空白の冤罪
お題:生かされた始まり
制限時間:15分
もう、どれくらいの時間拷問を受けていたのだろう。
私は何もしていない、本当に何もしていない。
女性の叫び声が聞こえた、私は何事かと急いでその声のする方角へと足を向け、駆けだしたのだ。
そして、後部からの衝撃。……その後のことは何も、憶えていない。
目が醒めたら、牢獄の中に居た。牢獄から引きずり出されれば、手を拘束されて椅子に座らされた。
重々しい制服を着た警官が取り囲み、私の尋問を始めた。
私は悲鳴を聞いて駆けつけたらば、何者かに奇襲を受けたと話した。しかし、警官は聞く耳持たない。ただ、にやにやと厭らしい笑みを浮かべるばかりで、信じてくれないのだ。
そうして、尋問から拷問へと変わったのだ。
お前がやったんだろう、正直に吐けば楽になるぞ……。
彼らは、繰り返し同じ事を言う。言っては私を殴り蹴り、嘲笑った。
だが、私は何もしていない。
あの悲鳴を上げた女性はなんだったのか、どうなったのか。
彼女ならば、私の無実を証明してくれるのではないのか……警官達にそう告げたが、やはり、聞き入れては貰えなかった。
一体、私が何をしたというのだろう。
そもそも、何が行われて私がこうして拘束されているのかすら、知らないというのに。
冤罪というものは怖いものだと、何度か目にした。だが、まさか自分の身に降りかかってくるとは思わなかった。
身体中は青痣だらけになってしまった、動くと骨が軋み、身体中が悲鳴を上げる。
牢獄に放り投げられ、暫し転寝をする。
だ、直ぐに痛みで目が醒めた。再び引きずり出されて、また尋問から拷問へとお決まりの時間が始まったのだ。何日か拷問と牢獄の繰り返しが続いた。
もう、私の意識は途切れそうだった。
ある日の事だった、突然私は釈放されたのだ。
意味が解らない、説明も何もなかった。
私は思ったのだ、真犯人が捕まったのだろうと。冤罪が晴れたのだろうと。
説明がないことに腹を立てたが、それでも、嬉しかった。
久々に、外に出られた。もう、拷問を受けなくて良いのだ。
陽射しが眩しかった。
家に帰ろう、私の、家……家……。
家に?
気がつくと、私は牢獄に戻ってきていた。
自らの足で、ここへ戻ってきた。
家に帰ろうとして、思い出したのだ。
家は、ない。
思い出したのだ、私が犯した罪を。
私は悲鳴を上げた女性には何もしていない。
私がしたことは、その悲鳴を上げるに到った原因だ。
口煩かった大家を刺し殺し、不仲だった隣人を殴り殺し、浮気三昧だった妻を絞め殺した。
そうして、アパートに火をつけた。
そこから離れて歩いていたら、女性が見つけて悲鳴を上げて私が舞い戻ったのだ。
拷問で、もう死ぬことはない。
真実を告げたのだから。
思い出した、罪を背負って私は生きるしかない。
それだけだ。
難解なお題に手間取りました、残り時間28秒とかで焦りました。
でも、題名を考える時は時間が過ぎないらしく、もっとゆっくり考えれば良かったと今思いました。
が、投稿してしまったものは仕方がありません。
そのうち、書き直したいです。