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転生した悪役令嬢はストーリーに興味がない~王子とか聖女とかどうでもいいのでどうぞご自由に~  作者: レイ


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ダリス視点です。ある日のダリスの一日。

少し短めです。

「ダリス。リーナのクラスへ行くよ」

「おう」



授業終了の合図で主であるゼレンが席を立つ。

パードリー公爵令嬢のクラスにランチの誘いに行くためだ。

これはパードリー公爵令嬢が入学してからずっと欠かさず続けているゼレンの日課でもある。

護衛として教室の片隅で待機していた俺は、先導する形で前を歩き出した。






俺はダリス・アーベルガント。アーベルガント公爵家の三男で、つまり跡取りでもスペアでもないから勝手にしろって立場だな。

別にそのことに卑屈になんかなってないぞ。逆に好き勝手やらせてもらえるし。



アーベルガント公爵家は騎士家系で、代々騎士団長を受け継ぎ、男も女も関係なく騎士団に入団する。

今代は三人とも男だったが、叔母上などは女性でありながら騎士団に入れる程の実力者で、結婚するまでは部隊長を務めていたそうだ。

そんな家で育ってきたら剣を取らないという選択肢は与えられないからな。俺達兄弟も、もう記憶が曖昧なくらい小さい頃から木刀を手にしていたらしいぞ。

頭を使うよりも身体を動かす方が楽しいからいいんだけどな。


幸い俺はゼレンと歳が近いことと、それなりに腕が立つということで側近に選ばれた訳だが、俺の方がゼレンよりも一つ上だから、ゼレンが学園に在籍する最後の一年は特例で護衛として控えることになったんだ。


と言っても、そもそもゼレン自身が俺と並ぶくらい強いから護衛つける必要事態が無さそうなんだけどな。下手な騎士よりよっぽど強いんだよ。

だから俺はゼレンが授業に集中するためにいるようなもんなんだ。さすがのゼレンも授業に集中しながら敵の気配を探るのはしんどそうだから。

アイツのことだから、やろうと思えば出来るんだろうけどさ。






「リーナ、迎えに来たよ」

「ゼレン様! ごきげんよう」



基本的に柔和で誰に対しても完璧な王子様のゼレンが、パードリー公爵令嬢に対してだけあからさまに表情豊かになるのが面白いんだよな。

主である王子殿下に対して失礼なのはわかってるけど、俺としては王子だからこそ大人びている姿が当たり前になっていているゼレンの、こうやって歳相応の姿を見られることが嬉しいんだよ。




「ゼレン様、こうして毎日来てくださいますが、本当に無理されてはおりませんか? 」

「リーナの顔を見られない方が調子が悪くなるよ」

「まぁ! 私の顔にそんな効果が!? 特にそんな魔法は使った記憶がないのですけれど…気付かない内に誰かに掛けられたのかしら…? 」

「ブハッ」

「ダリス」

「すまん」



友人として、臣下として、ゼレンの楽しそうな様子が見れるのはいいんだが、わざとかと思うくらい全然噛み合わなくなるパードリー公爵令嬢の受け答えが面白すぎて笑いを堪えられなくなるのが難点なんだよな。その度にゼレンに睨まれんの。


さすがの俺でも一応公爵令息としての教育は受けてるからさ、淑女を笑うなんてことがあってはいけないことくらいわかってる。

けど笑っちゃうんだよなぁ。これでも頑張って笑わないように耐えてるんだけど。



それといつも思うんだけど、パードリー公爵令嬢の侍女がいつも側でこのやり取り見てるのに全く動じないの凄すぎないか? 何か特別な鍛錬でもしてるのか気になるところだ。



「リーナ、魔法はかかっていないから大丈夫だよ」

「それならよかったですわ」



本気で安堵している様子を見ると、狙ってやっているわけじゃないのは明白。だからこそ予想できなくて面白いんだけどさぁ。


こんな所をノアに見られたら怒られるのが目に見えてるんだよ。

もっと公爵令息の自覚を持てだとか、女性に対して紳士的にだとか。俺の性格をよーく知ってても言ってくるのはノアくらいだぞ。


小さい頃は俺の後をついて回ってたのに、今じゃ立派な淑女になったもんだよな。



そう思うと成長を感じて微笑ましいけど、怒られないで済むならそれに越したことはない。

何故なら、怒ると菓子をくれなくなるからな。

ノアが作る菓子は店で売っているものよりもずっと美味いんだ。もう売り物の菓子じゃ満足出来なくなってしまった俺にとってはかなり切実な問題なんだって。




確認のためにチラリと目線だけでノアが近くにいないか窺うと、不意に目が合ったパードリー公爵令嬢がにっこりと微笑みかけてきた。



「ノアール様でしたらこちらにはいらしておりませんわ。いつものようにクラリア様と一緒にテラスにいらっしゃるのではないかしら」

「な、」



待ってくれ、何でそういうことは鋭いんだ!?

視線を動かしたといっても一瞬だし、話の流れからもノアに行き着く要素ないよな?

探していたのを勘づいたとしても、いつもならいるはずのミカが居ないことに対してだと思わないのか?



「ふふっ、女の勘ですわ」



しかも何も言っていないのに答えが返ってきた。女の勘って何なんだ。


もはや何と返したらいいかもわからず真顔でゼレンを見つめると、言いたいことを察してくれたようで大きく頷かれる。



「それがリーナだからね」

「いや、何でだよ……」

「何がですの? 」

「リーナは今のままでいいってことだよ」

「え、えぇ? 」




色々と言いたいことはあるが、とりあえず一つだけ。



『今のまま』だといつまでもゼレンの気持ちに気付いてもらえないままだけどいいのか?






いつもなら気にせずに笑い飛ばす俺だが、何となくパードリー公爵令嬢は敵に回してはいけない人物なのだと直感的に理解して口を噤む。


願わくば、ゼレンがパードリー公爵令嬢をしっかり捕まえてくれ。頼むぞ、ゼレン。




思いもよらぬ一面を垣間見て、パードリー公爵令嬢への印象がまたガラリと変わった一日となった。

リーナは恋愛方向のみ激鈍さんなだけですよー

ノアールはダリスの婚約者です。


次からまた本編に戻ります。

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