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破壊の種  作者: おにび三条
とある医者
10/52

9


「ミミズクさん」

 アルスは地下街の果ての旧拘置所へ来ていた。旧拘置所に常に居座っている情報屋・ミミズクに会うためだ。ミミズクという男はフクロウ遣いで、フクロウを用いた情報収集を得意としているらしい。

「ミミズクさん」

 漆黒のローブで顔も体も隠し、皺だらけの真っ白い腕だけが唯一見える。フクロウがアルスの大きな目に捉えた。

「・・・・・アル坊か・・・・」

 老いて掠れた声が留置所に響いた。地下街はいつでも寂れ、地上の乾燥を過剰に気にする者以外は進んで訪れようとする者が少ない。

「ミミズクさん、お久し振りです。今日は人探しで・・・」

 幼い頃にレーラと来たときは、もっとくだらないことを訊いて遊んだものだ。好きになれない城の者の弱味を訊いたり、どうすれば監視の目をくぐって外に出られるかなんてのを訊いた。

「なんだ。言うてみろ」

「フードの子、なんですけど…多分女の子。それで無職…」

「…無職、か」

 ミミズクが低い笑い声を出す。珍しい。情報屋は無職の扱いになる。料金の発生があってもだ。国が認めない職業は、無職なのだ。

「思い出してみろ」

 ミミズクの長く黒ずんだ爪を生やした骨と皮だけの血の気の失せた掌がアルスの頭に翳される。アルスは言われたまま、種上げの儀式の日のことを思い出す。

「無資格の召喚士だな。生まれは…王都ではない。現在地は割れておるよ。城門東側の区の川沿いのすぐ近くに住んでおる」

「近いんですね!ありがとうございます!」

 顔を隠し、猛禽類を自在に操るミミズクは威圧感も凄く、初対面なら怯えてしまってもおかしくはない。けれど、昔からの付き合いでアルスはミミズクに懐いている。気まぐれに昔話をすることもあった。

「あと、これ、ほんの気持ち」

 アルスはここに寄る前に買った、真っ赤な林檎を2つ置いていった。ミミズクの肩に乗ったフクロウがきょろきょろと忙しなく動き始めた。


 無職のフードの者に会ってオールのもとに連れていかなければ。喜ぶだろうか。朝に外へ出かける際に見かけたオールは疲れ果てたような表情だった。相変わらずの無表情。寝ると言っていたが、寝ていないのが分かった。

 アルスは元来たみちを辿る。地下の街は地上の光を借りている。いくつか天井に格子のようなものが空けられて、そこから陽射しが差し込んでいるのだ。閉めることはできないため、雨の日は地下の街も濡れた。それでも地上の街同様、賑わっている所はある。革細工や安い銀を加工したアクセサリー、占いなど地下で商売する者もいる。

「あの、アルスさん」

 地上の街へ出る階段を登ると、本屋のすぐ脇の道に出た。よく呼び止められる日だな、と思いながらアルスは呼び止めた主を探す。

「オールか」

 昨晩と同じような軽装をしている。

「何してるんだ?」

「雑記張を買ったところです」

「そう…昨日は寝られたのか…?」

「はい。よく眠れました」

「隈できてんぞ」

 オールは言われて目を擦る。唇の色もよくない。それはいつものことだったろうか。

「寝られないなら今日から夜に酒頼もうか?」

「いいえ、お酒は遠慮しておきます。寝たつもりだったんですけれど」

「そうだ、フードの子に会えるかもしれないんだ。…でもその様子だと、帰って寝たほうがいいぞ」

 オールはアルスを見上げた。日光に照った綺麗な橙色がアルスの瞳とかち合う。

「心遣い、ありがとうございます」

 表情の変わらない顔は口と眼球だけ動く。

「いやいや。城の枕って寝づらいんだよな」

 手を振って、アルスはオールと別れた。

 

 太陽神の子として育ってきた。


 太陽神の子をやめようとして、婿をもらおうとした。


 太陽神の子を辞められる唯一の手段。ある一定の条件を満たす者と結婚すること。

  

 太陽神の子の自分を、両親は嘆いた。


 太陽神の子は自由の身にはなれない。だからこその名誉。それでも親は一人の娘としての幸せを願ったから。


 ある日、婿になる予定だった少年は不慮の事故で命を落とした。  


 周りの目は冷ややかだった。生まれながらに与えられた使命を放棄しようとしたのだから。国を捨てようとしたのだから。

  

 それでも友人がいたからこの場に留まれた。


 太陽神の子は、国を守るために生まれた。


 王子の投げた「平和の種」を開花させるために。


 一度辞めようとしてしまった罪は重かった。人ではいられなくなった。


 人ではなくなった証に、周りからはまた期待の眼差しが向けられた。逃げようと思った。この場から去ろうと思った。


 それなのに。


 婿になる筈だった少年の仇のはずの友人が…




 朦朧とする意識の中、セレンは唇を噛んだ。

 額が疼いた。地面に片頬をつけ、広がっていく赤い液体を見つめる。

 ああ死ぬのか、とセレンは他人事のように思った。配偶者になる筈だった少年のもとに行くのだ。

 一緒に戦った勇敢な青年は大丈夫だろうか、と思い出す。

 咎として与えられた人でなくなった証、太陽神の力ならおそらく大きな化物を吹き飛ばせるかもしれない。この王都ごと。いや、使えるわけがない。セレンは否定した。もう、自分は太陽神を裏切ったのだから。

「セレンねえさん…」

 八百屋の青年がセレンの身体を揺さぶる。

「…大丈夫」

 意識はある。命に別状は無いかもしれない。しかし頭を強打してしまった。

「セレンねえさん、逃げられますか?」

 多少の無理は仕方がない。声が出ない。頷こうにも頷けない。八百屋の青年の背後に怪鳥が映る。危ない、と言おうにも声が出ない。

「あ……ぶ、ない…」

 蚊の鳴くような声がやっと出る。

「俺が囮になって逃げ回ります。もし出来たら逃げてください。つらいでしょうが…」

 自分の力量を知るべきだったとセレンは後悔した。八百屋の青年はセレンから離れていく。怪鳥は八百屋の青年を追おうと動き出した。弱った人間を喰らうのが目的ではないのか。この太陽神の子は、人間だけれど人間ではない。自嘲的に笑った。立ち上がることも、動くこともできない。太陽神の術を使って王都壊滅なんて出来るわけがない。投げやりになっていた。セレンは仰向けに転がる。視界がぼやけた。右腕を上げる。空に浮かぶ光が網膜を焼くようだ。人々はあれを太陽神と呼ぶ。あれは神が人々を見ているのだと。そして自分はあれの子どもなのだそうだ。そういう伝承だ。あれはもうひとつの母か、父か。人間界に生んだ自分の子どもの情けなさを笑っているのか。セレンは視界に映る太陽神を掴むように右手を閉じながら人差し指で天空を指す。




 アルスは城門近くの区域に来ていた。王都の中は区で分けられ、ミミズクから示された区は人通りが非常に少ない。家は城付近の住宅より横に大きく、庭も広々としている。城から離れ、城門に近いこの辺りはあまり訪れることはない。そのため地形にも詳しくなかった。もっと詳しい特徴を訊いておくべきだったと、アルスは思った。歩き続けると川が流れているのに気付く。川は畑を両側にして流れている。水の音が控えめに聞こえ、水面は透き通り照っている。  

 ニャ゛ー!!

 猫の叫ぶような鳴き声が聞こえ、アルスは目の色を変えた。きょろきょろと辺りを見回す。頭に浮かぶ小さな生き物を期待して。「戻ってこい」と聞こえる。探していた人物かもしれない。よく覚えてはいないけれど、レーラの儀式のときに聞いた声のような気がした。畑の間の複雑に入り組んだ小道で大きめの猫の尻尾を掴む少女が目に入る。複雑に入り組んではいるものの、丈のある草は生えていないため見通しはよい。アルスは走って少女を追う。

「すみませーん!」

 アルスは叫んだ。

「おっ?」

 猫を重そうに抱え上げた女は顔を上げた。

「やっと見つけた」

 アルスは安堵の溜め息をつく。

「え~っと?確か…」

 アルスは女の子の頭の天辺から爪先まで見る。暗くなった桃色の地味な髪色。後頭部に丸められた髪を結う黒いリボン。人当たりの良さそうな柔らかい顔立ち。無職、という単語からはかけ離れた印象。

「あ、オレ、アルス・セルって言います」

「えっと、教会にいた…」

「じゃあ、君が!」

 アルスは少女に手を伸ばすと、握手のつもりだったが少女は首を傾げてからアルスに猫を渡した。

「探したんだ。あの後、君の言った医者を呼んだんだ」

 少女はアルスから一度目を逸らした。それからすぐにまた視線を合わせる。

「どうしてここが…」

 訝るような目を向けられる。情報屋を頼りにしたのだとは素直に答えられなかった。

「業の深い仕事があるんすよね。出せる情報渡して、何かトラブル起こっても責任は取れませんってやつ」

 苦々しげに少女は言った。それはアルスが何をしてここへ辿り着いたのか、大方理解している様子だった。

「それは…ごめん」

「まぁこんな無職に舞い込むトラブルってそうもないんで、いいんですけど…自分、ミーサっていいます」

「じゃあ…ミーサちゃん」

「ミーサちゃん…」

 少女・ミーサは不服そうにアルスからの呼ばれ方を復唱しただけだった。

「っていうか、繁盛してほしくないからオールのこと、あんまり言うなっていったやつ…」

 思い出してアルスは拗ねた表情でミーサに噛み付く。

「…すみませんです。細かい説明ができる状況じゃなかったんで…」

 空が一瞬光った。ミーサが空を見上げ、そのことについて触れる前に、アルスは肩を大きく震わせた。

「…雷っすかね」

 ミーサは平然としているが、アルスの顔は強張っている。雷など別に珍しいものではない。けれど、爆音や閃光に怯えたり、落雷を恐れ不安がる者も珍しくない。落雷や火事の心配や恐怖ならミーサにもある。信仰心の強い者は時にそう言ったものではなく恐れるのだが、アルスもその類なのかとミーサは思った。あれは太陽神の気まぐれなのだ。そういうことになっている。ミーサはアルスの顔を覗き込む。

「大丈夫すか…?」

 アルスはこくこくと頷いた。顔が白くなっている。ミーサは引き攣った笑みを浮かべた。

「ミーサちゃん、オールのこと教えてくれてありがとうね」

 アルスは呼吸を整える。落ち着かない様子でアルスは見慣れない風景を見回す。両脇にある畑はしっかり手入れされている。アルスの知っている地域と違って見通しがよい。土と草、肥やしの香りがした。

 ミーサはアルスの言った言葉を別の言葉で口にする。

「アルスさん」

「何?」

「雷が苦手ならそろそろ帰った方が…雨が降るとは思えないすけど…」

 ミーサは空を見上げる。気のせいじゃない。雷のように一瞬ぴかっと光った。雷鳴はしない。遠雷か。

「でも雷っぽくはないんすよね…なんだろ。魔法が暴発したとか?にしてもなんか…」

 ミーサは首を傾げながらぼそぼそと呟いている。アルスはミーサの指の先が青い光に包まれるのを見た。魔術とは違う。種上げの儀式で感じた術とも違う。天気が悪くなっている。晴れていたが、段々と薄暗くなっている。

「太陽神?」

 アルスの声音が低くなる。

「太陽神の力…なんすかね?」

 アルスがミーサの腕を急いで掴む。どこに向かうべきかアルスには分からないまま。ただセレンがいるのはこの城門近くではないことだけは分かっている。わぁ、っと驚くミーサの声も無視だった。

「どっち?どっちに行けば…ミーサちゃん!?」

 商店街に行く道と住宅街に続く道の前でアルスはミーサを振り返った。ミーサは肩で息をしながら商店街を指で差す。息切れで喋るのも億劫のようだ。ミーサは自身に回復魔法と補助魔法をかけて足を一時的に速くした。アルスの腕を振り払い、アルスの足にも同じ術をかける。

 商店街を走り抜けていく。いつの間にか体が軽くなり、よく足が動いた。行き交う人々が障害となる。頭に大きな薬草や果物を入れた籠を乗せた女性に不満をこぼされる。小柄な彼女はすぐに人影に隠れて見失ってしまいそうで腕を放せなかった。

「ちょっと、待って…!」

 ミーサが商店街の果てまで走るよう指示を出す。アルスは人と人との間を器用にすり抜けた。体格のいい男に睨まれながら、小さな女の子にぶつかりながら。ミーサの呻き声が後ろで聞こえた。


 広場にはオールがいた。対峙している、大きな陰を思わせる鳥。そして離れたところにセレンがいる。ミーサはセレンのほうへ駆け寄っていく。

「オール!」

 アルスがオールの隣に立つ。オールは万年筆を持っていた。紫の光を放っている。万年筆は軋んだ音を立てていた。魔力を溜めているらしかったが、万年筆は少しずつ砕けている。

「杖を持ってきていなくて…制御できそうにないのです」

「へ?」

「周りのものまで焼き尽くしてしまうかもしれません」

 アルスは背後のセレンとミーサを見た。さらにそこから少し離れて見知らぬ青年が転がっている。草花の多いこの広場は若者に人気のスポットだった。

「アルスさん」

 ミーサが呼ぶ。アルスの足元に古びた剣が滑ってきた。使えということなのか。アルスは手にした。古い。折れそうだが、ないよりは使えそうだ。

 怪鳥が鳴く。地面が揺れた。被害が大きくなる前にどうにかしなければならないだろう。オールの手の中にある万年筆がとうとう粉々に砕け散った。手に残るのは光だけ。それをオールは巨大な鳥へ投げる。城の窓からみた打ち上げ花火に似た音がして鳥の巨体にぶつかると火花を散らした。

「オール?」

「魔力耐性のないもので魔術を使うとこの程度です」

 オールの態度と裏腹にアルスは言葉も出ないほど焦っていた。飛ぶ鳥が相手では攻撃しようがない。

「自分があの鳥に導線繋ぐっす。そこで自分を経由して攻撃していただけるすか。制御はこっちでします」

 ミーサが叫ぶ。オールがミーサを振り返ると、静かに頷く。

「アルスさんは時間を稼いでください。おそらく彼女も私も時間を要しますので」

 アルスの返事を聞く間も置かずオールの足元が光りはじめる。円形の陣が地面に浮かび上がっていく。オールから離れるために走り出すと巨鳥の首がアルスを追う。餌を見つけたとばかりに首が伸ばされ、嘴を脆い刃が受け止める。アルスの背後から無数の矢が飛んで、怪鳥の体に突き刺さる。矢は針と大差ない。怪鳥は標的をこの場に到着したばかりの兵士たちに定めたらしかった。頼りない剣を握って、怪鳥が地面へ近付くタイミングを狙い斬りかかる。歪む震動が手に伝う。何故このような使い物にならない剣をミーサが持っているのか。連れてきた時は何も持っていなかったように思えたが。

「繋ぎました」

 ミーサの声。オールの体から青白い光が放たれ怪鳥とを繋ぐ。オールの光が一層増した。そしてミーサの繋いだ光を迸るように包んでいく。


 キュォオオ―

 

 巨大な鳥の咆哮。嘴が開き、光線が飛ぶ。弓兵を背後にして古びた剣で防ぐ。この剣が保つか分からなかった。だが白い膜が目の前に立ち塞がり、光線を撥ね返した。ミシリ、と視界が揺らぐ。それはアルスだけではなかった。空間が一瞬軋んでいた。

「っぬぬぬ…」

 ミーサが間の抜けた声で呻いた。オールの前にも白く透き通った壁が立っている。術者はミーサだった。セレンにはまた別の術を掛けている。

「つよ…い!」

 ミーサはオールに手を翳し、もう片方の手は意識を失ったままのセレンに向いている。

「ミーサちゃん…ッ」

 ミーサの頭上に、オールの足元にある陣と同じものが浮かぶ。

「もう少しだけ、弱めます…!」

 オールの額を汗が伝う。表情は変わらないが、オールと怪鳥を繋ぐ光の線が薄らいで、細くなっている。

「出でよ!出でよ!出でよ!」

 呻きながらミーサが叫ぶ。ミーサの頭上の複雑な文様の入った陣から、何かが出てくる。炎を帯びたトカゲと魚が合わさった怪物がゆっくりと陣を割り開くようにその身を現し、怪鳥に食らいつく。

「…」

 オールの光が消える。怪鳥とを結んでいた光もぷつりと切れて、消えた。ミーサが出したと思われる怪物に怪鳥が噛み付かれ、地面に落ちた。その風圧で飛ばされそうだったが目の前の透き通った白い壁に守られる。オールはただミーサを見つめていた。ミーサが座り込むと物騒な怪物も白い壁も、まるで夢かと疑ってしまうほどあっけなく消えた。

「アルスさん、お願いします」

 首をもたげる巨大な鳥にアルスは古びた剣を突き刺した。目を瞑る。ごめん、と口にしていた。粒子となって亡骸は空へ向かっていく。ごめん。もう一度呟いていた。

 弓兵たちが撤退していく。アルスはひとり、ぽつりと佇んで空を見上げていた。

「ありがとうございました」

 オールが誰に言うでもなく丁寧に頭を下げた。その声で我に返る。ミーサは無言で気不味そうにオールから顔を逸らす。セレンの方へ意識を向け、柔らかい光を浴びせたまま。わずかにその光が強まっている。

「オール、お疲れ。セレンは?」

 オールに一声かけてからアルスはセレンを看ているミーサの元へ駆け寄った。ミーサは頷く。オールはというと、もう1人倒れていた青年を看ていた。服装に見覚えがあるのだが、思い出せない。八百屋のレッドさんも無茶しますよね。そんなアルスの曖昧な記憶をミーサが察してか否か、説明的にそう言った。ミミズクに渡したリンゴを買った店だ。

「それにしても、なんで急に…」

 魔物が要塞をすり抜けて入って来てしまうということは何度か耳にしたことがある。アルスの耳に届いていないだけで他にも何件もあっただろう。だがさきほど倒した鳥ほど巨大な魔物が王都に襲撃しに来たことは今まで一度もなかった。立派な要塞があったところで空からの襲撃はどうしようもないと城で雇った魔術師たちが張った障壁を破ってきたということだ。

「儀式の影響かも知れません。精霊たちの乱れが、魔物に影響を与えているの可能性は否めません」

 ミーサが一度口を開いたが、声はオールのもので、ミーサは口を閉じた。

「そんな…」

「少なくとも、王子が目覚めない間は、こういったことは珍しくなくなるでしょう」

 八百屋のレッドにオールはミーサがセレンに浴びせているものと同じ光を当てていた。アルスは暗雲の立ち込めた空を凝視したままだった。




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