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転生した悪役令嬢はストーリーに興味がない~王子とか聖女とかどうでもいいのでどうぞご自由に~  作者: レイ


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今回もゼレイン視点です。

フェリーナ・パードリー公爵令嬢に初めて会ったのは私が十歳になったばかりの頃だった。




歳の近い貴族の子息子女は、王子の遊び相手と称して側近や婚約者の候補として幼少の頃から王宮に招き入れて交流を持つものなのだが、派閥の問題だったり、爵位が低かったり、特筆して嫌煙しておきたい相手の場合は別になる。


だからダリスやミカ、クラリアは『遊び相手』としてよく王宮に通っていた。


ダリスは私の婚約が決まったと同時に側近という立場に変わり、ミカもまた少し遅れて側近に収まった。

何故同時期でなかったのかというと、私の婚約者が決まったことでミカも婚約者を決めることになり、その手続きを終えてからという話だったと記憶している。

わざわざ私の婚約者が決まるのを待たなくても先に婚約しても気にしないのにね。ツァイス侯爵家はそういう細かい所も気にするんだから。


ダリスはその時点ですでに伯爵令嬢であるノアール嬢と婚約していたし、ミカもクラリアと婚約は内定していた。ミカとクラリアは母親同士が友人で、産まれたばかりの頃から婚約話は出ていたそうだよ。



では、公爵令嬢であり、第一王子派に属するフェリーナに初めて会ったのが『遊び相手』ではなく十歳の婚約者内定の場だった理由はというと、つまり嫌煙しておきたい相手だったからに他ならない。


爵位は当然申し分ない。

第二王子の婚約者なのに第一王子派? と思われるかもしれないが、私は兄上の治世を支えることに尽力しているので王位には一切の興味が無い。寧ろ掻き回そうとする輩は捻りあげて潰しているくらいなので、自分の派閥など信用ならないし必要もないわけだ。だからこそ第一王子派である方が信用に足る。つまり、派閥的にも問題ない。


となると、残るのが特筆して嫌煙しておきたい相手ということになる。


この場合、嫌煙する理由がパードリー公爵家にあるのかフェリーナ自身にあるのかと聞かれると両方ということになるのが難しいところだね。


ただ、嫌煙したいものの、王家に次ぐ権力と資産を持ち合わせる公爵家との縁は繋いでおきたいことと、四大公爵家の中に私の婚約者となり得る年頃のご令嬢がいなかったことで、一度会ってから決めようと言うことになっていた。



公爵家というのは一つ間違えれば建国することもできるくらいの力を有しているからね。正直に言うと扱いが難しいんだ。

だからこそ可能な限り王家と婚姻を結んで関係の強化が求められる。


四大公爵家の中でも筆頭公爵家と言われているのがパードリー公爵家だ。

味方につければこれ以上ない強力な布陣だが、これがまた一筋縄でいかない面々でね。

ただでさえ頭が回る上に、末娘のフェリーナを目に入れても痛くないほど可愛がっているものだから、まず第一に公爵家側からの圧でフェリーナを囲われていたために婚約者の打診どころか王宮に招くことすらもできなかった。

それに加え、甘やかされて育ったフェリーナが我儘放題で手が付けられないという噂が先行していたこと。その真偽を確認しようにもフェリーナは公爵領から出てこないし、こちらから行こうにも会うことすら出来なかったために、当時は私の婚約者とするには無理があるという判断が下された。


それが私が十歳、フェリーナが八歳になる頃に急に公爵家側から「娘が王子様に会いたいと言っているから」とお茶会の誘いがあり会うことになったのだが、この急な手のひら返しもまた噂の我儘姫の印象が強くなる一因だった。


実際にフェリーナに会ってみると、良い意味で思っていた人物像とは違っていたのだけれど。









「楽にしていいよ、パードリー公爵令嬢。私はゼレイン・ティア・ヴィアイン。よろしくね」

「ゼレイン第二王子殿下に御挨拶申し上げます。フェリーナ・パードリーと申します」



以後お見知り置き下さいませと微笑む姿は大人でも息を飲む優美さを携えていて。我儘放題という前印象から勝手にマナーも未熟だと思い込んでいたが、八歳ながらに流石公爵令嬢だと即座に認識を改めた。


顔を上げた時に緩く巻かれた金の髪がふわりと揺れ、空のような透き通るような明るい青の瞳が陽の光に反射して煌めいていて、これは公爵家の皆が溺愛するのも無理はないと納得する美しさだと私も目が合った瞬間息を飲んだのを覚えている。


彼女も目が合った時に一瞬目を見開いていたから何か思う所があったのかもしれないが、そこについては触れていないから今でもわからないね。



それから実際に話をしてみても、噂の方が間違っているのではないかと思うくらい受け答えに問題もなく、ふとした表情や言動から気遣いも窺えるし、優雅でマナーも完璧。政についても勉強しているのがわかる返答を得られる。

では何故、こんなに聡明で思慮深いご令嬢に、我儘放題で手が付けられないなどという正反対の噂が流れているのかと不思議に思った時、やっと気が付いたんだ。





どうして公爵領から出ていない、社交界デビューもしていない令嬢の噂がこんなにも広く出回っている?





答えは一目瞭然。

公爵家が意図的に流した噂だからだ。

恐らく、可愛い末娘を外に出さないために。


噂に惑わされ、本人に会うまで気付けなかった自分の愚鈍さに呆れたよね。



確かにこのまま公爵家の目論見通り、ずっと囲われていたのなら本当に噂通り我儘放題になっていたかもしれない。

けれど、今目の前にいる小さなレディは、間違いなく立派な淑女だ。


それに気付いた時、私はとにかく彼女を外の世界に出さなくてはと強く思った。

そしてその場で彼女に婚約の打診したんだ。

それは恐らく、ここで繋がりを得られなかったらきっともう会うことが出来なくなると直感的に悟ったから。

そうでなければ、一度持ち帰って陛下に相談をしなければいけないと理性が働いていたはずだ。


けれど、その時の驚きに見開かれた瞳の透明さにまた目を奪われ、単純に彼女のもっと色んな表情が見てみたいと願う自分がいることを知ったのだから、あの時の判断は間違っていなかったと、今でもそう思っているよ。



考えてみたら、もしかしたらこの頃にはもうすでにフェリーナに執着し始めていたのかもしれないね。


けれど、その後も年々美しく優しく成長していく姿を見て、婚約者の座を手にしている安堵と、他の男に目移りされてしまうのではないかという不安と、横槍を入れてくる公爵家の面々と日々戦ってでも手放せないほど彼女にのめり込むことになるとは自分でも想像していなかったよ。

噂のことはリーナは知りません。

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