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僕のホッケー青春記  作者: 緑沼あきら
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最後の夏のおわり4

撮り終えると彼の元にさっきキーパー陣の写真を撮っていたF君の母親が駆け寄ってきてF君越しに彼にお礼を言って言っているようであった。


彼はF君の母親の言葉に対し少し歯を出し顔を緩め、右手を首のうなじに回しながら何度も頭を下げていた。


その後、そばにいた一緒に写真を撮った後輩キーパーの肩を手でポンポンとたたきながら「次はお前らの代だから小学校からやってるやつらを叩きのめせるように頑張れよ」と精一杯頬を緩めながら先輩としての気遣いを見せていた。


だけど、その彼の言葉は自分は小学校からやっている奴らに勝てなかったんだという事実を自分自身に突き付けているようでもあった。


やはりまだ煮え切らないものがあったのか彼は会話に一区切りつくと逃げるようにその場から離れた。


負けたけど前の代から正キーパーとして活躍できてやりきった上で来る笑みとようやく先輩が引退して自分たちがメインで試合に出られるチャンスが巡ってきた上でくる笑みを目の当たりにしてしてしまったのだから。


彼の周りはみな引退してやっとハードな部活から解放されてその余韻に浸っている選手とそれらの選手と気持ちを共有する試合に出られなかった制服を着ている同級生たちであふれかえっていた。


彼らは各々で最後の記念にとあちこちで笑みを浮かべながらスマホの自撮りなどで撮っていた。


彼は建前でも笑みを浮かべたりして周りと上手くこの場を合わせることが出来ないことを葛藤しているようであった。


でも、そんな中で彼に駆け寄ってくる制服を着ている同級生がいた。


その二人とはホッケー部の中でも仲が良かったのか彼の表情は先ほどの重い表情とは打って変わって本心から少しだけ頬を緩めて笑みを浮かべていた。


二人のうちの一人がさっき彼が後輩キーパーにしたように何度も肩をたたきながら彼に笑みを浮かべながら声をかけていた。


彼はその言葉に対し唇をきつく締めながら首を何度も頷かせていた。


話がひと段落つくと彼らは近くにいたF君も呼んで四人で肩を組んで写真を撮った。


またF君の母親がスマホをかざして撮っていたがこの時の彼は少しだけ歯を出しながら笑みを浮かべていた。


この時はさすがの彼も周りと同じように仲間と一緒に部活の引退の解放感に浸れていたのかもしれない。


だが、その彼のほんの少しの解放感を打ち崩すように顧問の先生と思われる人が

「あと20分で電車来るから選手の人たちは早く着替えて駅に向かってくださーい」と両手でメガホンを作りながら大きな声で言った。







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