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ずっと書きたかった女子会!(+α)
「聞きましたわよ! 」
「え、えぇと…? 何のお話ですの? 」
「もちろん! ゼレン様とのことですわ! 」
とある日の放課後。
いつもならゼレン様の生徒会のお仕事が終わるまでエリーゼ様と電子レンジの研究に勤しんでいる時間なんだけど、今日はそのエリーゼ様に着いてきてほしい所があると誘われて大人しく着いていくと、そこにはクラリア様とノアール様がいて。
きちんと礼儀上お互いにご挨拶をしてから勧めれるままに椅子に腰掛けると同時に、ノアール様が勢いよく話し始めたの。
近い内に三人にはお話するつもりでいたけど、まさか先に伝わっているとは…
これは間違いなくアーベルガント様ね。
個人情報の流出だわ。ゼレン様に抗議しなくちゃ。
…と言っても、不特定多数に広めているわけじゃないから軽く注意するくらいだけど。
アーベルガント様もわかっていながらノアール様に話したんだろうし。
で、御三方はどこまでご存知なのかしら?
「皆様にはどのように伝わっていらっしゃるのでしょうか? 」
「ゼレン様のお気持ちが伝わって両想いになられたとお聞きしておりますわ! 」
「あ、え、っと、その、……はい」
「「「きゃー!!! 」」」
「!? 」
「本当でしたのね! 」
「フェリーナ様、おめでとうございます! 」
「ゼレン様、やりましたわねぇ 」
ノアール様はどちらかというと快活な方の印象はあるけど、クラリア様やエリーゼ様がこんなにテンション上がってるのは初めて見たわ…
キャッキャしてる三人のテンションについていけずに戸惑うしかない。
やっぱり女の子ってどこの世界でも恋バナは好きなんだなぁ。
でも、これだけ人の恋路を喜べるってことは、きっと応援してくれていたってことなんだろうって思うとむず痒いけど嬉しい。
まぁ、応援されてたのはきっとゼレン様の方なんだろうけど。
鈍くてごめんなさい…!
「それで、ゼレン様はハッキリとお好きだと仰ったのですか? 」
「いえ、その…」
ど、どうしよう。
想いが通じたってことは知ってるけど、もしかしたら入籍時期が決まったことは知らないかもしれないよね…?
ゼレン様にハッキリと好意を示されたのは、もうすぐ夫婦になるんだからって話の流れだったはずだけど、その辺りってお話して大丈夫なのかな…
まだ機密情報扱いかもしれないし、何をどこまでお話していいのかわからない…!
助けて、ゼレン様…!
「私の可愛い婚約者を虐めるのは程々にしておいてくれるかな」
私が心の中で盛大にテンパっていると、何故かここにいるはずのない人の声が聞こえてきた。
え、幻聴?
「あら、ゼレン様」
「ちょうどいい所にいらしましたわねぇ」
「ごきげんよう、殿下」
「やぁ。みんな揃ってどうしたの? 」
「ようやくフェリーナ様のお心を射止めたとお聞きしましたので! 事の次第を是非お聞きしたくお茶にお誘いしましたの」
「ゼレン様がお話してくれてもよろしいのよ? 」
「なるほど…」
どうやら幻覚でも幻聴でもなかったようで、目の前には生徒会室にいるはずのゼレン様の姿。
書類を手に持っているところを見ると、どこかに届けに行くところだったのかもしれない。
ゼレン様はチラリと私に目を向けると、再び三人に向き直った。
「何を聞きたいのかな? 」
「どうやってフェリーナ様のお心を掴んだのかを! 」
「ノア、さすがに不躾すぎますわよ」
「リア様だって気になるでしょう!? 」
「それはそうですけれど」
「という訳で、ゼレン様! 」
めちゃくちゃ前のめりすぎるノアール様に、注意はするけど聞きたそうなクラリア様。
エリーゼ様に至っては、口を挟むことなくにこにこと話の展開を見守っている。
….目が爛々としているからエリーゼ様も気になってたのかしら。
「まだ話せない情報もあるから詳しくは言えないよ? 」
「構いませんわ! 」
「えぇ、差し支えない範囲でお聞かせいただければ十分ですわ」
「そうだな……先日、王宮の薔薇園にリナを招待していてね」
「「リナ!?!? 」」
あ、そこから食いつくんだ。
「ふふ、私だけの呼び名だ」
「あ、あまい………」
エリーゼ様、ボソッと呟くのはやめてください…
何だかもうすでに恥ずかしいです…
「ゼレン様もやる時はやりますのね…! 」
「私を何だと思ってるんだ…」
「ノア、話の腰を折るものではありませんわ」
「そ、そうでした! 失礼致しました! 」
「ああ……それで、少し今後の話をしていたんだよ。いずれ私とリナは入籍して夫婦になることになるからね」
「そうですわね」
「ただ、私としては政略結婚と思われていても、リナが望まない結婚はしたくないんだ。だから、私と結婚することをどう思うか聞いたんだよ」
うんうん、と三人が頷きながらゼレン様の話に耳を傾けている間、私は必死に平静を保とうと紅茶を喉に流し込んでいた。
あの日のことは思い出すだけで顔から火が出そうになる。
鈍すぎる自分を自覚した恥ずかしさと、ゼレン様からの愛情を認識したことによる照れくささとで、嬉しいのに居たたまれなってしまう。
「そうしたら、私以外と結婚するのは嫌だと泣いてくれてね」
「「「きゃーっ!!! 」」」
三人が揃って両手を口に当てて頬を染めて叫んでいる。
恋バナってこうよね。
これが自分のことでなかったら私も同じようは反応をしていたわ。
私もそちらの立ち位置になりたかった…!
プルプルと羞恥に震える指で何とかカップをソーサーに戻し、赤くなっているだろう顔を隠すように下を向く。
もうすぐ終わる…もうすぐ終わる…!
あと少し、耐えるんだ…!
「それでどうなりましたの!? 」
「ふふ、内緒」
「ずるいですわ」
「ほら、リナが恥ずかしくて縮こまってるだろう」
「あら」
「リナの可愛い顔が見れなくなるからこれでおしまい。ね? 」
「ふぇっ!? 」
「フェリーナ様、大丈夫ですか? 」
「だ、大丈夫じゃないですわ…」
急にゼレン様に頬を撫でられて変な声が出てしまった。
人前でこんなに甘い空気になるなんて思ってもみなくて、もうどうしていいのかわからない。
ゼレン様助けてと確かに思ったけど、逆に追い込まれてしまった気さえする。
そんなこんなで話すだけ話してゼレン様は自分の用事のために離脱したけど、三人はゼレン様の隠す気のない私への好意にきゃあきゃあと楽しそうにしていた。
「結局開き直ったのですわね」
「想いが通じあっているのなら良いのではないですの? 」
「私もそう思います」
「そもそも、遠回しな表現で伝えろと言う方がおかしな話ですわ」
「ノアもダリスも向いていないものね」
「そうなのです! なので私達はそんな風習は捨て置くことにしましたの」
「ゼレン様もそうできればよかったのでしょうけれどね」
「王族って大変なんですね」
最後にはゼレン様を労る会みたいになっていたけど、ほぼ女子だけのお茶会は楽しかった……と思います。
今度は私じゃないネタで恋バナしたいです。
書いててめちゃくちゃ楽しかったです♪
ノアがいると話が早くて助かります。




