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何があっても、形が変わっても、私は私……ということのようですね、どうやら。  作者: 四季


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1話「婚約破棄されるたびに……?」

 私、アイシリア・ケイラは、ミルクティー色の髪と瞳以外に何の特徴もないいたって普通の娘。しかし実はちょっとした不思議な能力を持っている。否、能力、という言葉を使うと若干意味が異なるかもしれないが。


 ――婚約破棄されるたびに謎スキルを手に入れる。


 それが私に与えられていた特別な能力だ。


 そのことに気がついたのは十八歳になった日だった。

 元々私には結婚する予定の相手がいた。自分たちの意思で決めた相手ではなかったけれど。二人がまだ幼いうちに親同士が勝手に決めた婚約だったのだけれど、その相手が婚約を破棄することにしたと告げてきて、その日の晩に私は一つ目の不思議な力を手に入れた。

 初めて手に入れた謎スキルは『毛糸から物を作る過程を大幅に短縮する』というもの。つまり、編み物をしなくても編み物をしたのと同じような作品を一瞬で完成させられる、という力。

 ただ、私の人生において編み物をするといったことは滅多になかったので、正直なところあまり役に立つものではなかった。



 ◆



「なぁ、あんたさぁ、本気で俺と結婚したいって思ってる?」


 婚約者ティボズンがある朝唐突に私の家へやって来て尋ねてきた。


「どういうこと、ですか……?」

「あんたの本心を聞きたいんだよ」


 ティボズンと婚約したのは十八歳の時。

 気づいた時には存在していた婚約者から婚約を破棄すると告げられた直後、親がティボズンを見つけてきて、それで自然な流れとして婚約することとなった。


「あんたって、なんかよく分からない感じだろ? 俺のこと、好きじゃないんだろうなって思ってさ。だからもうこの辺りで終わりにしようと思ったんだ」


 ティボズンは愛を語れない私が悪いかのように言うけれど、彼だって私への愛を示してくれたことはない。だから今日までそういうものだと思って生きてきた。形だけの婚約で、でもお互いそう思っているからそれで良くて、と。そういうものだと思っていた。


「ええと……そうは仰いますけど、では、ティボズンさんは私のことを好きなのですか?」


 深い意味はないが一応尋ねてみると。


「いや、まぁ、普通だな」


 彼はさらりとそんな風に返してきた。


「けどいいんだよ。俺は男だから。男がちゅきちゅき~とか言ってたら変だろ? でも女は違う。女は好きならもっと本気で男を追いかけないと駄目なんだよ。男はどっしり構えていればそれでいい。あとは、女側が愛されるよう奉仕の精神を持って努力すべきなんだよ」


 しかも続けてよく分からない持論を語り出す。


 そしてその果てで。


「ま、話はこの辺にしておいて、さ。……そろそろはっきり言わせてもらうことにするわ」


 彼は心を決めたような面持ちで告げる。


「あんたとの婚約、破棄な」


 こうしてティボズンとの関係は終わる。


 ――そしてやはりまたその日の晩に不思議な力を手に入れた。


 自室で溜め息をつきながらコップの水を飲んでいて気づいた。自分の意思で水を動かせるようになっていることに。

 ただ、水を動かせると言ってもそんなに凄いことではなく、一度に動かせるのは三滴までだ。


「こんなの役に立つわけない……」


 三滴しか動かせないことに気づいた際には思わずそんな風にこぼしてしまった。


 あまりにも意味のないスキルで呆れる。こんなスキル、持っていても何の価値もないではないか。これを使ったところで出来ることなんて何もない。

 ……と、そう思っていたのだが、掃除の時や身体を洗った後タオルで拭く時などにはほんの少しだけ役立ったのだった。


 また、婚約破棄から数日が経った昼下がり、ティボズンのやらかしについて耳にすることとなった。

 遊びに来ていたいとこの子、赤ちゃんを抱っこさせてもらっていた際にうっかり地面に落としてしまい、思わぬ形で命を奪うこととなってしまったそうで。

 意図してのことではないものの一つの命を奪ってしまった彼は、いとこに対してかなり高額な償いのお金を支払わなくてはならないこととなり、金銭面で終わったらしい。


 抱っこしていた赤ちゃんを落とすなんて……、と思いつつ。こんなことになるなら、と、既に彼との関係が切れていたことに密かに感謝したのだった。

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