第一話:オオカミと赤ずきん
____コンッ、コンッ。
!!? やっべ。誰か来やがった・・。どうする?くっそ、こうなったら・・・
「あの~、お婆さま?私です。赤ずきんです。パン持ってきましたよ」
ギィ~っと立て付けの悪い木のドアがゆっくりと空き、そこからひょこっとかわいらしい、赤い頭巾をかぶった女の子が現れた。
俺はついさっき、この子のおばあさんであろう人を食べ、この小屋で休憩をとっていたところだ。
だが面倒くさいことに、突然の訪問者に驚き、とっさにおばあさんの衣服で変装している。という状況である。小屋に入ってこの子が叫ばない、ということはなんとか騙せている・・・ということか?
へへっ、さすが俺。このままやりすごしゃあ・・
「あの、お婆さま?どうかしたのですか?返事も返してくださらないなんて・・」
返事!?返事だぁ?こんな太ってぇ声で返事したらバレちまうだろぅが!
「・・もしかして、喉を痛めていらっしゃるのですか?」
!!! コクコクッとうなずく。
「やはりそうでしたか。気が回らず、申し訳ございません。」
フゥ~~~~・・やり過ごした・・・。これでしゃべらずにすんだぜ。
にしてもさっきからこいつ、動きがぎこちないな。手持ちの杖・・・
こいつ・・・目が?完全にわけじゃなさそうだが、まぁ都合がいいからいいや。
さて、どうっすかな・・。このまま帰るのを待つか、いっそ食っちまうか?じゅるりそ。
でもこんなちいせえガキを食ったら、町で捜索願がでて、あげくにゃオオカミの討伐。なんてことになるかも・・・。したらめんどくせえな。
「パンとワイン。ここに置いておきますね。」
じぃ~~~~~っと・・・
やわらかそうな太もも。張りのある肌。ほどよい肉質。じゅるりそ。
っや~~ぱり食べちゃおっかな^^そのあと森でてけばいいし。
そんじゃま。き・ま・り♡
ちょうど後ろ向いてる今がチャンス・・・
______コンッコンッ。
なにぃ!?
「はい?どちら様ですか?」
赤ずきんがギィ~っとドアを開ける。
そこには十数人の兵士たちが列をそろえて立っていた。
「失礼。町の者からこちらに「赤ずきん」がいると聞いたのだが、あなたで間違いありませんか?」
「は、はい・・」
「我が国の王子があなた様に直接話がしたいとご命令がありました。ご同行願いますか」
なに?王子がこの女に?・・実はこの女、大物犯罪者とか?
つーか、俺!こいつのこと食べようとしてた!?あぶねぇ・・食欲おそるべし。
っま。これでこいつはいなくなるわけだし、パンとワイン持ってかえろっと。
「中にいらっしゃるのはご親族の方ですか?」
「はい。祖母です」
「親族であるならば、一緒に来ていただきたいのですが」
「ハァ!!?」
ッハ。しまった。声を出してしまった。バレちまったか?
「お婆さま。喉を痛めていらしたのでは?」
「え!?バレてな・・ぃゃ。治ったのかしら?(裏声)」
この女。相当な鈍感娘なのか?やばいよ?
「それはよかったです。お婆さま一緒にお城に向かうことになったのですがよろしいのですか?」
・・・ここで断ったら変に怪しまれるか?こいつ(赤ずきん)は騙せても外にいる兵士たちはわからんし。
!待てよ、城っつったらやっぱ、豪勢な食事?果物とか?いけんじゃね?やばくね?
ッフ。仕方ない。バレたら全員殺そう。
「一緒に行っても大丈夫よ(裏声)」
「そうですか。わかりました。では行きましょう。お婆さま」
「馬車を用意しました。どうぞお乗りください」
随分と丁重な扱いだな。罪人ではなさそうだな。この国の王の用ってなんだ?
ぐうううぅぅ~~~~
「まぁ、お婆さまったら」
控えめに笑う赤ずきん。
腹減ったな。