは可愛いものだ、前世でも弟と妹がいたが全然甘えてくれなくて姉としては悲しかった。
前世の弟と妹をなだめていた時のように同じ目線になるように正面にしゃがみ込んだ。そのまま人差し指で額を軽く押した
「逃げてきたのはいいですけど、女性の部屋に無断で入り込むものではないですよ?」
「えー、でも逃げたかったんだもん。」
「一言断りを入れたらいいんですよ、入ってもいいか?とか。」
「・・・・・・・・」
不機嫌そうな顔を隠しもせずむくれる龍太さんの眉間のしわをぐりぐりと伸ばして頭をなでる
「・・・・・うん、わかった。」
おっとこんなにも聞き分けがいいとは驚きだ。
「龍太さんはいい子ですね。」
そのまま頭をなでると嬉しそうに身を寄せてきた、もっと撫でてという猫のようだ可愛い
そうだ、こうやって怒らせないようにいろんな人と軽く仲良くできるのならしていきたい。ただし父親はry(以下略)
あ・・・でもこうやって仲良くするのをあの父はよく思わないだろう、ふむどうするべきか
「えへへ!ねえねえ、お姉ちゃんって呼んでもいい?」
「ん!?んーそれは・・・」
「ダメ?」
小首をかしげながら聞いてくる可愛い義弟。あざと可愛い。これがわざとなら将来は大物になりそう・・・あ、将来微ヤンデレか
「い、いよ、うんいいよ。」
「ほんと!やったー!じゃあ僕のこともさんなんてつけずに呼んでね!龍って呼んでほしい!」
さっきまでの生意気そうな子はどこへ行った?!そしてなぜこんなに簡単に仲良くなってしまったのか?!いや仲良くなりたいとは言ったけどここまでとは思ってなかったし、まあ可愛いんだけど・・・ってそうじゃないそうじゃない、父にばれると面倒くさそうだし、主人公の攻略キャラだしどうする?!てかそのニックネームは主人公に懐いたときに呼んでねって言ってたやつでしょ!なぜ私に言う!!
「あーじゃあ龍太さ「龍」・・・龍さ「龍」・・・龍ちゃんで!!お願いします!」
「うん、それならいいよ。あと敬語もやめてよ。」
ご機嫌な様子でクッションに身をゆだねる龍太さん・・・もとい龍ちゃん、帰る様子もないようでどうしよう
「えーとまだしばらくこの部屋に・・・「いる!」そっかあ。」
まだ居座るらしい、どうしようこの状況。とりあえず父にだけはばれると面倒くさそうだだからばれたくない。でも彼を無理に引き離すのももっと面倒くさそう、てか怖い。不機嫌になった挙句子供特融の残酷な仕打ちを受ける気がする。ゲーム知識でいえば
とりあえず、しばらくはいてもらって今日の夜にでも早速作戦会議を開くことになりそうだ
楽しそうな義弟を見て思わず遠い目をする、どうしてこうなったのか・・・