うさぎと会話
お題
『私と空想』
制限時間
30分
・・・でしたが、15分で書きました。
空想、なんて素敵な言葉だろう。
何もなくても、時間を潰すことが出来るものだ。そしてまた、文筆をする自分にとってはかけがえのないものである。
歯を磨いているときに、料理をしているときに、ペットのうさぎと遊んでいるときに、はたまた仕事の最中に。ふとした時間の、ちょっとぼんやり浮かんだものが、広がっていく。
空想好き、というと、敬遠されてしまいそうだが結構楽しい。
良く言えば、想像力豊か、ということだろうか。
打ち込みながら、ふと、隣で眠っているうさぎを見た。瞳は半分閉じている、鼻をひくひくさせながら、丸っこくなっていた。
『大変、大変だよ!』
急に、うさぎが飛び起きた。身体を大きく震わせながら、全身伸びをして垂直にジャンプをする。尻尾を数回、上下に振る。
「ど、どしたどしたっ」
『ここに居ては、危険なんだっ。早く隣の部屋に移動しないと』
うさぎは、あたふたと足下をくるくる回っている。時折、つんつん、と鼻先で身体をつついてくる。可愛らしい行動だが、これは何かを要求するサインである。
だんっ!
大きな音が響いた。通称”足だん”という、うさぎの行動だ。
身の危険を感じたり、不満を感じたりすると行うものである。結構うるさいのだ。
だんっ!
再度、足で床を蹴っている。
『もう、だから、早く隣の部屋に移動しないとーっ!』
「わ、わかったっ!」
慌てて立ち上がり、うさぎと共に移動しようとしたが、悲痛な声が漏れた。
『あーっ! ほら、だから言ったのに』
「ぎゃああああああああっ」
じょろろろろ、と音がした。畳にじんわりと広がっていく茶色い液体。
異臭を放つそれは、可愛らしい容姿からは想像できないほど、臭いのである。
『部屋の扉、開けといてよっ! トイレ隣の部屋にしかないんだからっ。もう、耳についちゃったじゃんかっ!』
だんっ!
足を踏みならす、ぶー、と低い声で鳴く。そのまま、すててててーと、走り出した。
「あ、待って、待ってっ! い、今動かれると部屋中におしっこが広がってっ、い、いやぁあっぁぁぁぁあああああ」
なま暖かいものが、転々と畳に広がった。さぁ、どう掃除しよう。
「すぐにトイレに行けるように、側に置いておかないとね」
空想もたまには役に立つ。
隣のうさぎを見ながら、その隣にあるウサギのトイレを見た。
うさぎが本当にそう訴えているかはともかくとして、空想は役に立つ場合もある。
そんな空想をしたので、私は常にトイレを置いておくことにしたのだ。
おかげさまで、部屋の中でおしっこを漏らすということはない。
お利口なうさぎである。
空想って、楽しいね。