第二話:オオカミと王子
この町には王子がいる。
世界中の勢力を簡単に分けたとしても3つ。その他小さな勢力があり、常に戦争状態。
この町はというと、3つの中でも最も大きい勢力に入っている。
町の中央に城。その周りを囲むように城下町が広がり、西の端に森がある。
しかし、王子がいるのにも関わらず大きい町。とは言えない。
はっきり言うと小さい町だ。戦場の最前線からほど遠い。
そんな田舎町になぜ王子がいるのか。誰も聞いたことがないらしい。どうでもいいけれど。
「お婆さま、お城が見えてきましたよ」
「・・・」
あれぇ?どうしてこうなった?
なんで俺は城に行かなくちゃ行けない?
「お婆さま?」
「え?だ、大丈夫よ?喉イタイワー。ゴホッゴホッ・・」
何を間違った?この娘が食べたいって思ったからか!?
逃げ出すチャンスをうかがわなくては・・・
大きな門をくぐり、馬車が止まる。直ぐ様、城に使える執事らしき男がドアを開ける。
「ご到着致しました。どうぞこちらへ」
言われるがまま城の中へと案内される。そのままひとつのドアの前で立ち止まった。執事がドアを開け、その部屋の姿が目に入ってくる。
豪華絢爛な壁紙と床。いかにもという感じのシャンデリアに、大きな絵画がいくつもあり、部屋の中央には細長いテーブルが置いてあった。その奥の椅子には、赤ずきんを呼び出した張本人が笑って迎え入れてくれた。
「初めまして、赤ずきん。お見知りおきを」
「い、いえ・・こちらこそ。光栄です。」
「そういってもらえると助かるよ」
赤ずきんを呼び出した張本人 王子
金髪の少し長めの髪が縛ってあり、『王子』の名にふさわしい豪華な服装をしている。隣のみずぼらしい赤ずきんと比べるとよりいっそう。
赤ずきんとの会話を終わらせると、王子はこちらを向く。
「あなたが赤ずきんの祖母ですか」
「え、ええ」
違うけどぉ
「お会いできて光栄ですよ。ずっとお会いしたかったから」
「え?」
会いたかったのか?この婆さんに?
「あの、王子様。なぜ私はここに?」
「安心して赤ずきん。特に君が何かしたという訳ではないから」
「はぁ・・ではなぜ・・・____」
ぐううううぅぅぅーーーーー。。。
「あ・・あ、あは。オホホホホ~失礼~(裏声)」
「・・ハハ__まずは食事にしようか」
________________________
フゥーーーーーーーーーーーー・・・・
食ったよ満足してます
肉が野菜がいいよb
「口にあったかな?」
「そいつぁもちろん!あ、もちろんですわ」
「フフ・・満足してもらえて光栄です。では、本題へ移ろうか」
そういやそんな話だったねーどうーでもいーーよねー
ご飯美味しかったもん
「単刀直入に言おうか。赤ずきん。僕と結婚してもらいたいんだ」
「・・・・・・・ふぇ?」
あ?なんだと?
この娘が王子と結婚?なんで?
「あの・・・全然理解ができないないのですが?」
赤ずきんが物凄くパニクっている事が目に見てわかる。
「実はね、僕もそろそろ結婚のことを考えていたんだが・・どの相手もピンとこなくてね。そうしたらこの間見つけたこの城の前の主の日記に記されてあった。」
前の主?10年も前の話じゃないか。
「その日記には、主の妻。つまり王妃が西端の森の中に住んでいると記されてあった」
え?もりのこや?そこに住む女っつったら・・・
ちょいちょいヤバいよこれ?
王子が再度こちらを向き、笑顔で話した。
「ええ。その方こそ、あなたではないですか?元王妃よ」
えええーーーーーーーーーーーーーーー!!!??
俺が食べたBBAって王妃ぃーーーー!?えーーーーー??
どうしよう。成り済ます?ここを切り抜けて脱走しても王妃殺しでオオカミ疑われちゃわない?いや、城の中でいなくなれば人の手によるものだと考えられるぞきっと。
「え、ええ。そのとおりですわぁ」
「そうだったのですか!!?お婆さま!なぜ今まで黙って・・」
「話したところで何も変わりませんもの」
この場を切り抜ければ勝ち。この場を切り抜ければ勝ち。この場を切り抜ければ勝ち。この場を切り抜ければ勝ち!!
「王妃の孫娘ならば私の相手にもふさわしいと思いましてね。いかがですか?赤ずきん」
「えっと、私は・・・」
チラッとこちらを見たと思ったらまた同じ場所を見て弱々しい声で話した。
「少し・・考えさせてください。すみません」
「・・・いえ。こちらこそ、突然の話だからね」
そういって王子は、執事に指示をして俺と赤ずきんをベットが2つある客用の部屋へと連れてこられた。
ようやく一息つける。が・・
「・・・」
赤ずきんが物凄く難しい顔をしている。
嫁になりゃ金持ちの贅沢な暮らしができるのに
何を迷ってるんだこいつ?