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転生した悪役令嬢はストーリーに興味がない~王子とか聖女とかどうでもいいのでどうぞご自由に~  作者: レイ


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リリアの紹介回でもあります。

「シュバイン様はご無事です」

「あんなに勢いよく水を被られたのに? 」

「上階から水魔法の反応がありました。恐らく殿下かツァイス侯爵令息が察知して本人に当たる部分だけ水の勢いを調整されたのかと」

「そう…」



リリアの報告に安堵の息を吐く。

確かにゼレン様やツァイス様なら咄嗟にそれくらいのことは出来そうですもの。

まずは、エリーゼ様がご無事で何よりですわ。



「では、バケツは当たっていないのね? 」

「アーベルガント公爵令息が咄嗟に飛び出し、降ってきたバケツを蹴り飛ばしたようです」

「…本当に俊敏な方なのね」



バケツも当たっていないようで安心したけれど、蹴り飛ばされたのね……他の人に当たらなくてよかったですわよ、本当に。



「さすがに犯人はわからないわよね」

「…恐らくとしか」

「わかるの!? 」



ここまで来ると、もはやリリアが侍女なんて器で納まっていていいものか不安になるわ。

諜報とか向いていると思………いえ、危険を伴うお仕事を勧めるのはやめておきましょう。




少しリリアのお話をすると、彼女は子爵家の次女で十歳の時から我が家に奉公に来ていたらしいの。

私とリリアがちょうど十歳離れているから、私の産まれた年に来たってことね。



世知辛い話なのだけれど、貴族家の子息は嫡男が跡継ぎ、次男がスペアとされることが多くてもご令嬢となるとまた別でね。どう足掻いても政略結婚の駒でしかないのよね。

基本的に男子が家を継ぐ規則があるから、子息がいる家は女子は奉公に出るか政略結婚をするか。女子しかいない家は長女に婿を取らせる形になるのだけれど、そうなると次女以降はやっぱり駒にしかならないの。


貴族ならではの考え方だけれど、前世を日本で過ごしてきた私にはどうあっても理解し得ないものだわ。

けれど、いくら公爵令嬢とはいえたかが小娘に出来ることなんてあるわけもなく。

もどかしいと思いながらも、せいぜい私に出来るのは奉公に出てきた子を公爵家で引き取ることくらいなのよね。



…話が逸れたわね。

そういう訳で、次女のリリアも例に漏れず。

十歳で結婚はさすがにこの世界でも有り得ないので、家格が上の家に奉公に出て、給金とコネクションを繋ぐ役割を課せられたってこと。


私としては、おかげで気の置けない立派な侍女を側につけることができているし、何より産まれた時から一緒にいるからお姉さんみたいな存在なので、リリアが居てくれることはとても頼もしいし嬉しいの。




それで、ここからがハウスメイドから私の専属侍女にまで昇格したリリアの特技のお話。


彼女は元々の慎重で生真面目な性格のためか、物事を先回りして考える能力に長けているの。気遣いの鬼、とでもいうべきかしら。こちらの望むことを察して手配してくれるものだから本当に助かっているわ。


それに加えて、彼女自身は魔法の行使は不得手だけれど、魔力の動きの感知が得意なのよね。

簡単に言えば、走り出す時に助走が必要だったり、ボールを投げる時に振りかぶったりするように、魔法も魔力を練るという予備動作が必要で、それを察知できるということ。


だから先程の状況も理解が早いのはわかるわ。

わかるけれど、何故犯人まで察しているの?



きっと私の授業中、側に控えられない時間に色々と情報収集していたのでしょうね。

せっかく休める時間なのだから休んでいいのに、リリアは本当に職務に忠実過ぎるのよ。



確信がないからかそれ以上のことを話そうとしないので、私も無理に聞き出すようなことはせずにチラリと窓からエリーゼ様を盗み見る。


大きなタオルで身体を包み込んでいるエリーゼ様の隣に、騒ぎを聞いて駆けつけられたのかノアール様とクラリア様が寄り添って下さっているわ。今私が出ていく訳にはまいりませんから助かりますわね。



ホッと肩をなでおろして事の次第を遠目に見守っていると、しばらく経って外にいるアーベルガント様から出てくるようにジェスチャーがされました。


私が出て行っても良いということは、犯人は確保出来たのかしら。

リリアと顔を見合わせて頷くと、ゆっくりと教室を出て外へ。

気持ち的には小走りで行きたいところなのですが、こういう時貴族令嬢は面倒ですわね。しかも高位貴族ともなると、何処で誰に見られてはしたないと貶められかねません。私自身はどう思われようが構いませんが、家に迷惑がかかるのは望むところではありませんもの。


逸る気持ちを抑えて、一歩一歩確実に、優雅に見えるように急ぐしかないのです。






「フェリーナ様! 」

「エリーゼ様、ご無事ですの!? 」



それでもやっぱり最後には心配な気持ちが勝ってしまいました。

あと数歩が我慢できずに駆け寄ってしまいましたが、友人の安否には代えられなかったのです。

ご無事とわかっていても、自分の目で確認しないと安心出来ないですもの。



「ご覧の通り、少し濡れただけです」

「少しなんてものじゃないですわよ! 」



のほほんと笑って返されて、ドッと肩の力が抜けましたわ…

何でこの聖女様はこんなにも危機感がないのかしら……この国に一人しか存在しない稀少なお方ですのに。



私達が苦笑していると、急に表情を引き締めたエリーゼ様が上を見上げて硬い声で「やっぱり…」と呟かれました。


つられるように私も同じように視線を移すと、そこにはゼレン様とツァイス様のお姿が。



そしてお二人の間に捕らえられているのは、




「……カノン・ソリュード子爵令嬢」




ユーリエス・フレインルートの悪役令嬢。

犯人登場です。

この犯人は予想出来てる方も多かったのでは?

エリーゼは酷く嘆きますね。

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