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僕のホッケー青春記  作者: 緑沼あきら
2/4

最後の夏の終わり2

そんな中、1番遅く開始線に整列した選手がいた。


彼は全身に防具をつけてヘルメットを頭上にのせながら重い足どりで開始線に整列した。


そう、彼が僕にこの試合を見に来て欲しいと言った張本人だった。


彼は向かい合っている敵チームの選手の顔が見えないくらいに顔をうつむかせていた。


整列して礼が終わると両選手たちは観客席からみて手前の位置にあるギリギリ見えるか見えないかぐらいのところにあるベンチに戻っていった。


と、選手の様子を1人1人見ている内に虹色の縦のストライプがついている服を着ている審判3人が試合開始線に立ち、それに合わせて選手たちはぞろぞろと開始線に足早にいき整列した。


実際、体つきもよくみてみるとほとんどの選手がユニフォームをピチピチに着こなしていて胸板のラインが浮き出ているのがよく見えた。


僕はその光景を目を見開きながらみていた。


素人の僕にはその光景はほぼ同い年同士の試合ではなくまるで日本代表チームと普通の高校生チームが試合をしていたかのように見えた。


だが、僕は彼が言っていたことをふと思い出した。


「ホッケーが強い高校ってほとんど小学生とかからやってる化け物みたいな人たちばかりなんですよ」


今日の相手はその化け物の高校の中で日本一に近い実力をもつところだということも彼から聞いていた。


それと同時に僕の前の席にまとまっていた制服を着ている彼の後輩の人たちが一斉にそばにある階段を降りて行った。


僕は彼に会おうと思い、足を踏み出そうとしたが今はいいかなと思いとどまった。


少しすると観客席の真下ら辺からガヤガヤとたくさんの人の声が入り混じったような声が聞こえてきた。


その声は5分くらい続きその後、何かに憑かれたかのように打って変わって静まり返った。


僕はその静けさに一瞬どきっとして決して声をだすまいと両手で口を覆ったがコーチと思われる数々の修羅場を乗り越えたような堂々とした声が聞こえてくると僕は両手を口から離した。


そして、僕は不謹慎だと重々承知しつつも敗戦した最後のチームの声に耳をそばだてた。


「…結果は5対1と負けてしまっ…だけど前のインハイ関東で…勝てたことは誇りに思うべきだし、一生の財産になる…」


「…高校三年間…ホッケーに.…ここまでの…結果…」


「…試合では…」


話に一区切りつくとコーチの声色が2回くらい変わったので複数のコーチが話しているのが分かったが聞いているうちに自分が立ち入ってはいけない領域だと思い耳への神経を緩めていく自分がいた。


彼は今どんな面持ちで聞いているのだろうか…


しばらくしてコーチたちの話が終わったのか下では先ほどまでとは打って変わって大人と子供の境目にいる高校生の男たちの少し幼さが残っているガヤガヤとした騒がしい声が聞こえてきた。


上に進める大会とはいえ引退試合も兼ねていたからか試合に負けた後とは思えないくらい下はうるさかった。


高いところから耳をそばだてて聞いているので会話の全容が聞こえるわけではないが

「やっと終わったー」

「これで引退できる」

なんて声がどうやら多数派を占めているようだった。


果たして彼は今どういう心境なのだろうか。


引退という二文字を自分の中に受け入れられているのだろうか?


いや違うなと僕は直感的に思った。


その後全体で記念写真をとっているのか下からカメラ、またはスマートフォンのシャッター音が間髪入れずにカシャカシャと長い間鳴り続けていた。


その音が鳴り止むと僕は下に降りる準備を始めた。


階段は60度くらいの角度があったので僕は転ばないように慎重に足を歩ませながら降りて行った。


観客席からおり地上に着くとオレンジ色のユニフォームを着ている彼のチームの選手たちは各々でコーチや制服を着ている試合に出られなかった同級生や後輩たちと写真を撮っていた。


ぱっと見渡す限り最後の試合とはいえ泣いていたり、腸が煮えくらないような神妙な面持ちをしている選手はいなく、みな笑顔でスマホに向かって笑みを浮かべていた。


ほとんどの人はここまで一つのことに長い時間を費やしたことに悔いはないんだなぁと僕は彼らを表情を見て顔を頷かせながら思った。


僕は彼を探そうと各々選手たちが写っている写真の背景に移らないように背中を少し猫背にしながら選手やチームメイトがいないわずかな隙間を歩いて行った。


写真を撮っている選手たちが密集している場所を抜けたところに試合前のアップなどで使うと思われる人工芝の小型のサブグラウンドが二つあった。


グラウンドの奥には横長のサッカーゴールを横に縮小したようなホッケーゴールがあり、その前に彼はいた。


















































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