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ゲームスタートです。
月日が経つのはあっという間で、とうとう明日は学園に入学する日。
つまり、ゲームがスタートするということね。
半年程前に平民の女性が光魔法を覚醒したと騒ぎになり、国王陛下より正式に聖女認定をされていたから始まるのは間違いなさそう。
せっかくだから、少しゲーム世界についておさらいしておこうかしら。
タイトルは『夢色の舞う花びらに乗せて』
ヒロインはエリーゼ・シュバイン。
ゲームの主人公で、元は平民で農家の生まれだが、十五歳の時に光魔法に目覚め聖女としてシュバイン伯爵家の養子になる。
貴族は十六歳から学園に通うことが義務付けられているのだけれど、貴族のルールに不慣れだからと第二王子であるゼレイン殿下が補佐として付き添うことになるのよね。
すでにゼレイン殿下は学園の三年生として在籍していらっしゃるし、聖女様は国の保護対象ですもの。
この世界には魔法が存在するのだけれど、これまたよくある話で光魔法や闇魔法はほとんど存在しないのだそう。
火、水、風、土の四大元素が魔法の源で、平民、貴族問わず素質は個々で違うけれど、全く使えない人もいれば二属性以上使える人もいるのですって。
一般的には一つでも使えれば十分だし、二属性以上の素質があれば王立魔術研究所に入ることもできると言われているわ。
身近なところで言うと、ゼレイン殿下は水、風、土の三属性を扱えるし、アーベルガント様は火属性、ツァイス様は水、土属性。私は火、風の二属性で、長兄のエアリスお兄様は水、風、次兄のスヴェンお兄様は土属性をお持ちよ。
同じ家族でも全然属性が違うから、本当に個人の素質なのでしょうね。
そんな中でも光魔法の素質を持つものは百年に一度しか現れないと言われていて、唯一癒しの力を持つため聖女様とされるのだとか。
そのため聖女様が誕生した際には王家の保護対象となる、と。
そして攻略対象は第二王子、側近インテリ、側近脳筋、学園の先生、幼馴染との仲を深め、ルートを選択することになるの。
因みに、このゲームは逆ハーエンドはなかったはず。隠しキャラはいた気がするのだけれど、何故かそこはあまり覚えていないの。攻略していなかったのかもしれないわ。
学園の先生は、つまり担任の先生ね。
ユーリエス・フレイン。
エリーゼを気にかけ、フォローしてくれる。
魔法学の担当で、魔法の研究に熱が入りすぎると寝食を忘れて没頭し、授業を忘れて生徒に呼びに来られることもしばしばだとか。
要するに魔法バカね。
普段はローブを被っていてわからないけれど、土台はイケメンだったわ。
実際にお会いするのは今日が初めてになるからあくまでも攻略サイトの情報だけれど。
それから、クレイ・ベルク。
平民だけれど、ベルク商会という大商会を持つ商人の息子でエリーゼの幼馴染。
近所に住んでいて同じ歳ということもあり、よく2人で遊んでいて、昔からエリーゼに好意を寄せてアピールしていたが、聖女になって貴族になってしまったことでどう関わって良いかわからなくなり気まずくなってしまう、という設定だったわ。
学園は貴族は義務だけれど、平民でもベルク様のように裕福で通う余裕のある方や、貴族とのパイプを求める方、特筆すべき能力のある方等は特待生として入学することもできるの。
というか、前世でこの手のゲームをやっていた時から常々思っていたのだけれど、何故いつも先生が攻略対象枠で入るのかしら? 一回り以上歳上なのよ?
もちろん大人になってしまえば一回りくらいの歳の差なんて気にならないものとはいえ、学生時代の一回りって大きいと思うわ…
…話が逸れたわね。
えぇと、確か攻略対象全員と初日に出会うはずだけど、ゲームのオープニングは定番の正門前ね。
さすがにヒロインが走ってきて王子様にぶつかって、なんてベタすぎるものではないけれど。
そもそもすでに聖女様認定されているのだから、わざわざ正門前でぶつかって出会いを演出する必要もないものね。
陛下より聖女様の補佐を命じられたゼレイン殿下が正門前で聖女様をエスコートするのだったかしら。
それで周囲にも王家の保護対象の方であることを周知することになったの。
そこに側近である脳筋とインテリも一緒に行動することでよりアピールになる。
それはつまり、聖女様を囲い込むってことだから。
国家の安泰のためには必要なことなのでしょうね。
必要なことのはず、なのだけれど……
「リーナ、制服とても似合っているね」
「あ、ありがとう、ございます…?」
正門前で聖女様をエスコートするはずのゼレイン殿下が、何故私のエスコートをなさっているのかしら…?
聖女様どっかいっちゃった。




